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44.後悔は消えず

 

君の前に降り立ち俺は剣を向けたのに、君は自嘲するかのように笑った。俺が生きてきて見た中で一番哀しい笑いだった。


最後の確認をする時に、君はあまりにも平然と「約束通りお前がオレを殺せ」と言うから、思わず抑えていた本音が口を溢れた。「やるのか?どうしても」と。
俺は否定して欲しかったのかもしれない。だって、君が誰よりも生きたがっていたのを間近で見て知ってしまったから。何より君は俺の初めての友で、親友で。彼女の仇であってもそれを完全に捨てきることは絶対に出来なかったから。それでも、君は自分を撃てと言った。

「撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ」

君の口癖のようなその言葉は俺の脳内から消え失せることは絶対にないだろう。


君の胸に突き刺さる剣はスローモーションに見えて、君の表情すらゆっくりに見えた。深々と突き刺さったその剣の傷口から血が溢れ出した。もう助からない場所を刺したのだから当然だけど、それでも頭の中は君を助けたいと願っていて、そんなことをしては駄目だと自らを律するように強く強く剣を握り締めてた。

溢れ出た涙を止めようとは思わなかった。ただ、俺の肩に乗った彼の重みは一生消えることはないだろうと直感的に思った。




そこで目が覚めて僕は起き上がった。顔に手をやるとそこは濡れていて、またかと思いながら袖で涙を拭う。だが、いつもと違い溢れ出る涙は止まらなかった。



「ルルーシュ……ユフィ……」



いつまでも僕の胸に突き刺さる二人の死。一人は護りきれなくて、一人は自分が殺した。何千といわない命を奪った筈なのに、彼等の死だけはいつも僕を苦しめる。
だから、涙が止まらない原因など予想がつく。ルルーシュと過ごしているからだ。生き生きと過ごしている君は、前以上に優しくて、厳しくて、柔らかくて、意地悪で。君がもしあの世界で生きていたら…を想像させてしまうから。



「……ごめんっ…ルルーシュ」



ルルーシュ話し合ったときにはもう殆ど許していたんだ。シャーリーの言葉は強く僕の胸に突き刺さっていて、考えさせられたから。きっとルルーシュにも理由があったんだと気付かされたから。生きれた筈の君を殺してしまう理由なんて本当はなかったのに。
なのに、そんな僕を君は最後の最後まで生かそうとした。あんな皮肉な言葉で君は言ったけど、それは僕を苦しめない為なんだろう。何処までも嘘つきで、何処までも優しかった、君の最後の嘘だったんだろう。




「ごめんっ…ごめんっ……ルルーシュ…」



感情に委ねて俺は泣いた。
ドアの向こうで君が聴いているのを知らずに。





(俺の存在はお前を苦しめるだけだな……すまないスザク。もう少しだけ付き合ってくれ)


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