55.良き関係 「あの……ナタリア姫?」 「姫付けは禁止といいませんでしたか?それと敬語もですわ」 優雅にお茶を飲んでいるナタリア姫に毒気を抜かれ苦笑しながら溜息をつく。たまにはいいかと思い、手紙いくつか持ち自分で紅茶を淹れナタリア姫の前に座る。 「あら、珍しいですわね」 「区切りがついたからな。たまには一緒にお茶でもしようかと」 「まあ、いつも通りなら怒るかと思いましたわ」 「まあ…なんというか……最近怒り疲れたんだよ。これくらいなら可愛いもんだ」 「ふふっ、スザク達ですわね」 「そこで笑うな…」 「いえ、前よりもルルーシュが生き生きしているからなんだか珍しくて。本当にルルーシュにっては大切な方々なのですね…」 それに気がついていた所は流石というべきか。ここに来た時からずっと世話をしてもらっていたから当たり前というか。ナタリア姫とは、どうも友人という一言ではすませられない関係だ。 「あ、そうでしたわ!すっかり目的を忘れていました」 「何か用があったのか?」 「いえ、対した事ではないのですが…その、私には兄弟がいなかったので……たまに年上の兄弟が欲しいと思ったこともありしたの……だから………その……兄上と呼んでもよろしくて?」 一瞬本気で呆けた。まさかあのナタリア姫がこんな事をわざわざ聴いてくるとは思っていなかった。思考が復活してからナタリア姫をみると不安そうに此方を見ている。俺は笑いながら答えた。 「俺は構わないよ」 「本当ですか!?」 「ああ、構わないよ」 「では、今から兄上と呼びますわ!ですから、絶対に姫付けは禁止です」 「はいはい、分かったよナタリア」 「よろしい。兄上、たまにはこうしてお茶を飲みにきてもよろしくて?」 「仕事の邪魔にならない時ならばな…!」 アスターからの手紙を見てピタリと動きを止める。流石はマルクトとダアトの中立地帯。良い事を知った。思わず笑いを漏らすとナタリアがキョトンと此方をみていた。 「ケセドニアの代表アスターからの手紙だよ。向こうに行ってから報告をくれるんだ」 「まあ、いつの間にケセドニアへ?」 「ちょっと前からな。マルクトとキムラスカの間だから物価とか情報が一番わかりやすいから、よく行ってるんだ」 「私が知らない所でそんな事を…」 「状況把握は自分でやらないと気が済まなくてね」 もう一つの手紙は名前を隠してはいるがジェイドだろう。最近はフォミクリーの研究をもう再開しようとマルクト皇帝と争っているらしい。全て話すわけにはいかないので流石に説得に苦戦しているそうだ。こうしてたまにフォミクリーの資料をまとめて送ってきてくれている。ルークとアッシュを生かしたいという想いは本人達よりも強いようだ。マルクト皇帝の説得を手伝って欲しいというのが今回の用事らしい。これはいざとなればロイドとコレットを使えばいいだろう。 しかし、パソコンやテレビ、携帯がないのがこんなにも不便とは思わなかった。詳細図は渡したので、シェリダンやベルケンドの彼等に頑張ってもらうしかない。俺達の世界以外ではテレビやパソコン、車などの機械類がないと知った時は驚いた。その分自然が残っている事実もあるだろう。 「あっ!」 「どうしたんだ?」 「いけませんわ、午後から視察に出なければなりません。これで失礼致しますわ兄上」 「ああ、俺も午後からは私用で城を出る」 「1人でいかれるのですか?」 「いや、スザクとカレンが一緒だ。アイツらに会わせたい人物がいる」 ・・ 「ああ、彼女ですわね。私からもよろしくお伝え下さい」 そういうと一礼してナタリアは出て行った。俺もすぐに資料を片付け外に出る準備を始めた。 NEXT [*前へ][次へ#] [戻る] |