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NOVEL ROOM
風VS闇
タイトル:大高愛風


仁の死から約3ヶ月後・・・

季節はすでに冬にはいっていた。
これは、高山から北へ約350q離れた場所にある、江浜という少し寒い所に住む大高愛風という一人の少女の物語である。

ハァハァ

紺色のブレザーに、青のリボン、紺色のスカート、黒いタイツ、薄いピンクのマフラーを首に巻き、右手に青の学生カバンを持ちながら、愛風はすでに暗くなり視界の悪くなった森の中を白い吐息を漏らしながら、そして、時々後ろをチラチラ見ながらも全速力で駆けていた。

ガサ

木々から抜けると、木に囲まれた草むらに愛風は出て、‘ふぅ‘と深いため息をつくと、右手で額の汗をぬぐった。

>愛風 ここまでくれば・・・

そう思いながら後ろを見ると木々はすでに闇に飲まれ、葉が風にガサガサと揺られる音が辺りを包んだ。

???「嬢ちゃん、案外足速いね」
背後からかすれたような声が聞こえると同時に、愛風は後ろから何者かにはおいじめにされた。
愛風「きゃ!!」
愛風は突然のことに短い叫び声をあげたが、葉が風に揺られる音でかき消されていった。
???「クク、こんな山奥で叫んでも誰も助けになんか来ないさ・・・」
>愛風 ・・・そうだ、携帯!
そう思いつくと、はおいじめにされているため、自由に動かせない右手で何とかカバンの外のポケットに入れてある携帯を取り出そうとしたが、男は不審な動きに気づき、愛風のカバンを強引にひったくると、後ろの森の中に投げ入れてしまった。
>愛風 しまった・・・
???「おーおー、ついに最後の希望もなくなったねぇ」
男は顔を愛風に近づけながら、手でブレザーを脱がしにかかった・・・


ズバッ

その音と共に愛風は前に走りそして距離をとり、自分をはおいじめにしていた奴へと、視線を移すと、ボロボロの黒いロングコートに穴のあいた茶色のセーター、それにどこかの汚れた作業ズボンにボロボロの革靴に黄色の汚れたミット帽に少し長いひげを生やした男が左肩をおさえているのが確認できた。

???「チィ、何しやがる!」
男は肩をおさえながら獣のような目で、愛風を見た。
愛風「それは、こっちのセリフよ!女の子をいきなりはおいじめにして、キスまでしようとして・・・アンタの目的は私の体?それとも、私の能力?」
???「まぁ、目的は能力のほうだが、その前に少し楽しむのも面白い・・・まったく、最近の子供は発育がいいなあ」
そういうと、男は愛風の体を、下から上まで嘗め回すかのように見た。
愛風「悪いけど、どっちもあげないから・・・」
愛風は男を力いっぱいに睨んだが、男の表情は変わらず、しばらくの間沈黙が続いたが、しびれを切らしたのか男が先に動いた。
???「力ずくで奪えばいいだけのこと・・・」
男は少しかがむと、愛風に向かって突進していった。だが、愛風が両手の手のひらを男に向けるとそのまま後ろに飛ばされ、木にドスンと当たった音だけが聞こえた。
愛風は‘フー‘と一息つくと、クルッと背を向け歩き出した。
???「なかなかやるじゃないか・・・だが、オレの‘闇‘の能力の前では無意味だな!」
男の声に愛風が後ろを向くと、すでに自分の背後にいて、避ける間もなく両手をつかまれた。
>愛風 クッ・・・
愛風「や、闇?」
愛風は震える声で聞き返した。
???「そうだ・・・ククク。観念するんだな」
そういい、愛風の顔を覗きこむと、愛風は微笑を浮かべていた。予想と違う表情に男の顔が強張った。
???「ん??」
愛風「へぇー。じゃあ、アタシの‘風‘とどっちが強いか比べてみましょうか?」
そう言った愛風の顔には、笑みしか浮かんでいなかった。

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あきゅろす。
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