第25夜 黒い胡蝶の姫
『ガハッ!!』
「篠神!!もうよせ!」
発動したのは良かったのだが、1分と持たなかった。酷い吐血で、自分で気持ち悪いと思った。
とりあえず、リナリーを抱えて後ろに飛び下がるがフラつく。集中力は散漫して人形<ドール>の発動が勝手に解けた。
リナリーを抱えるのすら危うい状態で。
マジで神田カムバック。
視界がぶれてコムリンの攻撃に反応が遅れて吹っ飛ばされた。
『っ!?……あ、ヤベッ!!リナリー!!』
抱えきれなくなっていた俺はリナリーを手離していた。立ち上がろうとするが、既に身体が言うことを聞かず立つことすら出来なかった。
『起きろリナリー!!』
俺の声が響いたと同時にコムリンがリナリーに突っ込んだ。
「キャアアアアー!リナリーー!!リナリーー!!ボクのリナリーー!!コムリンのバカーー!」
「室長落ちる!!」
必死にコムイを押さえる科学班一味。
俺はある一点に目がいっていた。少ししてからジョニーがある場所をビシッと指差した。
「!…し、室長あれ!」
「!」
「大砲の先(あそこ)…」
「!!」
ジョニーが指を指した先、俺が見ていた場所には危なっかし立ち方で、先ほどまで眠さられていた彼女が立っていた。
「「リナリー!!」」
『リ…ナリ…』
目覚めたばかりでボーッとしているのか、フラフラしている。
「アレンくんと篠神の声が聞こえた…帰ってきてるの…?」
リナリーの意識がコムリンに向いた。そして、彼女の綺麗な声が響いた。
「イノセンス発動!!!」
リナリーの足元が淡く光った。
こりゃもう大丈夫だな……所詮機械のコムリンにリナリーのイノセンスに追い付ける筈がない。
「エクソシストは手術ーーーー!!」
コムリンがエレベーターの大砲の先に飛び移ったが、リナリーは簡単に避けた。
俺は壁に背中を預け見守ることにする。
「どえーっっ」
「リナリー!!この中にアレンがいるんだ」
華麗に着地したリナリーにずっとコムリンにぶら下がっているリーバーが声をかけた。
グラッとエレベーターがコムリンの重さで傾いた。
「お、落ちるーっ!!」
「出力を上げろ出力!!」
「ギャアアアア」
「もう出てらぁ!!」
「ギャアアアア」
エレベーターが傾いたせいで数名科学班が落ちた。
『アホか……人形<ドール>Ver.鳥<バード>サイズBIG発動!!』
骨組みをもう一度拾ってエレベーターの方に向かって投げた。ブワッと形を変えて巨大な鳥の人形が形成され、落ちた科学班を拾い上げて此方に戻ってきた。
「サンキュー篠神!!」
「助かったぜ!」
「おいっ大丈夫か!?」
全員が降りたのを確認した瞬間発動が解けカシャンと骨組みに戻った。
『わ、わりぃ…も……もう無理…身体が……限界…過ぎた』
身体を動かすことがほぼ出来なくなった俺はリナリーに目を向けた。コムリンの目がリナリーをしっかり捕獲していた。
「リナリー捕獲」
ダンッ!とリナリーはコムリンに向かって飛び出した。
「リナリー!」
リナリーの狙いは的確で、その足でコムリンの目の部分を破壊した。
「!!」
この際いちいち反応している馬鹿は見ないことにする。……視界に入るから仕方無い。
コムリンはリナリーをビームで狙い撃ちにしようとするが、リナリーは余裕でそれをかわしていた。
「へっへ、ばぁか。イノセンスを発動したリナリーを捕えられるもんかよ…胡蝶のように天空を舞い、鋼鉄の破壊力で地に墜ちる」
蝶のように綺麗なリナリーの黒髪がフワリと動いた。コムリン攻撃をかわして、リナリーは飛び上がった。
「それがリナリーの対アクマ武器『黒い靴<ダークブーツ>』だ」
そのまま降下したリナリーはコムリンを真っ二つに切り裂いた。
NEXT
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!