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第37夜 巻き戻しの街

 


『上空も駄目か』



人形<ドール>Ver.鳥<バード>を呼び戻す。発動を解いて、俺は再び街を歩き出す。



アレンが入団してから約三ヶ月が経った。今回俺とリナリーとアレンにあてられた任務はコムイをほとほと困らせたものだった。



「たぶんね、たぶんあると思うんだよねイノセンス」



資料が高く積み上げられている。傍にはジョニーが死にかけていた。もう少し科学班の数増やせよ、過労死する奴が出てくるぞ。
資料の山が崩れてジョニーが生き埋めにされた。まあ他の科学班の奴等が救出するだろう。



「といっても、たぶんだからね、たぶん。期待しないでね、たぶんだから。絶対じゃなくてたぶんだから。でもまあ、たぶんあるんじゃないかなーってね、たぶん」

「分かりましたよ、たぶんは」

『話し進めろ』

「なんてゆーかさ、巻き戻ってる街があるみたいなんだよね」

「『巻き戻る?』」

「そう、たぶん時間と空間がとある一日で止まって、その日を永遠に繰り返している」



永遠に、か。

リーバーがフラフラしながらこちらに来た。自分で説明しろやコムイ。



「調査の発端は、その街の酒屋と流通のある近隣の街の問屋の証言だ。先月の10月9日に「10日までにロゼワイン10樽」との注文の電話を受け、翌日10日に配達。ところが、何度街の城門をくぐっても中には入れず外に戻ってしまうので、気味が悪くなり問屋は帰宅。すぐに事情を話そうと酒屋に電話をしたが通じず。それから毎日同じ時間に酒屋から「10日までにロゼワイン10樽」との電話がかかってくるらしい。ちなみに問屋はノイローゼで入院した」

『なるほど。つまり、その街は10月9日を保持し続けているかもしれない、と』

「そう言うこと」



イノセンスを知らない奴が聞いたら、ただの奇怪談だな。隣のアレンはゾクッとしたらしい。



「だけど、街の中を調べたいんだけどさあ。この問屋同様探索部隊<ファインダー>も街に入れないんだよ」



だから、珍しくコムイの奴がこんなに困ってたのか。エクソシストだけで調べるのは時間がかかるしな。



「というワケでここからはボクの推測。
@もし、これがイノセンスの奇怪なら、同じイノセンスを持つエクソシストなら中には入れるかもしれない。
Aただし、街が本当に10月9日を保持し続けているとしたら、入れたとしても出てこられないかもしれない。空間が遮断されているだろうから。
そして調べて回収!エクソシスト単独の時間のかかる任務<ヤマ>だ…以上」



そう言ったコムイは深い溜め息をついた。




本当に面倒な任務だ。

コムイには余計な負担をかけちまったし、今回は体調は悪くないので頑張ろうと思う。神田だったらサボるけど、同行者はアレンとリナリーだ。少しは俺がやらないとな。



『(つうか……この寒気まさかとは思うが)』



嫌な予感を胸に秘めつつ俺はアレンと合流しようと探し始めた。





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あきゅろす。
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