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☆クラシカ口イドの小説(長編)
今日からの恋人

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アルケー社
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響吾「いやぁーっはっは資料を見に来たついでに、脳波を調べてたんだけど…手違いがあってさぁ」


『えっと…?』


響吾「彼女の記憶中枢にまで干渉しちゃったみたいでさー」


バッハ「………キョーゴ…」


響吾「ここの装置の音波を彼女に浴びせていれば、元に戻るはずだ
よって、この建物内に居れば記憶の目覚めは早いだろう。スイッチは入れっぱなしにしておくから、彼女が元に戻ったら切ってくれ」


バッハ「彼女の記憶が戻れば、音羽館に帰せば良いのだな?」


響吾「うん。歌苗には上手く言っておくから。バッハも、僕がココに来た事はみんなには内緒にしといてね」


バッハ「………」


響吾「ははは、そんなに睨むなよ…そうだ! 忍路 紹介するよ」


『?』


響吾「君の恋人のバッハだ。君がここに滞在する間、分からない事があれば聞いたら良い」


バッハ「!?キョ、キョーゴ!?」


『恋人…』


「これで君の仏頂面もマシにはなるだろ♪それにここに滞在することになるなら、そう設定しておいたら便利じゃない?じゃあねー♪」


バッハ「ま、待てキョーゴ…ちょ、誤解を…」


バタン


━━━とりつくシマも無い

足早に部屋を出てしまった響吾は なるべくアルケーの社員達や重役達にも見られたくはないのだろうから

それにしても 酷い口上だ…

上記の説明でお分かり頂けただろうか

つまりキョーゴは失敗をした。
よりによって彼女の事で…
冗談じゃない。

冗談じゃないが、このシチュエーションは……願ってもいない…というか…いや…

私が彼女の側に居なければいけない、とは…どういうわけだろうか

私ではなくとも良いはずだ。しかし…しかしだ…
悪いものではない、というか━━━


『……貴方、は…ヨハン?セバスティアン・バッハ?』


考え込んでしまったが、私を呼ぶ声でハッと我に返る


バッハ「…私の顔を 覚えているのか?」


『んーん…お父さんが言ってた外見…』


バッハ「…そうか」


『貴方はお兄さんだと思ってた』


バッハ「…それも、キョーゴ……お父さんが言ったのかい?」


『これはお母さんが言ったの』


バッハ「……お母さん?」


『お母さんは眼鏡をかけてるの。髪の毛にオシャレなメッシュが入っていて…』


バッハ「み、三弦か…」


『そう…』


バッハ「………まぁ、実際、キョーゴと…キョーゴの助手である…しかし ヒメカが知ったらややこしい話になりそうな…」ブツブツ


『だけど、ヨハンは…私の恋人なの?』


バッハ「恋人…………の、ヨハンで 良い」


『そう…キレイな瞳をしているんだね、ヨハン』


バッハ「…………もう一度呼んでくれないか?」


『?…ヨハン?』


バッハ「…………うむ……」


『名前、呼ばれるのが 好きなの?』


バッハ「…………まぁ、な……ゲフン!空腹等は大丈夫か?」


『うん、それより ヨハンの音楽を聞かせて欲しい』


バッハ「…ムジークか?」


『何でも良い…貴方の音が聞けるなら』



彼女は一時的に記憶を失っている
眠っている、と言うべきか…
心や脳の一部が眠っているとき、音楽は 何か 良い切欠になるかも知れない

目覚めたてのシンガロイドの君はこうだったのか?


そう考えた私の手には 既にタクトが召喚されている

だからと言って何も 忍路に 私の音楽を求められたことに喜びを禁じ得ずに 速る気持ちがさせた事では無い


━━♪♪♪♪♪


『…………♪…』


私の音が この空間に響く

君の心の港に届くように、懐かしい 最初にセッションした音を重ね 思い出を重ね
静かに祈る


優しい歌声がその旋律に溶け込めば 私の魂が高まる
鼓動が 生を貴ぶ…


『♪♪♪………』


バッハ「…」


━どうだった?
それは 無粋な質問だろう

その微笑みが物語っている…

君も私と同じように…達成感を感じてくれたのだろう


━━━コンコンコンコン


その時 ノックの音が陶酔を遮った


バッハ「何だ」


三弦「先程 ムジークの波動を確認したんですが…っと…その娘は…」


チャイコ「なんだオメェ!バッハ様に何かしでかして仕置き食らってたのか?」


バダ「チャイコちゃん、 忍路ちゃんだよ。お客さんだよ」


『お母さんと、チャイコフスキーと、バダジェフスカ…』


三弦「お母さ…?」


チャイコ「オラをその名で呼んで良いのはバッハ様だけだァ!こんにゃろ!」


バダ「ま、待ってチャイコちゃん、何か様子が変じゃない?」


バッハ「………訳あって、暫く彼女はここに滞在する…」


三弦「………(音羽博士っスね…)判りました…」


『お母さん…』


三弦「…」


チャイコ「母ちゃんて?」


バダ「ま、まさか三弦さんのコト?て、コトは………バッハ様のコト お父さんだと思ってるとか……?」


『お父さんはヨハンじゃない…』


三弦「ヨ…」


バダ「ヨハ…」


チャイコ「てんめぇ!!バッハ様のファーストネームををををオラ達だって恐れ多くて口に出来ねえのにぃぃぃぃ」ポカポカポカポカ


『イタタ、何?何なの?酔っ払ってるの?』


チャイコ「うわぁぁぁぁぁぁん!!いっそ酔わせてけれぇぇぇぇぇ」


バッハ「………失礼、彼女とは話がある……」バタン


バダ「し、閉まっちゃった」


チャイコ「ぬぁぁぁぁぁぁ!!やってらんねぇぇぇぇぇ!!」


三弦「…」




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