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05.本当の信頼関係

 


「リオン、起きてるか?」

「あぁ」



部屋を覗くと起き上がり、ソーディアンシャルティエの手入れをしていた。



「身体の調子はどうだ?」

「戦闘を出来るまでにとはいかないが、歩き回るくらいならば問題はないはずだ」

「いちようかけておくか」



全身に意識を集中させ、第七音素を集める。ナタリア姫に教わり、治癒士として役に立つくらいには出来るようになった。

この力は便利だ。だが、使い方を誤れば大惨事になりかねない。俺のような世界にあれば戦争の道具以外には使わないだろう。



「命を育む女神の抱擁、キュア」

「……効果はヒールと同じくらいか」



包帯を外し、傷口を確認したリオン。新しいガーゼをおき器用に巻き直した。



「レンズ消費の代わりが音素、というわけか……」

「リオンも譜術を習うか?」

「いや、今ので感覚は掴めた。詠唱の台詞さえ頭に入ればいけるな」

『相変わらず凄い自信ですねリオン』

「当たり前だ。……というかシャルのリオン呼びは慣れないな」

『もう坊ちゃんとは呼べないくらい成長しています。だから、僕もリオンと呼びますよマスター』

「そうか……」



嬉しそうに笑うリオンは年相応の表情。この少年が戦闘するときどう変わるか楽しみだ。最も普段から仏頂面だから、笑っている方も珍しいが。



「とりあえず、俺の服だが着替えろ。この街を案内してやる」

「…………その喋り方癖か?」

「何がだ?」



顔をしかめると溜め息をつかれた。多少イラッとくる。似たような思考を持つ奴ほど厄介な奴はいない。いや、もう一人厄介な奴がいたな。

リオンは着替えながら、軽く睨み付けてきた。いや、違う。殺気だ。これは…………。



「ふんっ、司令塔のわりには戦いには慣れていないようだな。お前の口調もその殺気に慣れていない様子も、敵からしたら狙いをつけなければいけないボスそのもの。普段は上手く隠しているようだが、様子からして予想外の事態には焦りミスをする。それに思考で戦うタイプのわりには、案外挑発に乗りやすい僕以上の短気だな」



ピシャリと言い切ったリオンに言い返せない。

リオンの殺気は俺が膝を抜かすのに十分なものだった。



「お前のミスはその自分の傲慢さだ。僕は立ち止まっている奴に付き合う義理はない。今度こそ僕は間違えた道を進む気はないからな、スタンが信じてくれたように…アイツ等が僕を受け入れたように、僕は切り捨てるだけではない受け入れられる自分になる」



気高く美しい容姿で周りを引き寄せるが棘で触らせない薔薇そのもの。俺が歩んできた道は自らが戦うものではなく戦術を指示するもの。己が戦場に出ることは少なかった。リオンは自らが戦い、それに加え周りにも指示を出す。その身1つで自らの存在を示した。父親の権力だと言われ、自らの存在を否定されたリオン。
それを考えれば俺は彼からしたらどれだけ甘いかよく分かる。スザク、最前線で戦っていたお前ならコイツの気持ちが分かるか?



「自分の弱点や間違いを認めることは弱さじゃない、それは強さだ。逃げるなルルーシュ」



スッと殺気がひいたのが分かった。前線で戦い続けたリオンだからこそ出来ることだろう。

まさかこの俺が歳下に諭されるとはな。



「そう…だな。上から物を言うのは俺の悪い癖だ。想定外の出来事にも未だにパニックを起こす。……悪かったリオン。異世界から来た者同士、家族も友人も居ない。振りとは言ったが、少しは心を許せる兄弟になろう。悪いことを言い合える、な」

「それで良いと思う……ならば、僕も謝らなくてはならないことがあるな。リオン・マグナスは本当の名前ではない。まぁもうリオンの方が呼び慣れているんだがな」

「そうなのか?」

「エミリオだ、エミリオ・カトレット。これを教えたのは彼女とスタン達だけなんだ。だから、他人が居ないときはルルーシュ……ルルならそう呼んでも構わない」



リオンの笑顔に俺は固まった。今までとは比べ物にならないくらいの柔らかい笑顔だった。この笑顔を見なければ、普段の皮肉的な笑い方が本来のものだと思っていた。俺も人の事は言えないくらい猫被りだが。



「さて、もうそろそろ着替えないとルークが呼びに来るぞ。外で待っているから着替えたら出てきてくれ……エミリオ」

「あぁ分かった」



部屋の外に出てから不思議な関係に思わず笑いをもらした。





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あきゅろす。
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