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R E B O R N !


「その、白いの牛乳?」
「…Che cosa ha detto?(何ですって?)」
「えと…白い…わかんね、それ…クエッロ、が…ラテ?」
 接続詞を日本語にするな。語尾を上げて無理矢理疑問形にするな。大体が、発音が可笑しくて全然通じていない。
 獄寺はついに耐えきれなくなって山本の横から顔を出した。
「バーカ、駄目なら駄目ってすぐ言えよ、折角オレが居るのに」
「だって…オレだってちょっとは勉強してんだぜ」
 途端にしゅんとしてしまった山本の頭を軽くはたいて、獄寺は山本が欲しいらしいミルク味と、自分の好みでストロベリー味のジェラートをダブルで購入する。獄寺の流暢なイタリア語に、余計山本は凹んでしまったらしく、何も口にしないまま店を後にした。
「いつまで拗ねてんだよ」
 買ったジェラートを押しつけると、山本は唇を尖らせてそれを受け取り、直接高く漏られたアイスの天辺を舐め始めた。
「ちょっと、浮かれてた」
「はぁ?」
 あっという間に無くなっていくジェラートに眉を寄せながら(山本がユーロ紙幣を持っているはずはなく、獄寺が代金を支払ったのだ)怪訝な顔で山本を眺める。
「ツナに、獄寺に久しぶりに会えるって聞いて、スゲー浮かれてた。だからな、…何も考えてなかったんだ」
 冷たい、と舌を突き出しながら、山本が静かに告げる。
「…獄寺が居ればそれでいいって、思ったから」
 はあ、と獄寺は溜息をついた。言ってくれる。
 確かに、山本の顔を久しぶりに見て、先程は大分興奮してしまったことを覚えている。自分には山本が居れば良いのかもしれないと錯覚しそうになった。あくまで、錯覚だが。
「恥ずかしいヤツ」
 つくづく、山本が日本人で良かったと思う。これで、イタリア語で話された日には恥ずかしくて街中など歩けない。
「本当に、…オレは、獄寺がそこに居ればそれでいいって」
「黙れっての!」
 そうだ、山本の扱う言語が日本語で良かった。
「へへっ、愛してる、獄寺」
 にっと笑う山本を見つめて、獄寺は思った。
 そんな恥ずかしい言葉は、自分にだけ向いていればいい。誰にも聞こえなければいい。
 自分だけのものだ。
「……本当に恥ずかしいヤツだな、それ以上言うと果たす」
 彼の頭にこつんと一発拳を入れると、獄寺は手を突き出した。勿論、山本の手の中にあるジェラートを食べたいから寄越せと、そういう意味だったのだが。
「…食べたい?」
「え、あ…んぅ」
 その手を捕まれて、引き寄せられる。あっという間に、唇が奪われていた。驚き声を上げる口唇の間からジェラートで冷たくなってしまった舌が侵入してくる。ほんのり、濃厚なミルクと、甘酸っぱいストロベリーの味がして、獄寺は瞳を閉じてそれを味わった。


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