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第14夜 AKUMAの能力

 



「地下通路?」



俺は二人を抱え、屋根をそのまま走り続けている。道を聞いたら女の方が話始めた。男らしき奴は一回も喋っていない。こっちが人形かもしれない。



「この町には強い日差しから逃れるための地下住居があるの。迷路みたいに入り組んでて知らずに入ると迷うけど、出口のひとつに谷を抜けて海岸線に出れるのがある。あのアクマという化物は空を飛ぶ…地下に隠れた方が良いよ」



俺はいったん屋根から降り、二人を下ろした。



〔ジリリリリン!〕



首もとからなった音。首元から無線ゴーレムが出てきた。



「トマか、そっちはどうなった?」

〔別の廃屋から伺っておりましたが、先ほど激しい衝撃があってウォーカー殿の安否は不明ですが、篠神殿が行ったので無事かと思われます。あ、今アクマだけ屋内から出てきました。ゴーレムを襲っています〕

「わかった。今、俺のゴーレムを案内役に向かわせるからティムだけ連れてこっちへ来い。長居は危険だ。今はティムキャンピーの特殊機能が必要だ」

〔はい〕


〔ジリリリリン!〕


「篠神か?」

〔おぅ!神田もトマも無事だな。アレンも俺と一緒だ〕

「なら、良い。早くこっちへ来い」

〔…すまん。地下に落ちて道に迷った〕

「……いい加減方向音痴なおせ。モヤシはどうなんだ?」

〔アレン俺以上の方向音痴だから無理。とりあえず地上に出て今度は俺がアクマ潰す〕

「頼んだ」

〔神田、トマ、後あの助けた二人も、アレンもよく聞いとけ〕

「何だ?」〔はい〕



急に声が真剣みを帯びた。あいつが警戒している。それは滅多に無いことだ。



〔一度離れたらアクマに入れ替わってるかもしれない。アレンやあの二人はまだしも、俺や神田、トマに化けられたら見分けがつかないかもしれない。絶対に気を付けろ〕

「…………分かった」
〔気を付けます〕

〔じゃあ、また後でな〕

〔近くにアクマが居るので失礼します〕



そう言って無線が切れた。俺の無線ゴーレムはトマを探しに向かわせ、俺は二人を見た。



「さて、それじゃ地下に入るが道は知ってるんだろうな?」

「知って…いる」



男の方がようやく口を開いた。だいぶしゃがれた声だ、老人なのか?



「グゾル…」

「私は…ここに五百年いる。知らぬ道は無い」
そう言って奴は帽子を取った。一言で言えば醜いと言っても過言ではないだろう。コイツが人形なのか。
奴はすぐに帽子を被り直した。



「くく…醜いだろう…」

「お前が人形か?話せるとは驚きだな」

「そうだ…お前達は私の心臓を奪いに来たのだろう」

「できれば今すぐ頂きたい」

「!!」

「デカイ人形のまま運ぶのは手間がかかる」

「!」



そう言った瞬間女の方が人形の前に飛び出してきた。



「ち、地下の道はグゾルしか知らない!グゾルがいないと迷うだけだよ!!」

「お前は何なんだ?」

「私は…グゾルの…」

「人間に捨てられていた子供…だ!!ゲホ…私が…拾ったから側に…置いでいだ…!!!」

「グ、グゾル…っ」

「ゲホッ、ゲホッ」

「…………」



人形はイノセンスで作られている。歌を奏でる人形が、こんな声をしているのか?女の方は綺麗な声をしている。コイツら嘘をついているのか?



「神田殿」

「!」



階段の下にトマが居るのが見え、俺は腰をあげた。

この時俺は完全に人形に気を取られ、篠神の注意を忘れていたのに後で後悔することになる。



「悪いがこちらも引き下がれん。あのアクマにお前の心臓を奪われるワケにはいかないんだ。今はいいが最後には必ず心臓をもらう」



俺と同じイノセンスに振り回された二人。ひと置き開けて俺は続きを口にした。



「巻き込んですまない」

「…………」



俺達はそのまま地下に入った。二人の後を歩きながら、俺はトマを見た。



「ティムキャンピーです」



トマの手にあるのは、砂ではなく、ティムキャンピーの残骸。ティムキャンピーはそのまま砂から元の形を構成し始めた。



「お前が見たアクマの情報を見せてくれ、ティム」




元の形に戻るとティムキャンピー映像をだした。一時見ていたが俺はあることに気がついた。



「鏡のようだ…」

「はい?」

「逆さまなんだよ、このアクマ…。見てみろ、奴がモヤシに化けた時の姿…服とか武器とか…左右逆になっている」

「モヤシ?」

「あいつのことだ。ほら切れた偽物もよく見ると逆…しかも偽物<コレ>は中身はからで360度外見だけのもの。ただ単に「化ける」能力じゃない…こいつは何かで対象物を写し取っている…というべきか」



隣に左右が逆になっても分からない奴が居る事に俺は気が付いていない。



「しかも写し取ったそれを装備するとその能力を自分のものにできるようだ。モヤシの左腕を変形させて攻撃しているところを見るとな…」



しかし、この腕…



「ちっ(やっかいなモン取られやがってあいつ…)」

「ウォーカー殿を探すべきでございました。もしウォーカー殿が生きてても現れた時、本物かどうか分からないです」

「それは大丈夫だろ。左右逆になってるんだからすぐわかる。あの顔の傷とか。もし、そんな姿でノコノコ現れたならよほどの馬鹿だな。第一篠神がモヤシの側に居るのは間違いない。一人で行動していたらさらに馬鹿だな」



篠神なら、分かっただろう。普段のトマがこんなことは言わない、と。

俺達は二人を追って曲がり角を曲がった。が……



「ふたりがいない!!に゛っ逃げやがった!!!」



曲がった先に二人は居なかった。



「くそ、あいつらどこに…っ」

「!!神田殿後ろ…」


振り返った後ろに居たのは……左右が逆のモヤシだった。





((ゾクッ))
(篠神?どうかしましたか?)
(……物凄く嫌な感じ)
(篠神?)
(急ごう、神田が心配になってきた)



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