[携帯モード] [URL送信]
第17夜 造花の子守唄

 


流石に怪我しているうえに、発作まで起こっているから走り続けられなかった。



「ハッ…ハッ…ハッ」

『……っ!!』

「篠神、無理しないで下さい……痛っ」

『……アレンもな』

「篠神殿、ウォーカー殿…私は置いていってください。貴方達もケガを負っているのでしょう…」

『誰が……置いて…行くか……馬鹿』

「なんてこと無いですよ!」



重傷3人、軽傷1人。最悪すぎる。しかも、流石に足に力が入らなくなってきた。

全然何処に居るか分からない。手当て出来そうな場所もみたあらない。

トマが小声で話し掛けてきた。



「篠神殿……発作起こっているでしょう?」

『…………アレンには言うなよ』

「ですが……」

『帰ったら…いっとき任務には…出ないから……今は許してくれ』

「分かりました…無理はし過ぎないで下さい」

『サンキュ…』

「篠神、今聴こえるの…歌ですよね?」



アレンに話し掛けられ、耳をすますと微かに綺麗な歌が聴こえた。



『そう言えば今回の奴って…………』










 マテールは
「神に見離された土地」と呼ばれていた
 絶望に生きる民達はそれを忘れる為
 人形を造ったのである
 躍りを舞い歌を奏でる快楽人形を…










「歌が聴こえる…」



進めば進むほど聴こえてくるひどく美しい旋律の造花の子守唄。



『歌の…方向に…行こう……アレン』

「はい!」




























「泣いているのか?ララ」

「変なこと聞くんだねグゾル」



不思議な頭をした少女――ララはグゾルと呼んだ老人を見た。



「何か…悲しんでいるように聴こえた…」

「私は人形だよ…?グゾルどうして自分が人形だなんてウソをついたの?」



グゾルはララを真っ直ぐ見つめていた。



「私はとても…醜い人間だよ。ララを他人<ひと>に壊されたくなかった。ララ…ずっと側にいてくれ。そして、私が死ぬ時私の手でお前を壊させてくれ…」



ララは一瞬キョトンとしたが、すぐにグゾルに優しく抱き着いた。



「はい、グゾル。私<ララ>はグゾルのお人形だもの。次は何の歌がいい?」



グゾルは静かに涙を流した。



「私は醜い…醜い…人間…だ」



違う…違うよ、グゾル、ララ。お前らは俺が見た人間の中で一番人間らしい人だよ。
ララ、お前は人形なんかじゃない。ちゃんとグゾルを愛している人じゃないか。俺よりよっぽど人間らしいよ。

二人がようやく俺らに気が付いた。



「!!」

「あ、ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなかったんですけど……キミが人形だったんですね」



ララと呼ばれた少女から殺気が出た。その次の瞬間だった。ララは片手で傍にあった石柱を掴んだと思ったら、両手で軽々持ち上げた。



「(汗)」

『ごめ……アレ…ン』

「えっ!?篠神!?ってどわたっ!!?」



俺はその場に倒れた。もう動ける力が無い。ララはアレンに向かって石柱を投げてきた。



「ままま待って待って!!落ちついて話しま…わっ!!!」



ララはまたアレンに石柱を投げてきた。

アレンは大丈夫だろうが、トマに当たらなきゃいいけど。俺動けねェし……。

また、ララは石柱を持ち上げた。その間にアレンは、神田を下ろし俺とトマも同じところに下ろした。



「聞いてくれそうにないな」



意識はあるのに身体が全く言うことを聞かない。

悪ぃアレン。手伝えねェや。

アレンは走りながら口で左手の手袋を取った。その瞬間、ララは石柱をぶん投げてきた。アレンは発動した左腕の爪に石柱を引っ掛け、見事に掴んだ。



「!」

「(にっ)」



アレンは嬉しそうにララは驚愕の表情を浮かべた。次の瞬間、アレンは回転をかけて石柱を投げた。ララは自分に当たると思い、手で頭を抱えて座り込み目を瞑った。
次の瞬間、石柱が当たったのはララの近くの石柱。



「え!?石柱を……っ」



アレンは見事に綺麗に戻ってきた石柱を掴んだ。そして、ララの前に立つ。ララが少し怯えたのが分かった。



「お願いです。何か事情があるなら教えてください。可愛いコ相手に戦えませんよ」

「…………」



アレンは疲れた表情を見せながらも、ララに優しく笑った。ララは唖然としてアレンを見ていたが、間を空けて彼女は願いを口にした。



「グゾルはもうじき死んでしまうの。それまで私を彼から離さないで。この心臓はあなた達にあげていいから…!」



彼女は決意に満ちた綺麗な瞳をアレンに向けた。



(アレー……ン)
(あ!!篠神大丈夫ですか!?)
(いいから……早く皆の…手当てしろ)
(あ、はいっ!!)



NEXT

[*前へ][次へ#]

12/17ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!