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☆クラシカ口イドの小説(長編)
今日からの恋人3(甘)
何も言えなくなってしまった私は ただ 忍路を懐抱する

切ない…
押し寄せる 内側を締めつける、恋しさ


『んっふ…苦しいよ…』


バッハ「すまない…」


言われて ハッと腕の力を緩める

壊さないように、思いの丈をぶつけるように この腕に閉じ込めてしまえば、きっと ヒズみが生じるのだろう

まだだ
まだその時では無い


『ヨハン…貴方が誰で、私が誰であろうと関係ない。私は貴方を想い続けるからね…』


バッハ「…っっ…」


私の中を見透かす瞳の彩りが 先程の菓子とは比べものにならない位に甘くて
やはり 私は君を包み込むことしかできなかった


『……このまま、寝ちゃう?』


バッハ「ソファで?」


『ヨハンが離してくれないから…ふふふ、それ以上に居心地が最高なの、貴方の腕の中』


バッハ「……それも…まぁ…」


『冗談だよ。ダメだからね、ヨハンが疲れちゃうから…。ベッドに連れて行って』


バッハ「」


なんて誘惑的な台詞だろう
一瞬言葉を失うが 他意は無いと思い出す

気の利いた台詞が出て来ない…


バッハ「洗面所はそこだ」


『便利だね、此所』


バッハ「………住むか?」


『ヨハンのファンが黙っちゃいないでしょ』


バッハ「ファン?」


『……そーゆー所も魅力的だね、ヨハン』


━━━


バッハ「私はソファをベッドにして眠るから…」


『スト━━ップ!不粋なコト言わないの!こんなに大きなベッドで何を言ってんの?』


バッハ「い、いやしかし」


『恋人のヨハンの腕に抱かれて眠りたいのに…』


バッハ「……………………ンンンっふ!ゲフン!」


『ど、どしたの?大丈夫?』


バッハ「い、意味を理解して言っているのか?全く…」


『何?照れてるの?仕事が終わったら何でも付き合ってくれるんじゃなかったの?』


バッハ「…解った…同じベッドで寝よう。しかし、腕に抱くかは…別だ」


『…どして?』


バッハ「…………君の前では 紳士で居たい……」


『…!……い、いつもヨハンは紳士だよ…』


バッハ「君と……同じベッドに居ては 紳士の仮面など容易く矧がれ堕ちる」


『………!!』


バッハ「はははは…ふふ、君でもそんな顔をするのだな」


『…!!も、もう!真顔で言うから!バカバカ!』


バッハ「ははは、さっきのお返しだ……さぁ、寝ようか…」


『……うん』


部屋の明かりを消して、同じベッドに 二人で居る
慣れない空気が責める
緊張で 無音の空間に 血流や鼓動さえ響きそうだ


マズいな
想像以上だ…
これでは…眠れないかも知れない


『ね、ヨハン……手なら、繋いでも良い?』


バッハ「…ああ」


布団の中で 手を重ねるコトすら 良くない妄想を掻き立てる病的な私は 二人の枕の間に手の平を置いた


『わぁい』


無垢な笑顔で私と手を繋ぐと
彼女は愛らしく鼻歌を奏でる


━━………これは 私の音楽…

だが 鮮やかで透明な…子守唄のような……


━━━
━━



『ヨハン…眠ってくれた?』


『……大好きだよ……私、きっと、何かを思い出して、この部屋に居なくても良くなっても…ヨハンへの想いは忘れない』


『いつか、本物の恋人にしてね』



━━━そう、聞こえた気がした
唇に 優しい優しい感触を残して


━━━
━━



目を醒ますと、そこにはいつもの 忍路がいた


私を「バッハさん」と呼ぶ 忍路だった


状況に理解はあるものの、混乱気味の彼女はそそくさと帰って行った


キョーゴに言われた通り、電波装置のスイッチをオフにしてから 暫くシーツの波を見詰めていた


バッハ「思ったより、早かったな… 」


そう呟いて テーブルに紙が置いてあることに気付いた
それは置き手紙だった



『━━今日だけじゃなく、毎日の恋人にして』



彼女らしくない誘い文句だと思った
しかし 同時に彼女らしくもある、などとベッドの残り香に惑わされる


歌詞を綴るような、見慣れた筆跡
詩のような甘い辭(ソレ)
約束のように
鎖のように
魔法のように
私を占めていく


嗚呼 そうだ
書かれて差程 時間が経っていない、この誘い文句で歌を作って仕舞おう

こんな時まで 創作意欲を刺激する

そして、君に歌って貰おう
その仕事が終わったら 君を迎えに行こう

何もかもがスイートな君に もう…既に会いたくなっている


もう一度、その声でファーストネームを呼んでもらう為に


end



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