第29夜 話しやすい人
「神月!!大丈夫か!?」
『よっ』
勢いよく入ってきた神田に笑いを漏らす。しかめっ面のまま此方にやって来て椅子に座った。
「マリに高熱があると聞いたんだが」
『まだ下がってねぇけど……前よりは上がらなかったしな』
「起きてる分大丈夫そうだな」
汗を拭った神田に苦笑いしながら、タオルを渡す。それはまぁ見事なくらい団服や髪が乱れていて、帰ってきたばかりなのだろう。
『とりあえず、部屋に戻って綺麗にしてこい。物凄いぞ』
「うるせぇ」
『ほらよ、髪紐。結んでねぇとお前の髪邪魔くさい』
素直に髪紐を受け取った神田は、どうやら本当に邪魔だったらしくすぐに低い位置で結んだ。
『コムイにも報告しろよ。どうせ俺はまともに動けねぇから、また後で来い』
「あぁ……流石にその身体じゃ無茶は出来ねぇな」
『そういうこと♪』
神田は立ち上がった瞬間、また誰かが入ってきた。
「篠神大丈夫か?……っと神田も居たのか」
『スーマン!どうしたんだ?』
スーマンを無視して神田はさっさと出ていった。相変わらず人見知りが激しいもので。
「相変わらずだな神田は」
『逆に神田が優しかったら怖いぞ』
「そうだね」
『んで、なにか用事?』
「暇だったからチェスしないかと思ってね。ここでやるなら問題はないよな」
『それ乗った』
ジョニーに借りてきたらしいチェスセットを机の上に置いた。
エクソシストの中でも穏やかな性格のスーマン。妻と子供が居るとか。
「熱はどうだ?」
『まだあるけど最初よりはだいぶ下がった。スーマンは任務だったのか?』
「あぁ、まぁ見事にハズレだったけどな」
『あら〜アクマは?』
「数匹程度で隠れて住んでただけだったよ。先行どうぞ篠神」
『あぁ』
スーマンに言われて駒を動かした。そう言えば、ジョニーはよくスーマンとチェスをしていた。スーマンは負け続けているそうで最近ムキになっている。
「そう言えば、エクソシストに新人が入ったのか?」
『あぁ、一緒に任務に行ってきたぜ』
「どんな奴なんだ?」
『そうだな……約15歳の年齢に似合わない性格の少年。寄生型のイノセンスの持ち主だ』
「へぇ俺と同じ寄生型か!」
『しかも、クロスの弟子』
「クロス元帥の!?ってちょっと待った!!」
『待ったなし』
容赦なくクイーンを取る。
「あっちゃ……」
『ジョニーに負けてるくせに俺か勝とうなんざ、百万年早い』
「篠神は強いな」
『俺に教えた奴が強かったんだよ。そう言えば、アレンとスーマンって雰囲気が少し似てるな』
「そうなのか?」
『神田曰く、アレンは似非英国紳士』
「なんだそれ!?」
スーマンが大爆笑し始めた。
(会うのが楽しみだ)
(アレンも同じ寄生型なら会いたいと思うよ)
――アレンとスーマンが会うのがあんな時だなんてこの時思いもしなかった。
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