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歩道に牛の模様みたいな猫が居た。詳しく言えば死体だった。
道路から引き摺られたような褐色がずるずると、生々しくコンクリートと血痕の境界線を彩っている。その跡を見た限り、誰かが車の通行の邪魔になるから退けたのだろう。
猫は口を少し開けていた。舌は重力に負けてだらりとだらし無く口からはみ出ている。
そして尻尾がない。もともと無かったものなのか、千切れてしまったものなのかは判らなかった。

「猫、死んでますね」
苺は猫と同じように口を少し開けて、他人事のように呟いた。実際他人だけれども。
いつものように探偵ごっこをしないのかと聞くと、彼女は僕の右手を強く握る。答えはなく、ただ互い違いに指を絡ませるだけだった。
「探偵ってね、いつも全て終わった後に解決するんですよ。未然には防げないんです」
悲しそうに笑って、そう喋った苺は繋いでいた右手を解くと両手の平をぴたりとくっつけた。僕も彼女の真似をし、両手を合わせて目を閉じる。
さらりと春の風が猫を含めた僕たち3人を撫でて走った。

来世こそ、キミに幸あれ。
結局他人事みたいな黙祷になってしまった。実際他人だけれども。



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