第32夜 傍観と想い
任務に行く神田と別れ、俺はアレンと組手中。リナリーとデイシャとマリは見学している。
『ひゅ〜♪アレンやるぅ』
「なんでっ!?そんなにっ余裕なんですかっ!?」
流石に普段接近戦をやっている分、動きはかなり良い。だが、まだまだ経験不足だ。隙が出来やすい。
「アレン、篠神は自分が戦わない装備型だが強いぞ」
「アレン君頑張って!」
「篠神をやるんだアレン!」
誰一人として俺を応援しないのは、組手で俺に負けたことがあるからである。特にデイシャ酷いな。
隙をついてアレンの背後に周り、押し倒して腕をとった。
『終わり♪』
「つ……強いですね、篠神」
『経験の差だっつうの。でも、良い動きしてるぜアレン』
アレンを離して、立ち上がらせる。思ったよりしっかりした体つきにだから、これから戦闘していけば伸びるだろう。
『あーーっ!!ようやく身体が軽くなった!』
「最近無理しすぎてたのよ篠神。はい、二人とも」
「ありがとうございますリナリー」
『サンキュー』
リナリーからタオルを受けとる。流石に神田と午前中からずっとガッツリやったので、疲れてきた。
「アレン、私とやってみないか?」
「是非!良いですよ」
マリが此方にやって来たので俺とリナリーは下がった。アレンとマリの組手を見ながら、水を飲む。
『そう言えば、ラビとブックマンを最近見てねぇな』
「ブックマンとしての仕事があるから遅くなるって連絡があったそうよ」
『へぇ……アイツも大変だな』
あのオレンジに近い赤毛と、パンダみたいなメイクをした二人を思い出す。アレンに興味持ちそうだな、あの二人。
正直あの二人は好きではない。と言うか、多分ブックマンに関しては同族嫌悪だ。他人と一定距離でしか話さない。そう言えば、ラビは何故か最近緩和されている。
「篠神さん!」
『ん?あ……ダグ』
話し掛けられて後ろを向いた。そこに居たのは、何度も一緒に任務に行った探索部隊の奴。
『もう怪我大丈夫か?』
「篠神さんのお陰で軽傷だったからもう大丈夫」
『そっか、良かったな。あんまり無茶するんじゃねぇぞ。あの時流石に肝が冷えた』
「ご、ごめん」
苦笑いをするダグにバシッと軽く頭を叩いた。
コイツ他人想いなのは良いけど、此方がビビるくらい無茶なことをする。
『ま、精々死なない程度にしとけよ』
「努力するよ。あ、そう言えば篠神さんに聞けば分かるかなって思ったんだけど……ラビって任務?」
『らしいぞ。用があって少し遅くなるってさ。ラビに用事か?』
「うん、本を借りてたから居るなら返そうかなって」
『コムイか科学班辺りに預けておけば?アイツらなら教団からあまり出ねぇし』
「そうだね。ありがとう篠神さん」
『つうか今から任務に行くのか?』
「うん、このあとすぐ」
『そっか………あれ?ダグ、お前確かラビと仲良かったか?』
そう言えば、コイツ会った当初ラビを嫌っていた筈だ。話すのすら嫌悪していたような気が。
「いや、ちょっと前の任務で一緒になった時にラビの本当に表しか見てなかったのに気が付いて………最近はよく話すよ」
『へぇ意外だな。まぁ仲良くしてやれよ。ああ見えて悪い奴じゃねぇからな。ブックマンよりは絶対にマシ』
「アハハ……あ、じゃあもう行くよ」
『おう、頑張れよ。またな』
「うん、またね篠神さん」
走っていったダグを見送る。ダグがラビと仲良くなれば、ラビに良い影響を与えてくれるだろう。良いことだ。
「篠神、知り合い?」
『あぁ、何回も任務で一緒になったんだよ。人を見る目が優れてる奴でね、話すの面白いんだ』
へぇと良いながらダグの消えた方向を見たデイシャ。そう言えば、アレンと雰囲気にてる気がする。
そう思いながら俺はまたアレンとマリの試合に目を向けた。この時やけにダグの後ろ姿が目に焼き付いて離れなかった。
(あの小さな再会の約束が果たされることは無かった)
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