第54夜 千年伯爵の伝言
「以上が私の記録する「ノアの一族」の痕跡だ」
『俺も今言える事はこれ以上なにもねぇかな…』
ブックマンの語りに軽い補足をいれながら、ノアの一族に関する事を俺も聞いていた。
こんだけ長い間ドンパチやっといて教団側とブックマンが得られたノアの一族の情報はこれだけ。というか、ブックマンって人世代ぐらい前ノアの一族側だったような…。
「いやぁ、助かりましたブックマン。それに篠神君も。急ピッチで長い語りをさせてすみません」
「構うな、これが本業だ」
『俺は話せる事が少ないからなぁ…』
「…………」
ブックマンから聴いた事をメモした髪を見ながらコムイは複雑な表情を見せた。
ノアの一族を殺すにはイノセンスが必要で、心中複雑と言ったところか。
「心中をお察しする室長。アクマだけでも苦労する最中、このような存在の出現は胸が痛むな」
「私なんか。辛くなるのはエクソシスト達ですよ」
その顔を隠すように紙の束をコムイは頭の上に乗せた。
「私は伯爵の深い闇の中に貴方達を放り込むことしか、していない」
「みな辛い、戦争で平等なのは苦しみだけよ」
『敵も味方も苦しむだけなのに……人間ってのは馬鹿だよな。話せば分かるのにそれをしようとしないから』
次の瞬間俺とブックマンはドアの方を見た。俺とブックマンは立ち上がりドアの方へ足を向けた。
「どうしました?」
「身を潜めておれ室長。闇に主の顔まで晒すことはない」
『ブックマン、中の奴は頼む。俺は外の奴壊してくる。コムイはリナリー連れて大人しくしてろ』
「承知した」
ドアを蹴り上げるとアクマが佇んでいた。外の見張りをしていた探索部隊<ファインダー>は殺られていて既に砂になっている。
『たっく、病み上がりだっつうのに…あの糞デブ、いつか丸焼きにしてやるっ!!』
思いっきり蹴り飛ばしてから俺は窓を開け外に出た。案の定約20体のアクマがいた。レベル1と2のみか。
『さあて、真面目にやりますか。人形<ドール>発動っ!』
『これで全部だなっ!!』
「ぎゃああああああ!!!」
最後のアクマにとどめを刺して一息つく。人形<ドール>のVer.鳥<バード>の人を乗せる為ではなく、戦う為の姿なので見た目はかなりリアルな大鷲だ。俺の肩で得意げにシャーと鳴いている。探索の時とかは梟とかにしたりする時もある。
『で、なんのようだ。アクマ共。ただの襲撃ってわけじゃねぇよな?』
「クッ…ククククッ…千年伯爵サマからの伝言<メッセージ>だ…「時は満ちタv7000年の序章は終わり、ついに戯曲は流れ出スv開幕ベルを聞き逃すな。役者は貴様等だエクソシストv!!!」……タダで壊られねぇ!」
その瞬間アクマが捨て身で突撃してきたが、それより早く人形<ドール>が動いて完全にアクマを壊した。
『あの千年公が動き出す、か……今考えても仕方ねぇな。…そういえばアレン達大丈夫かね。まずはブックマン達から見てくるか』
屋上からリナリーの病室にまで来てから部屋を覗くと凄い有様になっていた。
『よお、終わったか?』
「篠神!」
『お、リナリー!目が覚めたのか!!』
リナリーの元気な声に少し和む。良かった、無事に起きれたか。だが、リナリーが起きたというのにブックマンとコムイは少し険しい顔をしていた。
「篠神、伝言は聴いたか?」
『ああ、小競り合いは終わりってことだな』
全員が複雑な気持ちで室内が静かになったと思ったがなにか聞こえてきた。ちょっと嫌な予感するんだけど逃げようかな。
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!」
逃げようとした時には遅く窓を突き破ってラビとアレンが突っ込んできた。俺とブックマンは見事に巻き込まれて壁に叩きつけられた。
「…………またアレで飛んできたなラビ」
最初に元気良く立ち上がったのはラビだったんで、余計に腹が立った。
「アハハハ、悪い!これ便利なんだけどブレーキの加減がちょい難しいんだなぁ。でも、気持ち良かっただろアレン」
状況を理解してなかったアレンは気絶している上にブックマンを下敷きにしてしまってる。
ドンマイ…アレン。
「?…アレン?」
次の瞬間、ブックマンがアレンをそのままに鬼の形相で立ち上がった。ちょっと今回は俺も堪忍袋の尾が切れた。
「小僧ども…っ!」
「アレ…!?」
『この糞兎…今回で何回目だ!!……今日はゆるさねぇ!!今すぐそこに正座しやがれっ!』
小一時間ラビ(とアレン)を説教した。
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