第9夜 「行ってきます」
『……なーんか、嫌な予感すんだよな』
その予感は後々当たる事になる。
軽めの服装から団服に着替え、人形<ドール>を入れたポーチを付けヴァイオリンケースを手に取った。すぐに戻れる短期の任務なので、人形<ドール>を入れるポーチとは違うポーチに必要最低限の荷物だけを詰めた。部屋を出て、隣をノックした。すぐに部屋が開き、アレンが出てきた。
俺とアレンの部屋が隣だったのは本人達が一番驚いている。
『ほら、もう行くぞ。のんびりしてられねぇんだ』
「あ、はい!分かりました」
『すぐ近くだしあんま荷物は持たないで構わないからな。資料ぐらいで良い』
「そうなんですか?」
『走るのに邪魔になるぜ』
ニヤッと笑った俺に「?」と言った感じでアレンは首をかしげた。
『行けば分かる』
「は、はぁ」
『地下水路はこっちだ』
俺とアレンは地下水路に向かって歩き始めた。
「おせェ」
『お前が早すぎんだよ、バ神田』
「テメェ…」
来たとたん文句を言った神田は睨み付けてきた。
つうか、食堂に居た時点で既に六幻持ってたし、団服着てたから準備しないで直行の奴に遅いとか言われたくはない。
「アレン君、これ着てね」
「はい」
アレンの団服は昨日中に仕上げていたらしい。多少神田の団服と似ている気がするが細部が違う。アレンに似合う形状に作られている、流石科学班。
「ちょっと大きいね」
「これ着なきゃいけないんですか?」
「エクソシストの証みたいなものでね」
『似合ってるじゃん、アレン』
「ありがとうございます、篠神」
「君達は仲良いね。アレン君と神田くんは仲悪いのに不思議だよ」
コムイは笑いながら俺を見た。リーバー班長まで「確かに」とか言いながら笑っている。いっときするとコムイはアレンの方に向き直った。
「戦闘用に造ってあるからかなり丈夫だよ。あと、左腕の防具はボク的に改良してみました。使いやすいよ」
「!?」
アレンの左腕の袖がもぞもぞ動いたかと思うと、ピョコ!と懐かしいゴーレムが飛び出した。
「ティムキャンピー!どこ行ってたんだ、お前」
『お!ティム。久々に見たな』
ティムキャンピーは俺を見つけると擦り寄ってきた。
相変わらず可愛いな。最後見た時とは違ってだいぶサイズが小さくなってるが。
「篠神ティムキャンピーを知ってるんですか?」
『クロスとはよく話してたからな。何故かティムキャンピーになつかれた』
「もう出発するよ」
コムイの声で俺らは船に乗り込んだ。船が動き出してからコムイが言った。
「ティムキャンピーには映像記録機能があってね。キミの過去を少し見せてもらったよ。だから徹夜しちゃったんだけど」
コムイとリーバーは親指を立てた。一開き置いて、こう口にした。
「行ってらっしゃい」
アレンは嬉しそうに笑うと久々であろう言葉を口にした。
「行ってきます」
「篠神君無茶しないように見張っといてね!二人とも!!」
「当たり前だ」「分かりました」
『余計なお世話だ!!!コムイ!!!!』
当たり前のように返事をした神田は兎も角、即答したアレンに驚きつつもコムイに言葉を返した。
「いつも無茶する篠神君が悪い。行ってらっしゃい」
「無茶すんなよーー!!篠神!!!」
『リーバーまで言うなっ!!ま、いっか。行ってきます!』
遠ざかるコムイ達に手を振った。
心に染みる言葉
(行ってきます、か。久々に言ったような気がする。だけど、素直に嬉しかった)
(直感だけどアレンは信頼出来ると感じた)
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