5 * 佐倉佑(さくらたすく)は焦っていた。 数分前に、突然耳に入ってきたのは間違いなく「悲鳴」だったからだ。 恐らく自分と同じ小学5年生くらいの男子の悲鳴。 まるで世界の終わりを見るかのような悍ましい悲鳴であった。 それはいつもの登下校道の坂の上から聞こえてきた。 全速力で坂を上がる。 佑が走りはじめると、そっちにいってはならないとでも言うように、向かい風が坂を吹きおろしてきた。 佑の額のゴーグルが光を反射してチカチカ光る。 (何があったんだ? こんな平凡な町で事件か!?) なんとか坂を上り終わると、向かい風がいっそう強くなった。 どんどん強くなっていくその風は、いつしか台風のそれと変わらないほどになる。 「…………くっ!!」 思わず目をつぶる。 と、風がぴたりと止んだ。 「…………え……?」 * 大輔は、さっき少年とあった坂まで戻ってきていた。 「……賢に……知らせないと……!!」 その目に映った三秒の出来事。 少年が大きな手に胴体を掴まれ、空間にできた裂け目へと引きずり込まれたのだ。 その手を形状は見たことがあった。 「……デジモン!!」 [*前へ] |