第42夜 巻き戻りの原理
――その日の夜
「アクマが退いた?」
「ええ。ちょっと様子が変でした。僕達のこと殺す気満々だったのに。いちようこの辺り見回りましたけど」
(僕達…ね。今思えばあのアクマ共俺を殺す気無かったな)
リナリーがアレンの手当てをしているのを俺は黙って見つめている。ティムがアレンの傷を尻尾で楽しそうにつついており、アレンが「いてて」と言い、リナリーがティムキャンピーつつかないで!と注意するが、ティムは止める気配がない。
「でも、良かった。レベル2を篠神は病み上がりなのに、アレンくんとあんなに相手するのはまだ危険だもの」
『もう大丈夫だっつうの……』
「篠神の大丈夫は信用できないわ。それに、アレンくん。新しい銃刀器型の武器、体に負担がかかって、まだまんまり長い時間使えないんでしょ?」
ずっと傷口をつつくティムをアレンはコラっとつまみ上げた。そのまま俺がティムを回収する。ティムの頬っぺたを伸ばして遊ぶ。
足の手当てが終わり、アレンは立ち上がりこぶしをつくる。
「そうなんですよねー…結構体力つくってるんだけどなあ」
「でも、ちょっと身体大きくなったねェ」
「ホント!?」
「で、アレンくん。篠神の機嫌が悪い理由は?」
「さあ?僕にもよく解らないんです」
『……気にすんじゃねぇリナ。んで、何してんだよミランダは』
「私達とアクマのこと説明してから、ずっとあそこで動かなくなっちゃったの…」
古時計の前に座り込んで、ガタガタ震えながら古時計を綺麗にしている、ブツブツ呟きながらだが。
「私、ホントに何も知らないのよ…この街が勝手におかしくなったの。何で私が狙われなくちゃいけないの…?私が何をしたってのよぉぉ〜〜〜。もう嫌もう何もかもイヤぁぁ〜」
「『く、暗い…』」
「ずっとああなの」
『……お疲れ様リナリー』
リナリーに同情の眼差しを向ける。ちなみにティムは未だ俺が頬っぺたを摘まんで遊んでいる。恐る恐るアレンがミランダに話し掛けにいった。頑張れアレン!俺は行く気はない!
「ミ、ミランダさん」
「私…は何もできないの!あなた達すごい力を持った人達なんでしょ!?だったらあなた達が早くこの街を助けてよ」
叫ぶように言ったミランダ。何だかんだいってもやはり変わらぬ同じ日々は辛かったのだろう。
アレンは膝を曲げ、両手を合わせてお願いポーズを取って優しい声で返事をした。
「はい」
その声に振り向いたミランダは泣いていた。
「助けます。でも、そのためにはミランダさんの助けがいるんです。あなたは街の奇怪と何かで関係してる。僕達に手を貸してください」
強く優しい声でアレンは次の言葉を発した。
「明日に戻りましょう」
泣きながら頷こうとしたミランダに、突然強く時を刻む音が聞こえた。直感的に何かが起こると感じた。すると梃子でも動かなさそうだったミランダが突然立ち上がった。
「ミ、ミランダさん?」
『待てアレン、可笑しい』
ミランダはスタスタと迷わずベッドの方に歩いていき、バタリと倒れるように寝た。アレンがそれを見て見事にずっこけた。
「寝るんですか!?」
「何か様子が変ね…」
『何かが起こる…』
「えっ」
「アレンくん!!篠神!!」
ゴーーーーーン
古時計の鐘が鳴った瞬間、一面に色々な形をした時計が浮かび上がった。
「なんだコレ!?」
『まさか…』
「あの時計…?」
鳴り響く鐘の音。俺は咄嗟に窓を開け外を確認する。街中にも同じような時計が浮かび上がっていた。古時計を見ると突然針が逆に戻り始め、一面の突然を吸い始めた。
「きゃっ」
『アレン先に捕まれ!』
「リナリー手を!」
俺が窓枠を掴みアレンを支える。アレンはリナリーを支えた。ティムはリナリーの背中に引っ付いた。凄い勢いで吸っていく古時計。ふと時計を見るとそこには今日の俺達がいた。
『そうかっ』
「今日の時間を吸っているのか…」
数分間吸い続け、古時計が7時になった時に完璧に吸い終わった。瞬間だった、窓から割れんばかりの眩しい太陽が上った……………って、はあ!?
「「『朝あ〜〜!!?』」」
『ついさっきまで夜だったよな!?』
俺達が混乱して固まっていると後ろで起き上がった気配がした。
「あら…?私、いつの間にベッドに…」
全員でミランダを振り返った。また考え事が増えて、俺は思わず苦笑いと深い溜め息を漏らした。
「スゲー、いまのぉ」
「ロード様、エクソシストを放っておいてよいのですか…?」
「いいんじゃん?あいつらがイノセンスを手に入れるまではねぇ…それよりレベル2」
「はい?」
「篠神殺したら死刑ねぇ……解った?」
「はっはい」
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