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烈々布店長の裏(銀魂)
河上/プロローグ1
怖い夢を見た


真っ暗な闇夜の中
何かから逃れて

息は切れ切れ、心臓はらはら
そんな夢


そして、
目を開けると
そこは
そこは━━━


ここは?


━━

━━



「転た寝でござるか…?冬窓床」


『わ!万斉さん!』


眠たそうに、眩んだ目をやっと開くと そこにはサングラスとヘッドホンをした彼が 冬窓床を見つめている


『スミマセン…万斉さん』


「寝不足でござるか?…余裕綽々といった処か」


『ごごごごごめんなさい、万斉さん!お迎えしてくださってるのに!』


「拙者の後ろで…船を漕ぐのは構わんが、落ちても知らんでござるよ」


今は万斉のバイクの後部シートにしがみつき、敵地からの帰還中である


「相変わらず 任務は一人でこなしたいタチの様だな」


『まぁ…ヘタレなマイペースなんです』


「要人数人を暗殺を痕跡残さずやってのけられるのはヘタレとは言わんでござる」


『万斉さんにそう言って貰えるなんて、光栄だなぁ』


このヘラリと力無く笑った 少女の何処に 人を殺める仄暗さが宿っていると言うのだろう


万斉は昨夜の高杉との会話を思い出した


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高杉「なんだぁ?あいつを心配してんのか?」


万斉「今回はちと同行しようか気になる…少数とは言え徒党を組んだチンピラ共でござろう」


高杉「…お優しいこった 安心しな、無理は言ってねぇよ」


ククッと 笑い キセルを遊ばせ 彼は続ける


「知ってるか、万斉
巷で流行りの事件だが、要人、役人が行方不明になっている
影間茶屋に行ったきり、
キャバクラ帰りにそのまま消えたり、夜中に厠に立ったきりってのもあったな」


「煙みてぇに消されちまうのさ、ドロンと
アイツに仕事をさせるとな」


「死体は上がらねぇんだ、[屍(かばね)喰い]って呼ばれてる」


「誰も冬窓床のやり口を知らねぇ、見た事が無いらしいぜ
実際に見た事が無ぇのなら そんな噂、所詮噂なんだろうさ
ま、火の無い処になんとやらとは言うが…


仕事に向かうアイツは血の気も悪く倒れそうな面をしている
だがどうだ 仕事を終えて帰って来たアイツの頬には紅色が注し、髪さえも艶やかじゃねぇか」


愉しそうに喉を鳴らし また笑い


「根っからの殺し屋なのか、本当に躯でも食らってやがんのか…興味深いな」


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━━━
彼目線
━━━


晋助は冬窓床が何処までの仕事ならばこなせるかを、いつも試している


何か 心当たりが有りそうだが
自分は何も知らない


この冬窓床の教育係として 短くない時間を過ごしていると思っていたのに


嫉妬か 劣等か?
わからない


ただ
胸の隙間のむず痒さが 淀んでいくのを感じるのだ


「強くなったものだな…一人で、どんな敵地へも赴くことができる」


『そんなことは無いです…出来ないミッションは断ってるんですよ』


この穏やかで力無く笑う 屍喰いの心は
相変わらず 明るく軽快なポップで可愛らしい旋律を奏でる


この娘が どんな顔で、どんな心の音で人を殺すのか
知りたくなった


━━
船内
━━


冬窓床はエントランスの窓際に腰掛け 欠伸をしながら珈琲を啜っていた


「何をしているでござるか?」


『万斉さん』


船内でこんな処に佇む者はまず居ない
皆、忙しかったり 興味がなかったり 当たり前の風景だからだろう


しかし冬窓床だけが足を止め、余りに窓際で 流れる星をじっと見詰めている事が多いので
「鬱陶しいからここに居ろ」と
晋助が椅子を置いてやったのだ


「星を…眺めているでござるか」


『ごめんなさいね、場所 譲りましょうか?』


「拙者はもう 見飽きたでござる」


『ははは、そっか けど勿体ないよ』


「勿体ない? 」


『…ここは 不思議な処ですね
船の中なのに星が流れている、
宇宙船の中なのに 無重力が邪魔をしない』


「…ターミナルに立ち寄ったことの無い、田舎の年寄りみたいでござる」


『ははは、遠くないや
おばあちゃんの世迷い言だと思って下さい』


時折冬窓床は
空想めいた、しかし見てきた様な不思議な話をする
『世迷い言』

そう一蹴して 笑い飛ばしてしまう


そんな時の彼女の心の旋律は

拙者にとって触れた事の無いモノが混ざっている様で 目が離せなかった


この音の正体を探っていると 意識が音を追って、
瞼の裏に 己を預けて ぼうっとしてしまう


『万斉さん?』


「ん…ああ、明日の冬窓床は江戸でござったな、拙者も同行するので忘れぬよう…」


『えええええ!何で?』


「晋助の指示でござる」


『そんな…高杉さん…』


『…ま、いっか わかりました。
[前に提示した条件通りですからね]って、高杉さんに言っといて下さい』


もっと取り乱すと思ったので少し拍子抜けし、
やや不機嫌になった冬窓床が部屋に戻って行く背中を見送った




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あきゅろす。
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