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NOVEL ROOM
毒VS操
タイトル:二南 凜



深夜3時。東京にある建設中であり、現在12階まで完成している某ビルの5階の一室にこの物語のヒロインはいた。目は鋭く、目の前に立ちふさがる5人の男たちに向けられている。



ヒロインの名は二南 凛。26歳のOLである。顔は美形だが、特に特徴はない。 どこにでもいる女性だ。ただ、町を歩いていても、彼女を見分けられる手段がある。例え、後ろを向けていようとも。それは彼女の服装の色にあった。彼女の体 は紫で包まれているのだ。上から下まで、ありとあらゆる彼女の身につけている ものは紫なので。口紅やマニキュア。挙げ句の果てには、コンタクトまで紫なのだ。髪はポニーテール。紫のリボンで縛ってある。ポニーテールで紫を身につけ ている女性と言えば、二南 凛。自分でそう自負しているくらいだ。故に。その個 性の強さ故に、彼女にはあまり友達がいない。やはり、近寄りずらいのだ。理解 できなくはない、というより、積極的に理解できる。彼女の名誉のために述べて おくが、彼女の人柄には何ら問題はなく普通の女性である。むしろ、普通より気 が利くくらいである。と、ここで一つ訂正しておく。下の乾かぬ内に訂正するの も恥ずかしいが、彼女はやはり人柄にも問題がある。ただ、彼女が上手に使い分けているので、他人にはわからないだけである。彼女がどんな性格なのか知りたければ、 是非ともこの先を読むことお勧めする。ただ、彼女の虜にはなってはいけない。これだけは心得てもらいたい。え?注意?違います、違います。警告です。


凛「さーて。何が目的かしら。変態ども」
凛はおどけて見せた。その口調に不快感をあらわすでもなく真ん中の男が答える。

男1「そのようなことは聞くまでもないでしょう?君の体なんかに興味はない。あるのはその能力ですよ」

凛「それはそれは失礼しました。ふーん。私の毒の能力にね。言っとくけど…」
と凛の言葉など聞く耳をもたず一番右側にいた、凛との距離をジリジリと詰めていた男5が凛に飛びかかった。凛は同様するでもなく、数歩後ずさり、右手でサッと、男の体を真っ二つに切るように動かし、空を切った。直後、呻き声が響いた。先ほどの男は腹の辺りを両手で覆い、うずくまっていた。見ると、血が流れ出ていた。 凛は一瞥しただけで、真ん中にいる男に視線を戻すと口を開く。

凛「フン。ナメない方がいいわよ?生身の人間で太刀打ちできると思って?あんたの操の能力じゃ、私には勝てないのよ」
凛の言葉に真ん中の男は声を出さずに 表情だけで笑った。

男1「それはどうかな?能力では君の方が有利かもしれないね。でも、そんなこと 今までに何度も経験したさ。だが、僕は生き残っている。能力がどれだけ優れて いてもね、器が欠けていたらダメなんだよ。そんな奴らに、器にピッタリ合った 能力を持っている僕が負けるわけないでしょう?僕の頭脳とこの能力は見事にマ ッチするのさ」
最後の言葉が終わると同時に左の二人が凛に飛びかかった。今度も凛は動揺する ことなく、同じく後ろに下がり、キッチリ二回、相手に向かって適当に手を動かした。同時に二人の呻き声が響く。一番左の男は左足を。もうひとりは右手を押
さえていた。凛はあきれ果てた表情で二人を見る。そして、また真ん中の男に視線を移す。

凛「無駄よ。あきらめなさい」
だが、男の表情は笑ったままだった。その時、男の左側にある扉がキィと開いた。のぞいていたのは、ツーテールの小さい女の子だった。女の子は呻き声をあげている男たちに恐怖を感じてそのまま固まっていた。凛は咄嗟に逃げてと叫んだ 。しかし、女の子は凛に視線を向けただけで動かなかった。足が震えていた。凛は精一杯笑い、こっちに来なさい!と叫んだ。女の子は震えが止まったようで、徐々に凛の方へと近寄っていった。ただ、目は怯えきっていた。次第に駆け足に なった。その間も凛は女の子に視線を移しながらも、感覚は男たちにむけていた。凛はしゃがみこみ女の子を抱き締めようとした。しかし、あと少しのところで 、凛は両手を下ろし、女の子が近づいたところで右手の甲で女の子の頬を打った。女の子は衝撃でとばされ寝転がる姿勢になった。女の子の右手からカランと床に何かが落ちる音がした。小さな携帯ナイフだった。女の子から視線をはずし、凛は立ち上がりながら、真ん中の男を見た。

凛「ふーん。これが頭を使うってこと?大した根性してるわね」

男1「凄いですね。まさか、引っかからないなんて心あります?」

凛「あんたに言われたかないわね…」
二人は押し黙る。相手の次の出方を窺うように。沈黙が空間を支配する中女の子の泣き声が突然あがる。その瞬間、凛は女の子の 方を見た。油断だった。見たと同時に凛の耳にヒュンという音が聞こえた。咄嗟に反対に目を向けると、凛の目に飛び込んできたのは、ガラス越しにクレーン車につり上げられている鉄骨だった。次の瞬間、その鉄骨は凛にむかってきた。ガシャーンという音が夜に虚しく響いた。



鉄骨は壁を貫いていて、半分ぐらいまで壁に埋まっていた。あたりには瓦礫が散 らばっていた。女の子が近くにいくと、彼女がいた辺りには大きな丸い穴が開いていた。円の縁は溶けたような跡があった。下は四階。どうやら、凛は逃げたらしかった。女の子はできるだけ、覗いて探したが、もういないようだった。立ち 上がると女の子は男たちのもとに向かった。その内3人はなおも呻き声をもらして いた。女の子は真ん中の男の前まで後数歩というところで、突然、前から倒れた。体はピクピクと痙攣していた。次に腹を押さえている男、足を押さえている男 、腕を押さえている男が立て続けに倒れた。残りの男はすぐにこの部屋からでよ うとした。だが、扉にたどり着く前に二人も倒れた。



ビル三階の一室。そこで、凛は休んでいた。

凛「にしても、むちゃくちゃね。後少し反応が遅れていたら、ヤバかった。ふー 。さーて、そろそろ気化した毒が聞き始めてるころかな?」
そこまで言ったところで、凛はいきなりズボンのポケットをあさる。そして、煙草とライターを見つけると、一服し始める。

凛「どーしよっかな。このまま逃げてもいいけど…やっぱ、欲しいしな。弱そうだし、行くか!」
そうして、自分を奮い立たせると、付けたばかりの煙草の火を舌で消し、立ち上がった。 先ほどの部屋に戻ると、六人は倒れたままだった。意識はありそうだが、体が思 い通りに動かないようだった。凛は見下すように六人の周りを歩いた。そして、 難しい顔をする。

凛「んー。やっぱいないわよね。どこにいるのかしら、本体は」
その時突然、六人が立ち上がり、凛に襲いかかった。さすがの凛も今回は完全に不意をつかれ回避が間に合わなかった。六人はそれぞれのしかかり凛を捕らえた。

凛「くっ。」
だが、凛は冷静さを失わず、すぐに能力を使った。凜の体に触れるものの体はす ぐに溶解した。腕が。指が。顔が。足が。溶けていった。傷口からでた血が凛に かかる。だが、凛はそんなことに注意を払わなかった。正確には払えなかったのだ。なぜなら、六人は未だに凛を押さえていたからだ。さっきと違う。先ほどよ りも傷は遥かに深いのに誰も痛みを感じていない。まるで、痛覚がないみたいだった。凛はさすがに異常と思い、フルに能力を使った。本当に一瞬で腕が。骨まで溶けたのだった。血すらも流れない。そこまでして、凛はようやく逃れることができた。そして、後ろに下がり距離をとった。

凛「はぁ、はぁ…」
呼吸を整え、凛は口を開く。

凛「おかしいわね。毒効いてるはずなのに。どういうことかしら?」
凛を無視するように、六人は凜に向かう。まるで、ホラー映画のようだった。しかし、スリルは比べものにもならない。だが、凜は冷静に対応する。右手を真一文字に振る。向かって来ていた六人の内、女の子の首が飛ぶ。残りの5人は胴体が真っ二つになった。腕は二本とも途中で切れるかたちとなった。更に凜が身構えていると、先ほどの男が'ふふ'と笑い声を上げる。
男「本当に、あなたは躊躇しませんね」

凜「それはお互い様でしょう?よくもまあ。お人形さん遊びじゃないのよ?]

男「お人形さん遊びですか?はは。面白い例えをしますね。うん。本当に。でも ね、僕にとってはそれと大してかわらない。対象物のことを考えずに使うという点で」
凜は一度ため息をつく。そして、俯いた。男はその様子を不思議そうに見ていた。突然、凛が顔を上げ、笑い声をあげた。

凛「はは…ははははは。最悪。最悪ね、あんた。でも、大好き。なんたって、容赦しなくていいんだからね。私の毒はきついわよ。勿論、私も。私は毒。毒こそが私。毒なしで私は語れない。いーい?私は優しいわよ。少しでも、生きてられ るようにしてあげるから。即効性の毒なんて使わない。ジワジワと。それが、私のスタイル。それが快楽。あぁ、早くあんたの、苦しむ顔をみせて。私に快楽を与えてみせてよ!!」
と、次の瞬間、凛の姿は消えていた。先ほど同様の行動をとったのだ。男は毒で 作られた穴を見た。そして、笑った。なぜなら、このビルには彼の操り人形が多数いるからだ。



外はすでに明るくなり始めていた。凛は先ほどまでいた建設中のビルを十分見下ろせる、となりの高層ビルの屋上にいた。

凛「ちょっと、来るまで時間かかったわね。ま、いろんなとこに穴あけておいたから、混乱してるでしょ!」
そして、凛は右腕を拳を作った形で空に向かってあげた。しだいに、彼女の腕か ら毒がもれだした。そして、その毒は上空に集まりだした。数分後、上空には大きな蛇が存在していた。毒の液体でできた蛇。蛇の体のあちらこちらから、地上に毒が数滴、固まって落ちていく。どうやら、凛は蛇を完全な姿で維持するだけの精神力を、今は持ち合わせていないようだ。それとも、彼女の想像力に問題があるのか ・・・。彼女は空に向けていた右手をビルに向けて、下げた。そして、それと呼応するように蛇も動く。 凛が拳をとき、パーの形をつくる。 同時に、蛇が口を開ける。そして、すぐにグーの形を作る。 蛇の大きく開いた口も閉じられる。ビルの斜め半分は蛇に食べられていた。ビルが崩れる。上空の蛇はすでに姿を消していた。凛は崩れたビルを見ながら、呟く。

凛「まぁ、どうせ、あの中に本体はいないんでしょうね。たく、早く帰ってねよ 。肌に悪いわ。・・・明日・・・今日は体調不良ね。うん。休もう」
踵を返し、凛は帰路についた。その様子を一匹のカラスが見ていた。



東京の某高級住宅街。そこに、大きな屋敷が建っていた。そして、その一室に操の能力者がいた。彼の名は空本 千太郎。困ったような表情をしていた。

千太郎「んー。毒には逃げられてしまいましたか。やはり、二人相手はきつい。それ でも力の能力を手に入れたので悪くないでしょう。しかし、その内、リベンジさせてもらいますよ」
そして、笑った。千太郎の目には帰路についている凛が映っていた。カラスの瞳越しに。

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