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僕の髪の毛がまだ金一色だった時の話。
母親はどっかの研究員で、ヒトクローンの研究をしていた。詳しく言えば、クローン技術を応用した再生医療の研究員だった。
将来有望な研究だったから、学者の人たちに結構注目されていたのだが、母親は「他人の為」じゃなくて「自分の為」に研究をしていた。
母親には右手がなかったから。
母親が居なくなった後、宮瀬さんに話を聞くと「天性的な問題なら未だしも、毒素自殺に巻き込まれて神経をヤられた」って言っていた。だけど宮瀬さん自体余り信用出来ない存在だから、本当の話か分からない。

僕は「失敗作」らしい。
15歳を越えた辺りからおかしいと思っていたのだが、僕には生理が来なかった。容姿も身長も幼稚体型のまま、考え方ばっかり大人になってしまい、いつの間にか頭でっかちの人間になってしまっていた。
僕から切り離して母親が付けるはずだった右腕は、母親の腕より二周りも小さかった。成長が止まっているのだから、僕の腕はそれ以上成長しない。
僕が17の時、成長しないことを悟った母親は宮瀬さんに僕を譲った。その時の最後の言葉を忘れない。
「ダッチワイフでもいい、好きに使ってくれ」
、と。母親は形式上娘の僕の目前で淡々と喋った。
それから捨てられた僕は、全てにおいて気力を失っていた。生きているか死んでいるか分からない毎日の最中、宮瀬さんが僕に楽器をくれた。その赤いベースは、のちに僕の人生相方になると言っても過言はなかった。
ちなみに宮瀬さんにダッチワイフとして扱われたことは未だにない。彼は意外に紳士だった。



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