☆クラシカ口イドの小説(長編) 今日からの恋人2 ━━━ ━━ ━ 『良いの?ヨハン…』 バッハ「彼女達が居ては 話が進まない」 『彼女達………お母さんは いつも笑い掛けてくれないな…』 バッハ「………本当の……母親ではない…」 『ん………知ってる。けど、さ 広い意味での、お母さん。でしょ』 過去の生に於いての父も母もとうに居ない 今 与えられた生での 親と呼べる存在は 間違い無く、キョーゴや三弦だろう… しかし… 『じゃあさ、ヨハンの本当のお父さんやお母さんは優しかった?』 バッハ「……ああ」 『私も…そうだよ』 そういえば…クラシカロイドの過去の生は現代の史実にも掲載されている 作曲において 貢献度合いからだろうか 単に著名人だからだろうか 忍路の記憶は [誰]なのだろう 先程の話からだと、きっと記憶のベースになった者はいるのだろう… 『愛を沢山 貰った』 そう続けた彼女はソファに腰掛け 隣へ座れと促す 私が隣に並ぶと、彼女は目を逸らさずに そっと肩に触れて言う 『今世では、私がヨハンに 愛を誓うね』 バッハ「」 淀みの無い声と 真っ直ぐな魂を感じ ハッとする 同時に 罪悪感が芽生えて さっきキョーゴに言われた[恋人]の文字が焼き付いた 『驚いてる…?でも、ヨハンの瞳は綺麗、偽りが無い…私を想ってくれている目…』 隣り合った距離なら 身長の差は感じない 屈んで立ち上がった彼女の首が傾いて 私の唇に触れるだけのキスをした バッハ「……!!!!!?」 『おヒゲ、少しくすぐったい』 なんと 柔らかく笑うのだろう 唇同士が触れただけの静かなキスに 胸がざわめく 『ね、お昼寝しましょ♪』 バッハ「すまない 私はする事があるんだ…」 『あれ、フラれちゃった』 バッハ「……帰ったら……何にでも付き合おう」 『本当?』 バッハ「ああ」 『嬉しいな…此所で待ってます、ヨハン』 バッハ「…ああ」 外套を静かに翻す私は部屋から出る 密かに 先程の唇の感触を思い出して弛み、上昇する顔の熱を抑えられないでいた これから 打ち合わせだというのに いけない… ━━━ ━━ ━ ━ ━━ ━━━ しまった 少し遅くなってしまった 夕食は先に食べていてくれるように言ったが 大丈夫だろうか 速り焦って ドアを乱暴に開けてしまった私に少し驚くが すぐに笑顔を見せて彼女はそこに居た 『ヨハン、お疲れ様』 バッハ「先に食べていてくれたか?」 『うん…軽くね。ヨハンは?』 バッハ「まぁ…軽く、か」 『お菓子を 一緒に食べない?』 ━━━ ━━ ━ 『わ♪このチョコ最高』 バッハ「好きなだけ食べてくれ。貰ったは良いが 機会が無くて 口にすることは多くないんだ」 『甘い物は脳の活性化にも、ストレス軽減にも良いんだよ』 バッハ「キョーゴも同じように言っていたな」 『お父さんは不摂生に食べるから太っちゃうよね』 バッハ「ははは…キョーゴの腹を見たことがあるのか?」 『うん。この前一緒にお風呂入った時にねー』 バッハ「!?」 『あっははは、その顔!引っ掛かった!あははは』 バッハ「なんだ 冗談か…」 『いくらなんでもハタチを越えて、そんな事しないよ』 バッハ「……………… 忍路…」 『ん?』 バッハ「君は、ハタチを越えているのか?」 『そうだよ♪バダジェフスカやチャイコフスキーと違って、少し大人っぽいでしょ?』 バッハ「………」 『お酒も飲めるんだから』 バッハ「………そ、そうか」 『合法ロリじゃない?』 バッハ「?何だ それは?」 『冗談はさておき、ヨハンのお腹は大丈夫?太っちゃってない?』 バッハ「太ってはいないと思うが…客観視したことも無いな」 『じゃあ私が見てあげる♪』 バッハ「こ、こら…や、やめなさい」 『やだよー、ヨハンのお腹見せてー』 バッハ「こら… 忍路!や、やめ…」 『良いじゃんー』 バッハ「わ、私も 忍路に 同じ事をするぞ?良いのか?」 『えー…いいよ♪』 バッハ「っ!」 『私、太ってないし…ヨハンの為に綺麗でいたいから磨きをかけてるんじゃないかな』 バッハ「…っっ!」 『………ヨハン、顔 ちょっと赤い…よ?』 バッハ「わ、悪フザケは…ここまでにしてくれ…どうか…」 胸が 動悸が 早い…何だか、おかしい… 『ねぇ 本当に私達、恋人同士なの?』 バッハ「…!」 『恋人同士の距離感とは、違うみたい…』 バッハ「……君は、恋人の距離感を知っているのか?」 『んー………知ってるのとは、ちょっと違うかも…でも、他人とはさ、[そうでありたい距離]ってあるじゃない?』 バッハ「…」 『私がヨハンと居たい距離は、今の距離じゃない気がする』 バッハ「…!」 『私はもっと、近くに居たいのに…』 忍路の両手が私の頬を包む 『もう一度 キスがしたいけど…私の片想いみたい』 バッハ「それは…違う…わ、私の、片想いだ…」 『……優しいんだね、ヨハン…』 貴方は優し過ぎる 苦しい程………、 そう 君は囁いて 頬を擦り寄せて 瞼と額に静かなキスを降らせる 甘い、しかし切ないキスだ 違う…気を使って言ったんじゃない 女性に恥を掛かせまいとキレイ事を口にしたのではない 本当に私の片想いなんだ… ここで 君の唇を奪ってしまっても良い…が 君の心には届かないだろう 何を並べても空寒い言葉の羅列でしかないだろう やはり、元の記憶のある君でなければならないのか… 私が恋に落ちた、君じゃなければ キョーゴに悪戯に刺激された仮初めの記憶では… 今の君も… また忍路だというのに [*前へ][次へ#] [戻る] |