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☆銀魂の小説(夜兎組/長編)
兎とシェフ2
生まれてから 物心つくまで、どう育ってきたか
何を教えられてきたか
何を想っていたか


私には その記憶が無い


この船に乗る前は 何処かの星の何処かの町の何処かの路地裏で倒れていたそうで


知らないその町で 老夫婦に拾われてどうにか生き繋げた


自分が何者なのか わからない
素性もわからない


ある時 暴漢に襲われて
無我夢中で抵抗した


そして自分の身体能力に気付いた


夜魔と呼ばれる種族であるらしい事も知った


戦闘能力は夜兎ほど高くはないものの 工夫すれば充分戦えそうだ

手に取った物質に、私の生気を纏わせれば剣や警棒くらいの威力は持たせられるし
もう1つ、切り札がある


身の振り方を知らない私は
世話をしてくれる老夫婦の小さな食堂で手伝いをしていて
そこに現れたのが団長……

熱烈なスカウトを受けて 私は海賊船に乗った


老夫婦は反対してくれたけど、阿伏兎さんが身請け金を払ってくれたら OKした

貧しい町だったから 背に腹は代えられなかったのだろう

売られた、とも思ってない

初めて、人に求められて其処に向かった気がする

其の船は ならず者達の居場所(ホーム)
居心地は悪くない


だから、ただ 今は頑張ります


料理の上手い、
要領の良い、
少しだけケンカも出来る…

そんなヒロインに なれたらなぁ


━━━
━━━
━━━

━キッチン━


『よし 決めた!わらび餅を作る!』


団長に食べられてしまったプリンの代わり、急いで作らなきゃ


阿伏兎「へぇ そいつはやっぱり地球の菓子なのかい?」


『ええ、昔地球に住んたんで 多少知ってるんです』


息を吐く合間合間にカチャカチャと器具を並べる音

団長の空腹は平和と安寧の崩壊だからちょっと急いでる


阿伏兎「そうかい、おまえさんが作るんだ、さぞや美味だろう」


あ…
優しい目


阿伏兎「今度は団長に取られちまわねぇ内に味見くらいはしたいもんだね」


『ふふふ ありがとうございます…大丈夫、甘さ控え目なんで』


私の笑みを愉快そうに見守る
穏やかな時間


貴方のために
美味しいもの、作れたらいいな


『阿伏兎さんて、甘過ぎるのは苦手そうだなって思ってたんです』


阿伏兎「ん?嬉しいねぇ、おじさんの好みを覚えててくれたのかい?」


『へっあっエヘヘ、甘いのが得意じゃない人にも楽しんで貰いたいんですよ
だから…色々考えてですねぇ』


阿伏兎「はは わかったわかった、おまえさんは良い嫁さんになるよ」


嗚呼 このまま 時間がとてつもなく緩やかにほんの少しずつしか、流れなければイイのに

だって 阿伏兎さんがこんなに近い

ゆっくり、ゆっくり…祈りながら言葉をつらつら並べたりして


『お嫁さんかぁ…この仕事してるうちは出会いなんて団長に片っ端から潰されますね』


阿伏兎「違いねぇ」


『行き遅れになっちゃうのは切ないなぁ』


阿伏兎「わかったわかった、じゃあそん時はおじさんが貰ってやろうか?」


『えっ』


阿伏兎「えっ」


神威「えっ」


『ひゃあうわわわわだだだ団長ぉぉぉぉ!』


神威「驚いたなぁ、阿伏兎はもっと大人の女が好みなのかと思ってたよ」


阿伏兎「は…はは、知らないのか?有能で若くて健康なお嬢さんを口説いておくのは、健康な雄としてのマナーなんだぜ」


神威「へぇ…じゃあ俺も口説いておいたほうが良い?」


『かかか勘弁して下さい、い、いいいつからそこに…』


神威「甘いのが得意とか得意じゃないとかの辺りかな」


『なななななんでここここに…』


神威「キッチンには食べ物があるでしょ
いやぁホント 意外だなぁ
阿伏兎がロリコンだなんて」


阿伏兎「ロリコンじゃあありません、フェミニストです」


神威「なんかキャラ違くない?」


『私、神威さんよりおばさんだから大丈夫です、阿伏兎さんはロリコンじゃないです、フェミニストです』


神威「うん、どーでもいいよこのバカップル、それよりお腹空いちゃったな」


『ちょっと!食糧庫にエンプティマーク着いちゃう!』


神威「なんか頂戴なんか頂戴ー」


阿伏兎「はっ ムードとは縁遠い世界にいるねぇ、お嬢さん」


━━━
━━



そうして また日常の流れに飲まれていった私達

だけど
阿伏兎さんが言うと、何気無いリップサービスって分かってても胸の鼓動が暴走しちゃってます…


end



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あきゅろす。
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