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DREAM
日だまりの学舎(年少組+アリーゼ)
 




「この計算ができる人はいる?」

「はーい、先生!おいら、おいら!」

「ずるいよスバル、ボクだってできるんだから…」

「先生さーん…ナウバの実が平等に分けられないのですよ…」






はい、ただいま授業中の学校からお送りいたします。
今はスバルたちは算数の時間。

黒板に書いた数式を、ちゃんと理解できているのかテスト中なのであります。




そして、俺はその横で、スバルたちも使ってる教科書を用いて書き取りの練習をしています!

これはどうした何たるミラクル!
この年にして、まさか小学校一年生の国語(俺にとっちゃ外国語)をやるはめになるとは。人生何があるか分からないです。









□□■■□

元を正せば数日前。
ひょんなことからスバルに出された宿題を見てやることになり、ノートを開けてみたは良いが。



(よ、読めない…)



のたくったミミズが止めを刺されたみたいな字が踊っていて、はて何語が書かれているのかすら判別できない。

だから、ゲンジじーさんに聞いてみることにした。



……今から思えば、それが全ての始まりで間違いだった。
あの時に何故、もっと当たり障りのない人物に訊きに行かなかったのか!
例えばヤードとかヤードとかヤードとか!


『これくらいの崩れ方なら大体前後から察することが出来るだろう』みたいな流れになって、何かにピンと来たらしいじーさんにアレもコレもと本を読んでみろと言われ、自分でも気付かなかったことをようやく気付かされたんだ。
















……………俺、言葉は話せても、字が読めてない。














何でも、この世界に召喚される時に言葉が通じないと召喚獣を行使することもできないから、言葉が通じるよう召喚術の中にあらかじめプログラムされてるとか何とか。
……じゃあ何故そんな便利な機能をつけることができたのに、文字を理解させる能力は付与しなかったのか召喚術の体系を作った人!



……そんな感じで、ゲンジじーさんの推薦(というより一喝)により、こうして年少組と机を並べてお勉強するハメになったのだ。


「………」

「なあナナシ兄ちゃん、この問題だけどさ…」

「んー、数式だけなら解けるけど、文章問題なら無理だぞ?」



数字はローマ数字だったから読めるけど、だからってその数字たちを足すのか引くのか掛けるのか割るのか分かんなかったら、式の組み立てようもないからなー。

ここの世界の文字って、酔っ払いが船を漕ぎながら書いたみたいな文字だから、形の特徴を掴むのに四苦八苦。



──ん?ここには点を付けるんだっけ?



「…それだと、違う字になっちゃいますよ?」



アリーゼだ。
ちょっと前までは少し距離を取られてて嫌われてるのかと思ったけど、今じゃすっかり打ち解けて話してくれてる。

でも何だか気後れしてるみたいにおずおずと字の間違いを指摘してくれた。



「……こう?」

「ううん、そうじゃなくて……こっちに点を打って、ここを伸ばすんです」


……おお、手本と似た感じになった。



「ありがとな、アリーゼ、助かった」

「いえ……でも、こんなに年が離れてる中で勉強するなんて、嫌じゃないんですか…?」

「……もしかして、俺が年下に教えられることに抵抗あるんじゃないかって心配してるのか?」



……そっか、だからさっきも変に消極的だったのか。



「知らないことを勉強しに来てるんだから、例え年下だろうと分かってる人に聞くのは恥ずかしいことじゃないんじゃないかな。
分からないのに自分だけで答えを出そうなんて、それこそ時間の無駄ってやつだよ」



な?と笑ってみせたら、少し安心してくれたみたいで、柔らかい笑顔を見せてくれた。
うん、やっぱりアリーゼは笑ってるのが一番かわいい。



「それにここの文字って、俺の世界と全然違うから判別しにくくて。だから教えてくれると、俺としては非常に助かる。
…また教えてもらっても良いかな、委員長?」

「はい、任せて下さいナナシさん!」

「おっと、俺の方が教えてもらう立場なんだから、さん付けなんてしなくて良いって。もっとフランクに、ナナシで良いって」


「じゃあ、おいらもナナシって呼ぶ!」

「ぼ、ボクも!」



おいおいお前ら、今はまだ授業中……。



「マルルゥも名前で呼びたいですけど、名前を覚えるのが苦手なのですよ…」



…マルルゥもか。
適当なところで切り上げないと、先生がなんだか寂しそうだ。



「うん、まあ好きに呼んでくれて構わないから」

「じゃあ“委員長さんの生徒さん”って呼ぶですよー♪」








……長いな。
それなら多分名前を覚えた方が早い気がする。



「みんな、おしゃべりしてないで、ちゃんと授業に集中してください…」



おっと、先生が我慢の限界に近付いたらしい。



「アリーゼ、ここは?どこまでが句切りなんだ?」

「あ、自分だけずりーぞナナシ!」

「へへーん、大体の年長者ってやつはずるいもんだと相場が決まってるもんだ!」

「ガキみてーだぞー!」


「みんな、いい加減真面目にやって下さいー!」












余談だが、この後じーさんに怒られた。
何で俺メインで怒られたのか。


……それはゲンジさんに怒られてる最中に、心ここに在らず、という顔をしていたからですよ、と先生に教えてもらったのはその後の事だった。


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