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☆銀魂の小説(夜兎組/長編)
空腹なんです2
そう言って笑った顔は 呆けたような気の抜けた笑顔だった
俺の胸に何かが刺さったような感覚が残る


阿伏兎「………ったく………」


阿伏兎「酔狂なこった」


ようやく振り絞ったセリフは面白味も無い、言わば負け惜しみに近いもので、
しかし次の彼女の思わぬ行動に 俺は目を白黒させてしまう


『阿伏兎さ………ん』


俺の首の匂いを確かめ 今度は そのまま腕を回して 包み込んで来るのだ

つまり、後ろから抱きしめられた状態になる
ベッドで。
そう、ベッド
ここは俺の寝床。
ベッドなんだよ


何なんだ紫竹…………??
誘ってんのかぁぁぁぁぁ!?
抱きしめるってなんなんだよ!!

細い腕!!柔らかい感触が背中に!!女のニオイ!!

……………いくら何でも…………

いや、
いや待て落ち着け 阿伏兎よ

今日の紫竹はおかしい
明らかに変だろ

何か理由があるはずだ

このお嬢ちゃんに限ってそんな…………
俺を誘うなんてある訳ねぇだろ


阿伏兎「お、おい紫竹…」


しがみつかれたまま、上体を後ろに向けて なるべく彼女の表情を読み取ろうとする

が…


『…』


阿伏兎「…………寝てんの………」


それから数秒して 寝息が立つ


阿伏兎「…………」


ハァ━━━………


少し 息を止めて

長い 溜め息が出る


阿伏兎「何だってんだ…」


俺に凭れかかっている 紫竹の身体を しばらくは放っておいたものの
精神衛生上、良くない気がしたんで そっと俺のベッドに寝かせ直した


すやすやと眠る顔には血色が戻ったように見える


阿伏兎「……寝不足か?ったく…無理すんなって……」


その頭を一度 撫で


阿伏兎「疲れが溜まってんのかい………まぁ、毎日夜兎の胃袋の相手 してりゃな……」


言葉を溢すと 彼女の口元が ふにゃりと微笑んだ


阿伏兎「………楽観的なお嬢さんだねぇ」


『阿伏兎さ………ごちそ……さま』


阿伏兎「…!!…………おう、しばらく寝とけ」


思わぬ寝言

俺の口元まで弛む


このままでは いけないように思えて 俺はそそくさと机に置いた書類に向き合い、
ほんの少しだけ さっきの紫竹のセリフを反芻する


end

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あきゅろす。
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