[携帯モード] [URL送信]



「さなちゃん、今日も100点取れなかったの」
「まなちゃんは100点だったわよ」
幼い頃からずっとずっと血の繋がっていない兄貴と比べられてきた。それが堪らなく嫌で、自分はよくパパが買ってきてくれるゲームばかりして現実逃避を繰り返していた。

私と兄貴は父親が違う。
兄貴の父親は学者で、学者界では結構有名な人間だったらしい。
だけどノーベル賞相当の研究論文の主張権を巡って、兄貴の父親は研究所で毒素自殺をした。私が兄貴の妹として生まれる前の話だから詳しいことは知らない。

一方、私のパパは至って普通のサラリーマンだ。
だから母親はパパのことをよく前の父親と比べたし、私のこともよく兄貴と比べた。親の血のせいにはしたくなかったけど兄貴には「学者の血」のソレがある。俗に言う、天才。私はすること全て人並みで、天才好きの母親からは兄貴と比べる凡人物差しと思われていたに違いない。
そんな母親がなんで凡人のパパと再婚したのか不思議だった。
昔パパに聞いたところ、彼は苦笑いをして私の頭を撫で、
「学くんのパパに似てるから、かな」
撫でた手の人差し指を自分の口に当てた。秘密、の意味らしい。
パパは優し過ぎる。母親に会っていなければ今頃、普通の家庭で「自分」として普通の生活をしていただろう。引き摺る思考の母親で本当に申し訳ないと思った。

母親の兄貴贔屓は歳を重ねる度にエスカレートしていった。それにつれて私のやさぐれていく過程を黙って見ていられなくなったパパは、兄貴の高校進学を時機として母親に別居を提案した。
意外に母親はこれに二つ返事で応答した。
パパは新しい住居を決める時に少し寂しそうな顔をしていた。別居を後押ししたのは私のことだけじゃなさそうだった。
「学は前の父親に似てきたもんなあ」
そう呟いていたのを覚えている。

兄貴が悪くないのは頭では理解していた。だけど体がトラウマを引き摺って兄貴に普通に接することを拒否している。トラウマって自分で言ってしまえば言い訳にしかならないけど。
ただ、兄貴に似ている詔を好きになってしまったことに直結的に関係していることに変わりない。結局は私も母親と同じことをしてしまっている。「母親の血」のソレが関係しているに違いない、そう思った。




[*前][次#]

9/14ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!