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NOVEL ROOM
獣VS武VS鉄 -猿-
タイトル:ケモノの本性


茜「おいおい。まるで、私が弱い者いじめしているみたいじゃん。言っとくけど、そいつも選ばれた奴だぜ?」
茜の発言に、千絵は‘何と!’と驚いて、立ち上がる彩加を見る。彩加は千絵に目もくれず、茜を見る。

千絵「ところで、お前はすごい格好をしているな?何で、パンツ一丁なんだ?普段から、それで生活しているのか?」
と、真顔で茜に聞く。茜は返答に困る。バカな質問には、どう答えたらいいか、考えてしまったのである。茜は考える。普通に考えたら、こんな格好で生活している人間はいないとわかるはずだけど・・・いや、この人は、日本での生活が長くないのか?世界は広いからな・・・。でも、この人の格好・・・Tシャツにジーンズ、スニーカーって、普通じゃん。
結局、茜はその質問を無視することにした。

茜「で、あなたが私とやるの?どっちでもいいけど?」

千絵「あれ?私の質問はどこいった?まぁ、いいか・・・その通りだ!弱い者いじめなどくだらん。相手してやる」
かなりのいい加減な性格のようだった。千絵が、一歩踏み出そうとしたところで、彩加に、左手を掴まれる。

彩加「あの。大丈夫です。千絵さんは、帰ってください。これは、私の問題です」
有無を言わせない口調。だが、千絵はそんな彩加の手をふりほどく。そして、

千絵「まぁ、そうかもしれないが。・・・少し加勢をしよう。弱い者いじめは好きじゃないと言っただろう?一方的なのは、嫌いなんだ。少し弱らせたら、引こう」
彩加は何か言おうとしたが、それを無視するように、茜に突っ込む。スピードは速い。が、それでも、彩加より、少し速いといった程度。茜は、相手の能力が読めないが、とりあえずは力押し。相手のタイミングに合わせて胴にゴリラの右腕を打ち込む。茜の予想が裏切られる。相手は一歩も後ろに下がっていない。力を込めたはずなのに・・・。さらに、打ち込んだ拳に痛みを感じる。違和感。相手の能力がわからない恐怖。それが、一気に茜の頭を支配する。

千絵「ふふ。なかなかの拳。それにしても、変わった手をしている。ほう・・・獣か・・・。始めてだ。ところで、鉄を殴ったのは、始めてか?思ってたよりも硬いか?不公平は嫌いでな。私の能力は鉄だ。心してかかれよ」
そして、茜の驚きなど無視するように、鉄の右手のアッパー。続けて、左足を軸での蹴り。ちょうど、肺の辺りにはいる。耐えきれず、茜はその場に座り込む。うまく呼吸ができないのか、せき込む。

千絵「手加減しておいたのだぞ?まずは、相手の力量を見なければならないからな・・・。それにしても、お前。よわっちいな。ホントに加勢はいらんかもな。それとも、それ以上に、あの女が弱いのか・・・」
茜は、プライドを傷つけられるが、立てない。呼吸が、まだ、うまくできない。が、呼吸ができないまま、猿の足でジャンプ。そして、翼を広げる。呼吸を整える。屈辱。怒りが、茜の頭を支配する。相手、千絵を見下ろす。こちらの様子を伺っていた。その余裕たっぷりの構えが、さらに、茜をイライラさせる。茜は、駅の屋根の上におりたつ。そして、今まで以上に足を折り曲げ、猫背になる。猫が獲物を狩る時の体制。そして、突っ込む。空中で茜は、顔を、自分の胸が見える位置まで持ってきて、同時に足を手で抱え込むようにして、丸まる。全身から、鋭い毛がでる。その姿は、まるで、ハリネズミ。そして、そのまま突っ込む。彩加目掛けて。千絵は驚く。てっきり、自分目掛けてくると思っていたからだ。が、自分の立ち位置からは、一歩も動かない。彩加も驚いたが、思うように身体は動き、避ける。避けたのと、変わらないくらいの時間差で、茜がそこに突っ込む。次の攻撃はこない。彩加も千絵も、砂ぼこりが舞う、茜がいるであろう位置から目を逸らさない。砂ぼこりが、消えていく。直立する人影が見える。茜は彩加の方を見ていた。普通の、人間の姿だった。パンツの後ろ側には、注意しなければわからないほどの無数の小さな穴が空いていたが。それ以外は、何も変わらなかった。見た目は、ただ、中身は、精神は変わっていた。狂っていた。茜は、二人から目をはずす。そして、ギャラリーの方へと、目を向ける。二人が察知した時は、すでに、茜はギャラリーの方に突撃していた。ゴリラの手を振り上げる。だが、そのゴリラの手の大きさは倍以上だった。どうやって、身体が支えているのか、わからないほどに。そして、振り降ろす。まるで、虫でも殺すかのように、いとも簡単に。何の感情もなく。悲鳴。手をどけたところには、倒れる数人の人間。さらに、茜はその腕を振り回し、何人もの人間をなぎ倒す。駆け付けた警官もなぎ倒される。茜の行動に茫然としていた二人だったが、突っ込む。彩加は、タイミングを見計らって、茜のゴリラの大きな腕が振り下ろされるところのギャラリーを押しのけて、振り降ろされたゴリラの腕を両手の掌で受け止める。想像以上の力。先ほどまでとは、比べ物にならない。足が、地面にめり込んでいくような感触。視界の端に、千絵が移る。すでに、茜の右わき腹、目掛けて、蹴りを放つところだった。左足でおもいっきり踏ん張り、歯を食いしばって、右足に力を込めて、茜の右わき腹をける。が、びくともしない。驚くが、攻撃をやめない。右足を、茜のわき腹にヒットさせたまま、身体をひねり、上に背中を向け、地面に両手をつく。左足での後ろ蹴り。さっき以上に力を込める。同じく鉄の蹴り。が、効いていない。千絵は感じた。恐怖を。人間ではない。能力も考え方も、何もかも。本能の赴くままの行動。そう思った。獣。獣。その文字が頭をよぎる。獣が人間に牙をむく。純粋な戦闘力も生命力も人間以上。武装するから、知恵があるから、人間は勝てる。だから、冷静に。冷静になって、冷静を装って、千絵は体制を立て直して、距離をとる。そして、茜の左側から正面に回り込み、切れている茜の顔面に左拳での一撃。茜がよろめく。休めることなく、今度は右。次に、左拳のアッパー。茜のうめき声。次を繰り出そうとした時、彩加に押しのけられる。彩加の腰の入った右拳が茜の胴体に。一撃で、茜の身体が吹っ飛ばされる。茜の身体は、人間の姿に戻っていた。仰向けに倒れたまま、起き上がらない。彩加は、拳を打ち込んだ姿勢のままだった。そこに、驚いていた千絵が声をかける。

千絵「あらら。アンタ、凄いな。私の助けいらないじゃん。って、言いたいところだけど、悪いね。私はもう引けない。あいつは、ルール違反だ。一般人に手を出した。力を無暗に振るう奴には、躾をしないとな。というわけで、後は、私にまかせな。アンタは、あいつを始末できそうなタイプじゃないからな。こっからは、手加減なしだ」
首をコキコキと鳴らす。

彩加「いいえ。私がやります。私が、教えます。教育者ですから。半人前ですが」
ん?と千絵が見返す。彩加がさらに付け足す。

彩加「大学生なんです。中学校の教師目指してて。時には、体罰も必要と考えてたりします。だから、大丈夫です」

千絵「体罰ね。今の時代に、なかなか珍しい。将来に期待できる教師だ。でもまあ、ここは、年長者の顔を立てて、引きなさい」
諭すようにいうが、彩加は引かない。そして、一歩足を踏み出す。千絵は呆れるが、止めようとせず、自分も、足を進める。と、後、少しのところで、茜が起き上がる。二人は身構える。ゆらゆらと。足取りがおぼつかない。千絵のアッパーが聞いたのかもしれない。

茜「あーっ、いってー。何だってんだ、くそっ」
二人に目を向ける。得心したような顔になる。

茜「あー、アンタらがやったのか、よく覚えてないや」
どうやら、切れている時に行ったことは、覚えていないようだった。だからこそ。危険。二人の意見は、一致していた。無意識に。本能に従う。それは、危険であるということを、教える。力を持っているから、その使い方を。

茜「あーあ。たく。まぁ、いいや。面白くなってきた!ちょっと、分が悪いな。悪いったら、悪い。本気でいくか。・・・・・・なぁ、アンタらさ。ビースト・フォーム(獣形態)って知ってる?相手したことある?鉄のアンタは・・・なれるよな?知んないけど。まぁ、知ってようが、関係ねーけど。私のビースト・フォームはレベルが違うぞ?本当の意味で、ビースト・フォームだ!まぁ、死なないように、頑張れよ・・・」

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あきゅろす。
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