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髪の毛をピンクと金のツートンにして心機一転、早速ライブのオファーが飛び込んできた。
僕はベースが弾ければなんでもよかったので、宮瀬さんに付いていくことにしたのだが、ライブハウスに着いて驚いた。ワンマンライブが出来るほど宮瀬さんのバンド、「ハルシオン」は意外に大きかったのだ。
「新しいベーシストが入ったんで、今日から俺はベース兼ボーカルをリストラされ、ギター兼ボーカルになります」
ライブのMCと言われる部分で、宮瀬さんが怠そうな口調で喋り、隣にいた僕の頭を撫でる。
スタンディングの客席を眺めると、俗に言う原宿系装束の女の子が多かった。
ここで空気を読まず「僕は女の子です」と言ってしまったら、イケメンの類に入る宮瀬さんに撫でられた僕は反感を買うに違いない。
でも嘘を言うのは良くない。昼ドラで「嘘つき!」と叫ばれて女性に刺される男性をよく見るからだ。嘘つき呼ばわりは慣れているが、刺されるのは慣れてないのでここは空気を読もう。
追い込まれて追い込まれた結果、僕はベースを1回掻き鳴らす。
「チロルチョコが好きです」
元々まともになかった僕の名前はチロルに決定した。
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