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第35夜 本当の理由

 

「神田くぅん……」

「………(カチャ」

「神田、無言で六幻を抜くな!」



任務から帰ってきて、苛々している時に泣き付かれたら抜きたくもなる。だが、誰かが飛び込んできた。



「神田!!」

「……何かあったのか?」



息を切らせて飛び込んできたリナリーに流石に疑問を覚える。



「篠神の様子が可笑しいの!!」

「は?アイツの?………」

「流石に今回は僕じゃないからね!」



無言でコムイを睨み付ける。コイツが余計なことで一番篠神が無茶する原因を作るのは周知の事実だ。だが、今回はコムイが違うと言うならば心当たりがある。



「………篠神をヘブラスカに会わせたな?」

「え」

「答えろ」

「ヘブ君が呼んでって言ってたから…」

「ちっ……面倒なことしやがって。いいか、今後一切緊急時以外は篠神をヘブラスカに会わせるんじゃねぇ。今回みたいなことを繰り返したくなければな」



すぐに足を篠神の部屋に向ける。



「神田くん!?」

「篠神のとこ行ってくる」


振り返らずにそう答え、俺はその場から足早に去る。

アイツは周りが思うよりも感情的だ。嫌なことがあればあからさまに不機嫌になるし、嬉しいことには馬鹿みたいに笑うし、納得いかないことには怒る。きっと篠神とよく話す奴なら誰もが気が付いているだろうが、アイツは誰よりも人間らしい。唯一、哀しみだけはないが。

篠神の部屋をノックするが反応はない。だが、気配はある。居留守を決め込んでいるのか、あるいは本当に気が付いていないのか。



「篠神、俺だ」

『…………神田?』

「どうした?」

『ヘブラスカに呼び出された』

「今まで無視を決め込んでたじゃねぇのかよ」



ドアの傍の壁に寄りかかる。今このドアを俺から開けない方がいい。



『……気になることがあった』

「気になること?」

『アレンだよ。アイツから…………嫌な気配と懐かしい気配を感じた。だけど、ヘブラスカは気付いていない。だからイノセンス関連ではない』

「まさか……」

『確信はないけど、心当たりはあるんだ……あの気配。だから、ヘブラスカを見に行った』

「…………で、キレたな」

『流石神田ユウくん、正解。俺、緊急時以外今後一切ヘブラスカのとこには絶対に行かねぇ』

「そうしろアホ篠神。俺が迷惑だ」

『わりぃ……けど、何だかんだ言うわりには来るんだな。ありがとな』

「ちっ」



明らかに気配が落ち着いたのを感じ、俺は壁から離れる。



「俺はもう行くぞ」

『へーい……あー、待った。やっぱり俺も行く』

「行くなら早くしろ」



とりあえず、出てきたアイツを一発殴ろうと思いながら俺は待った。





(……篠神どうしたの?そのたんこぶ)
(バ神田に殴られましたー病人殴りましたー)
(組手出来る癖に病人ぶるんじゃねぇ)



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あきゅろす。
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