第16夜 最悪の状況
『この声神田か?』
「あ!?あの人アクマじゃないっ!!!」
アレンは神田の「無に還れ!」の掛け声と同時に左腕を前に出し、発動させた。
「!!」
「ウォ…ウォーカー殿…」
「キミは…?」
アレンは通路に降りたので俺も続いて降りる。
「モヤシ!!」
「神田…」
「どういうつもりだテメェ…!!なんでアクマを庇いやがった!!!」
アレンが左右逆になった奴が倒れていた。コイツからは機械音はしない。アレンは逆アレンを左腕に寝かせた。
そう、逆アレンからはしない。微かにアクマの機械音はする。
……何処だ?何処に居る。体調不良で居場所特定が全く出来ない。
「神田、僕にはアクマを見分けられる「目」があるんです。この人はアクマじゃない!」
『あぁ……間違いねェ。この偽アレンはアクマじゃない』
俺は立ち上がって神田の前に立つ。
『テメェ…忠告忘れてねェよな?』
「…………」
神田に目をそらされた。
『ざけんなっ!!バか「トマ!!?」
アレンの叫び声に俺と神田はアレンの方を見た。逆アレンの顔の部分が破け、その下に見えたのはボロボロのトマだった。
「何…っ」
「そっちのトマがアクマだ神田!!!篠神!!!」
『神田っ!!!!!』
トマ…にふんしたアクマが殴りかかってくる前に俺は、咄嗟にアレンの方に神田を蹴り飛ばした。その次の瞬間アクマに腹をおもいっきり殴られた。
『ぐっ』
「ヒャヒャヒャヒャ」
勢いは止まらず壁をぶっ壊して、俺はアクマに強く掴まれた。微かに神田とアレンが俺を呼ぶ声が聞こえた。
ようやく止まったが、アクマに首を掴まれ壁に押し付けられた。
「あの長髪を攻撃したかったんだけどな」
『やって……くれたな…………いつ入れ替わりやがった』
「へへへっ。長髪と合流した時からだよ。黄色ゴーレムを潰した時、一緒にあのトマって奴も見付けたんだ」
あのバ神田っ!!
「こいつの「姿」なら写してもバレないと思ってさぁ。ほら、あの長髪も左右逆なの気にしてただろ?白髪の奴の「姿」をあいつに被した…へへへ、私は賢いんだ」
アクマは額から自分の爪で、皮を下に引き裂いた。
そうか……コイツ皮膚で写してたのか。
「私の皮膚は写し紙。まんまと殺られたな。まぁお前じゃなくて長髪か。明らかにお前私の事気が付いてたし」
『…………はっ!』
槍の手で思いっきり肩を貫かれたが、アクマは片手を外した。
切り裂かれるっ!!!
咄嗟に目を瞑ったが衝撃はいっこうに来ない。目を開けて飛び込んできたのは、綺麗な長い黒髪だった。
『か……んだ』
「テメェ……俺を…庇うなんて……馬鹿だろ」
俺を庇って前に飛び出してきたのは、紛れもなく神田だった。床にかなりの血液が落ちている。
「アレ?長髪?」
がらにもなくかなり焦った。神田はこれくらいの傷じゃ、まだ死なない事は分かってるのに。
「死ねよ!」
『っ……』
アクマが神田を殴った。俺は傷のせいで、悪化した発作に身体が上手く動かない。
「死ぬかよ…俺は…あの人を見付けるまで死ぬわけにはいかねェんだよ…俺は…」
『お…い……ユウっ!!!…………っ!!ガハッ!?!!』
完璧に神田が気絶した。支えようとしたが、俺は酷い血の量を吐き出し壁に寄り掛かった。本格的に不味い。足元がふらつく。
「ギャヒャヒャヒャヒャ。すげーーー立ちながら死んだぞ!」
俺はイラッとしてイノセンスを発動しようとしたが、アクマの真後ろから来たアレンに先を越された。
アレンは左腕でアクマの上半身を掴み、そのまま下半身を引きちぎった。
「お前ぇえぇえ!!!」
アレンはアクマの上半身をそのまま壁に投げ付けた。すぐに発動を解いて、こちらに近寄ってきた。
「神田!!篠神!!」
『ア…レン……神田を……抱えて……いっとき…走れるな?』
「…ハ…ハ…」
「!……はい」
『逃げて…イノセンス……探すぞ…今の…状況じゃ……此方が…不利だ……トマ貸せ』
気合いでふらつく足元に力を入れ、アレンからトマを取った。
「篠神は大丈夫なんですか!?」
『アクマが……復活する…前に…………離れるぞ』
あえてアレンの質問に答えなかった。俺はトマを抱えて先を走り出した。すぐにアレンの足音も微かに聞こえてきた。
まだ嫌な予感がする。
((絶対に篠神無理してる…))
((…これ以上の発動は危険かもしれねェ))
((アイツが死ぬと思ったら身体が勝手に動いていた))
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