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第20夜 怒る理由と危険な切札

 


アレンの手先は大砲みたいになっていた。そこから、細い棒をアクマに向かって撃ち出しだ。



「!!」

「(撃った…!!)」

「ギャア」



アレンはそのまま容赦無しに撃ち続け、積み上がった棒の上に立った。

アレンは後ろを睨み付けた。どうやらアクマは砂の中に潜ったらしい。



「そんなんで砂になっている私は壊せないよ〜」



アレンはアクマを撃とうと左腕を向ける。が、先にアクマがアレンのコピー腕で攻撃してきた。アレンのは易々と避けるが。



『アレンっ!!』

「!!」



手はフェイントだったらしく、アクマ本体が突っ込んできた。アレンはアクマの砂の皮膚に取り込まれた。



『チッ……神田、後始末頼んだ』

「……あぁ、無茶し過ぎるな」

『わーかってる。トマ!今からやること絶対に他言無用だからな』

「?……はい」



俺はケースからヴァイオリンを取り出した。その瞬間、殺伐とした空気が一気に変わった。俺はヴァイオリンを弾くために、顎に固定する。



「ケケケ捕まえた!もうダメだ、もうダメだお前!!」

『聖音波<ホーリーソングウェイブ>発動』



一瞬だけヴァイオリンが光り、俺の手に弓が収まる。俺は躊躇なく弾き始めた。



『聖音波<ホーリーソングウェイブ>第1楽章 聖ナル光<ホーリーライト>』



俺を中心に光の音波が走り出す。アクマは自分に害がないと思ったのか無視。



「何回刺したら死ぬかな〜?」



腕を槍状にし、アレンのいる腹を刺しまくる。



「ギャヒャヒャヒャ!!」

「ウォーカー殿ーーー!!」



トマが叫ぶが、神田は冷静に見ている。



「篠神ど「今奴に話しかけるな」

「これはイノセンス…ですか?イノセンスを2つ所持など……」

「威力がある代わりにかなりの気力と体力を削るうえに、かなりの集中力が必要だ。一回の発動で篠神の身体に負担がかかりすぎる。あのヘブラスカが適合していることは他言無用と言ったぐらいの危険な切り札だ」

「それを何故!?」

「今奴が弾いているのは、味方の傷を癒し、敵の能力低下及び攻撃の曲の筈だ。グゾル<コイツ>の傷、俺達全員の傷を癒す。更に今アクマの攻撃を鈍らせれば、モヤシのサポートになる。一番最善の策だ。それに……(モヤシは大丈夫だ。あいつの殺気が消えていない)」



ガキィイン!と強い音がなった。



「ガキ…?」



それと同時にアクマの背中からアレンが飛び出す。アクマの槍はアレンの左腕に防がれ折れた。



「槍が…?」



アレンは微かに笑う。同時に左腕が変形した。先が収束し、撃ち出していた光の棒が太いものとなった。そのままアレンは、左腕でアクマの皮膚を切り裂いた。



「あ!砂の皮膚が!!」

「これで生身だな」



アレンは着地し、アクマは落ちた。膝をつき左腕を先ほどの形に戻し、構えた。



「写し取る時間はやらない。ブチ抜いてやる」

「まだお前の腕が残ってるもんね!」



キレたアレンは敬語が抜けるらしい。アクマは腕でガードし、アレンは撃ち続けた。そのアレンの顔は怒りで満ちていた。

俺は弾き続ける。アクマは気付いていないが微かに壊れ始めている、内部から。アクマが動きが鈍り始めているのに対し、アレンは傷が癒え始め、動きが良くなる。



「グゾルは…ララを愛していたんだ」



そのアレンの言葉に俺の頭にグゾルが言っていた言葉が蘇る。


「私は…醜い人間だよ。ララを他人に壊されたくなかった。ララ…私が死ぬ時、私の手でお前を壊させてくれ」


ララが人形だからとかは関係ない。間違いなくグゾルはララを心から愛していたんだ。アレンには分かっていた、だからこそアレンは許せないんだ。



「許さない!!」



アクマの腕が崩れ始める。



「く、くそっ。何でだ!同じ奴の手なのに…なに負けそうなんだよぉ…!!」



当たり前だ。対アクマ武器はシンクロすればする程強くなる。真に使えるのは適合者だけ。所詮コピーにすぎない。



「!?」



急に血を吐きアレンの発動が解ける。

やりすぎだ。成長した武器は身体に負荷をかける。体がまだついていけていないんだ。



「もらった!!」



アクマの腕がアレンに襲い掛かった。





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