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R E B O R N !

「だけどさ、獄寺。少なくとも、お前は皆の大切な人だぜ。それは、忘れんなよ」
 はっ、と顔を上げれば、見たことがないような男が立っていた。その男は、優しく獄寺に微笑みかけて、顔にかかる前髪を優しく退かした。
「たとえそうじゃなくても、お前は、……オレの一番大切な人だ」
「……テメェ、ムカつく」
 獄寺はゆっくりと山本に近づくと、その肩に額を押し付けた。
「普段はロクに勉強も出来ねえ馬鹿なのに。こんなときばっか……」
 こんなときばかり、大人の表情でこちらを見ないで欲しい。
「あ、もしかして惚れ直したとか?」
「バーカ!」
 嬉しそうな顔が、獄寺をにこにこと見つめている。
前言撤回、やはりこいつはお気楽で阿呆で救いようのない馬鹿だ。
 その胸に小さく拳を叩き込み、獄寺は苦悩する。
 本当に、なぜこんな馬鹿な男など。
「あ、そういえばさ、オレが練習してるとこいつも見ててくれたのな、獄寺?」
「? …あっ!」
 その言葉の意味するところに気付き、獄寺は山本の胸を突き飛ばした。
 そういえば、先程激昂した折にそんなことを口走った気がする。
 こいつにだけは、そんな女々しい行為を悟られたくなかったのに。
「そ、それはだな……」
「嬉しいな〜。見ててくれたんなら、声かけてくれれば、もっとやる気出たのにな」
「………」
 自分でも血迷ったとしか思えない。
 こいつは、本当に、ただの馬鹿だ。
「……勝手に一生野球してろっ、この馬鹿ッ!」
 かなり本気で拳を繰り出したが、あっさりと避けられてしまう。それが更に苛々とさせて、獄寺は蹴りまで混ぜて山本に襲い掛かった。
「あははっ」
「テメッ、大人しく倒されろよ!」
「え〜、だって当たったら痛いだろ」
「なっ…、今すぐ死ねッ!」
「おー、獄寺、また花火か?」
「……………マジで果てさすッ!!」
それでも、山本の自分を大切だと言ってくれることがとても嬉しくて、獄寺は山本に見られないように顔を背けて、不器用に小さく笑ったのだった。


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あきゅろす。
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