第41夜 心の奥底で
外は現在、昨日のように雨。巻き戻しの街の前に一人のカボチャが先についた傘をさした少女が佇んでいた。
「ここが巻き戻しの街かぁ」
少女はスッと手を前に伸ばし歩き始めた。巻き戻しの街に入った瞬間バチッと少女を焼いて拒絶するが、少女は構わずそのまま歩いた。筋肉や骨が剥き出しになっても少女は倒れずに歩き続け、外部から侵入不可の巻き戻しの街にいとも容易く入り込んだ。少女の体や服は再構成され、何事もないように少女傘を閉じた。
「おっ邪魔ぁ〜〜〜〜。ロード・キャメロットちゃん参上ぉ〜〜」
少女は肩に傘を担ぎ陽気に笑いながら、街を歩き始めた。
『なっ!?』
バッとある方向をみた。バクバク高鳴る心臓が嘘でないことを主張する。この気配は間違える筈もないノアで一番親しく、自分を比較的まともに人間として見てくれた少女の記憶<メモリー>。
不味い、今のアレンとリナリーじゃアイツには敵わない。一番厄介なノアが来やがったな。
兎も角人形<ドール>を俺の二倍くらいまでデカクして、アクマを殴り飛ばす。アレンも刀モードでアクマを切り裂いた。
「パングヴォイス!」
「『!?」
カボチャみたいな形のレベル2がゲラゲラ笑い始めた。俺とアレンは耳を塞ぐがあまり効果はない。
「ぐあっ。頭が…割れるっ…!!」
『くそっ…面倒だなあぁぁあ!!』
「風切鎌!!」
咄嗟にカボチャを殴り飛ばして音を止める。風の刃を俺とアレンは逆方向に避けた。風の刃を出したレベル2に、骨組みでの攻撃「クラッシャー」を放つが間一髪で避けられた。風を扱うアクマなだけあって速い。アレンの方を見ると天井にレベル2が張り付いていた。
『アレン上だっ!』
「うわ!」
その瞬間、アクマが落下してくるが間一髪でアレンは避けた。俺は人形<ドール>に乗り、アレンの傍まで行く。
『大丈夫か!?』
「かすっただけです」
流石に教団が作った服やブーツなので破れては居ないが、確実に下は怪我しているだろう。炎だが凍っている。先程のアクマも含めて少し厄介な面子だな。
「炎より熱いアイスファイヤ…少しでも触れる。肉を焼き腐らせる。あっという間」
「斬り裂こう、斬り裂こう」
「ダメダメ、ボクのヴォイスで脳ミソを破壊<こわ>した方が面白いよ」
「『………』」
とりあえず、あのカボチャ先に壊すか。何か一番ウザそう。
「斬り裂くんだよ」
「イヤ、腐らせる」
「脳ミソだってば!!」
「「「………」」」
何か喧嘩し始めたし。アクマでも感情もつくと喧嘩するのか。しかも、敵に背を向けてジャンケンまでし始めた。コイツらアホだ。アレンも呆れた目で見ていたが、やがて刀モードを銃モードに変え狙いを定めて遠慮なく連射した。
「「「ギャーー」」」
「何すんだテメェっ!!いってええぇっ。ジャンケンのスキに攻撃するなんてヒキョーだぞ!!」
「『そんなもん待つワケ(ないでしょ/ねぇだろ)』」
「スキあらば撃つ!」
『敵に背を向けてジャンケンとかアホがすることだ』
「エクソシストブッ殺す!!」
勝手にキレたアクマ達が襲い掛かってきた。俺とアレンは構えた瞬間だった。
「待て」
その声が聴こえた瞬間アクマ達の動きがピタリと止まった。俺はドクリと心臓が高鳴った。
「!?」
『まさかっ!?』
「楽しそーだねェ。お前らぁイノセンス回収のこと忘れてねぇ〜?戻れ」
次の瞬間にはアクマ達は天井を突き破って何処かへ行ってしまった。今の声、アレンには聞こえていない、よな?
「…………何なんだ………?」
『……………さぁな』
知らない振りをするが、次の瞬間ガツンと頭を殴られたかと思うくらいの衝撃が走った。
「篠神だぁ〜〜!居たんだぁ!こんな偶然嬉しいなぁ〜♪」
『っ!!』
「今は接触しないよぉ、千年公は篠神の扱い酷いしぃ連れて帰らないからね。ボクは篠神が大好きなんだから。またあとでねぇ♪」
『っ…(ロードの馬鹿野郎っ!)』
「篠神?」
『………何でもねぇ。リナリーとミランダに合流するぞ』
嫌いにはなれない。千年公は大嫌いだが、俺にとってノアは別だ。アイツらはいつも何処かが人間臭すぎる。恨みきれないくらいに。
俺は無線ゴーレムを取り出して、リナリーに連絡を入れた。
「神月っ……キミは居なくならないでねぇ………」
『ロード?』
そう言ったロードはよく俺に抱き着いてきていた。
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