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第38夜 時計人との出逢い

 


周りの景色を見て一つ思うこと。



『ふむ……迷ったな』



昔から方向音痴だけは抜けないらしい。とりあえず、リナリーに向かえに来てもらおうかな。

路地で無線ゴーレムをオンにして呼び掛けようとしたときだった。



『!!』



バッと振り向いた。この音AKUMA……まさか、イノセンスに気付いたのか!?

音を頼りに俺は走り始めた。狭い路地で壁を蹴り、屋上に上がる。更に屋根や屋上を飛び移る。目的地の近くで屋根から飛び降りた時だった。目的地の所にアレンが居た。



「その女性<ひと>を放してください。こんばんはAKUMA」



アレンが戦い始めたのを見て足を緩める。AKUMAに襲われていた女性は逃げた。多分レベル2、1体ならば大丈夫だろう。いちよう人形<ドール>を発動させた。



『アレン!』

「篠神!!此方は良いですから、いまAKUMAに襲われていた女性を追ってください!このAKUMAがその女性にイノセンスと言ったんです!すぐに後を追います」

『!…りょーかい!任せた!』



すぐに人形<ドール>をVer.鳥<バード>に変化させ、空から追わせる。俺もすぐに走り出す。それにしてもあの女性、相当逃げ足速かったな。走り出したのは良いが、これは道に迷ったな。アレンと合流また出来るか?

無線ゴーレムをリナリーに繋げる。



『リナリー!イノセンスに関わってそうな奴をアレンが発見した。AKUMAに襲われて逃げたから追って欲しい!』

〔分かったわ!篠神今何処らへんか分かる?〕

『…ごめん、何処かわかんねぇ』

〔そう言えば篠神、方向音痴だったわね……ゴーレムで探知して向かうわ〕

『わりぃ!んで、ソイツは20代くらいの女性。栗色の髪をお団子にして黒い服を着てた。後は詳しくはわからねぇ』

〔えぇ、じゃあまた後で!〕



完璧に視界から消えた女性に足が止まる。一時すると人形<ドール>も見失ったのか戻ってきた。どんだけ逃げ足速いんだよ。人形<ドール>が一般人を追えないとか初めてなんだけど。



「篠神!」

『あ、アレン。よく迷わずに来れたな』

「ティムキャンピーが案内してくれました」



AKUMAを壊したらしいアレンが後ろからやって来た。ティムキャンピーが頬に摺りよってきた。ティムって可愛いよなぁ。



『あの女性だけど逃げ足速すぎて見失った』

「えぇ!?」

『後、途中で道に迷った』

「あ、篠神も方向音痴でしたね……」

『こうなるならリナリーと行動すれば良かったな』

「確かにそうですね」

「篠神!アレン君!」



屋根から飛び降りてきたリナリー。やっぱり駄目だったらしい。



「駄目、見付けられなかったわ」

『俺も人形<ドール>も、あの女性見失ったんだ』

「とりあえず、今日の調査は終わって夜飯食べに戻りましょう」

「賛成です!」



即答したアレンに苦笑する。朝から調査していたので、お腹が空いているらしい。つうか、調査中も絶対に何か食べてただろ……。



『……アレン、教団じゃないから食い過ぎるなよ』

「ちゃんと分かってますよ!」



そう言いながら、俺達は一旦宿に戻ることにした。





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