第48夜 決めた覚悟
ギリッ ドン!!
何かを破壊したような音。微かに目を開けるとどうやらアレンが無理矢理腕を壁から引き剥がしたらしい。ロードがアレンに近付き座り込んだ。
「何で怒ってんのぉ?僕が人間なのか信じられない?」
アレンを抱き締めたロード。
アレンには辛い現実。
「あったかいでしょぉ?人間と人間が触れ合う感触でしょぉ?」
「……っ」
アレンがロードに左腕を振りかざすがギリギリで止まる。下ろしたくても覚悟が決まらないアレンには後一歩が踏み出せない。
「同じ人間なのにどうして……くっ」
「「同じ」?それはちょっと違うなぁ」
ロードはアレンの腕の爪を自ら掴み、自分から思いっきり顔に爪を当てた。
バンッ
「な…っ!?自分から…」
倒れたロードの顔は筋肉や細胞が剥き出しになってしまっているが、彼女は平然と起き上がってアレンの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「僕らはさぁ人類最古の使徒ノアの遺伝子を受け継ぐ「超人」なんだよねェ。お前らヘボとは違うんだよぉ」
ロードの顔は既に元に戻りつつある。ノアの回復力の速さは異常だ。もっともロードは特別だが。
ロードが杭を掴んだ。
ドッ
「ぐああぁああぁ」
ロードがアレンの左目を杭で刺したらしい。
あのアホ、絶対に約束忘れてるな。
「プッ、アハハ!キャハハハハキャハハハハ」
「…っ!!!」
「ひいぃ…っ」
「僕はヘボい人間を殺すことなんて何とも思わない。ヘボヘボだらけのこの世界なんてだーーい嫌い♪お前らなんてみんな死んじまえばいいんだ。神だってこの世界の終焉<デス>を望んでる。だから、千年公と僕らに兵器<アクマ>を与えてくれたんだしぃ」
アレンのこと言えねぇか。俺だってロードと戦う覚悟が全く出来ていない。
「そんなの神じゃない…本当の悪魔だ!!」
俺にとっては初めての家族で、接した人で、優しさを教えてくれた人。この想いを切り捨てようとは思わない。
「どっちでもいいよぉ、んなモン」
だけど、俺はそれ以上に出逢ってしまった。
厳しかった、手加減してくれなかった、荒かった、凄く酷かった。だけど、それ以上に、楽しさや、嬉しさや、悲しさや、怒りをあの人は教えてくれた。
気力だけでロードの前に飛び出そうとしたアレン。だが、アクマ達が間に入る。
「!」
「僕は殺せないよぉ?」
ドン!
「アレンくん!」
あの人が全てで、あの人が大好きだった。初めて自分の意志であの人が居た教団を護りたいと想った。
今のアレンの身体では防げず身体を壁に叩き付けられた。
「その体でアクマ三体はキツイかぁ」
俺に意志をくれたのはあの人だった。今、ここに俺が居れるのはあの人のおかげだった。
ミランダを見たロードに、ミランダが怯える。
「…!い…いや、助けて」
・・
「お前もそろそろ解放してやるよ」
「いきな神月!!」
ああ、アンタの為に俺は「行って」「生きる」よ。俺自身の意志で。
周りに浮いていた蝋燭が鋭く尖った。俺は一気に意識を覚醒させ、椅子を蹴り上げ人形<ドール>の本体を握り締めた。
頼む、力を貸してくれ人形<ドール>!!!
俺が着地したと同時にアレンがミランダを庇った。迫り来る蝋燭を睨み付け、手を翳した。
「人形<ドール>第2開放!!」
その瞬間、俺達に蝋燭が降り注いだ。
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