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R E B O R N !


「分かりました。それでは、本日のスケジュールは全てキャンセルということになりますが…」
 懐から黒革の手帳を取り出して今日の綱吉のスケジュールを確認する。大きな会議、会合無し、午後に同盟ファミリーとの会食があるが、どうせボンゴレの方が格が上なのだ、これはどうとでもなるだろう。
「ええ、問題ありませんね。それでは、今すぐ迎えを寄越しますので…」
「ちょ、ちょっと待った獄寺君。何か勘違いしてない?」
 踵を返しかけた獄寺は心臓も含めた全ての動きを完全停止した。
 カンチガイ…かんちがい…勘違い…!
「オレが言いたかったのはそうじゃなくて…」
 瞬間、獄寺が机に大きな音を立てて手を付くと、深々と頭を下げた。びっくりして綱吉が目を見開いて軽く反り返る。
「すみません、十代目…! 差し出がましい真似をしましたッ」
 絶望、という文字が頭を乱舞する。このまま、次の日からもう来なくて良いなどと言われてしまったらどうしよう、と獄寺はぷるぷると手を震わせた。
 綱吉は丁度獄寺のワックスで固まった後頭部を眺めながら、困ったように笑みを浮かべていた。
「あー、うん、…あのね、獄寺君、休暇ってのはオレのじゃなくて、君のなんだよ」
 再び、獄寺の心臓が止まった。
「い、ま…何と…」
 思わず顔を上げて見つめると、まるで聖母のような微笑みを湛えた綱吉の顔が目の前にあった。
「だから…今日、獄寺君を休暇にしてあげたくて。だからちょっと頑張ってみたんだ。あ、君個人の仕事は、さっき信頼できる部下と君直属の部下に説明して分担して貰うことになったから、安心して?」
 何故か涙が誘発されて、獄寺は慌てて首を振った。
 彼が、自分の為に…?
「も、勿体ないお言葉です、十代目…ですが、休暇などと…」
 休むべきは自分などより、彼の方である。疲れていないなどとは言わないが、それでも受け取るべきではないことは明らかだ。
「折角、十代目にご苦労頂いたのですが…」
「受け取らないなんて言わないでよ、獄寺君。スゲー大変だったんだからさ。…それに、サプライズはまだあるんだよ」
 諾否を迷って、う、と獄寺が言葉に詰まっているうちに、綱吉は机に備え付けられている電話を手に取ると、何処かへ短い連絡を取った。
「そろそろ、来るはずだよ」
「…あの、…十代目…?」
 自分の知らないところで着々と進んでいく事態に、獄寺は困惑して眉を寄せた。綱吉はというと、得意そうな顔をして最後のエスプレッソを飲み干すと、腕を組んでこちらを見つめたままだ。どうやら説明をするより、本人の言葉通りサプライズにしたいようだ。


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あきゅろす。
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