42.親切 エンゲーブに来た俺達はある人の家を尋ねた。 「お久し振りですローズ夫人」 「おやルルーシュさんじゃないかい!久し振りだねぇ!あれから畑の方はどうだい?」 「お陰様で順調ですよ。助かりました」 スザク達を紹介し、中に招き入れて貰う。知り合いは広く浅く居た方が都合が良い。 「いや、アタシ逹の方もルルーシュさんのお陰で助かってるよ。最近は流通や取引がしやすくて大助かりさ」 「そんな、俺にはこれくらいしか返せませんから。ここだけは自信があるので」 「アハハハ!確かにルルーシュさんは頭がよく回る。ああ、そうだ!さっきアップルパイを作ってみたんだけど食べるかい?」 「「!」」 速攻で反応したのが二名。カレンもやはり女か。嬉しそうに食べているエミリオ。 「俺はちょっと村を見てきてくる」 「分かった」 「ルルーシュ、僕も一緒に行くよ」 一切れだけ食べ終えた俺は立ち上がる。すぐにスザクも反応した。ローズ夫人に二人を頼み外に出る。 「なんだが此方の国は懐かしいよ、昔の日本に近い感じがする」 「そうなのか?」 「ほら、着物とか売っていたでしょ。食事とかも和食が多かったからね」 「言われてみればそうだな。どちらかと言えばキムラスカは政治的にも文化的にもブリタニアに近い」 「やっぱり何処の世界も少しは似ているのかな」 「だからこそ、この世界の醜い部分もよく見える」 首都に居ればキムラスカとマルクトがいがみ合っているのはよく見える。だが、一歩外に出ればそれはない。民はよく行き来をしている。エンゲーブの食べ物だってキムラスカに来ていた。所詮は、上が火花を散らしているだけで民には関係がない。 世界観上だけ見ると似ても似つかないが、内面はどの世界も似ている。 ユーリの世界テルカ・リュミレースも貴族が民を卑下する、エミリオの世界も戦争で貧困差が生まれ欲望の為に外郭を造り上げようとした奴等がいる、ロイド逹の世界も2つの世界で争い、人種差別があった。 「結局世界がどれだけ違おうと人間は変わらないんだ」 「優しい世界っていうのは中々難しいものだね」 「そうだな。だが、一度分かれば世界は変わる、変えられる。俺達が前に進んだみたいに」 今回は憎しみを押し付けられそうな人ではない相手が居るからな。まあ出来るならやりたくないが、最終手段は考えている。 「ルルーシュ、ゼロレクイエムの再現だけは許さないよ」 「何の話だ?」 「君が考えそうなことくらい分かるよ。だからこそ、許さない。君はここでは生きるべきだ」 「変わらないと思っていたが少しは頭が回るようになったようだな」 「『ゼロ』をやってると自然とそうなるよ。何せ君を演じてるわけだからね」 「あれば最終手段だ。お前逹の働き次第でやらなくてすむさ」 「うわっ、厳しいね」 「俺とスザクで出来ない事はない、そうだろう?」 「うん、そうだね。やってみせるさ、今度こそ君と」 お互いに笑いながら拳を合わせた。 敵対するのでもなく、騎士と主とでもなく、友人として協力する。それが純粋に出来たことはなかった。それくらい俺とスザクの距離は離れてしまっていた。ゼロレクイエムを経て、過去のしがらみはなかったことには出来ないが、それでも許そうと思えるようになった。 ようやくスザクとの距離が戻った気がした、あの頃のように。 それからはゆっくりエンゲーブの店を見て回った。 「お、兄ちゃん!エンゲーブの林檎買っていかないかい?美味しいよ!」 「食べるか?スザク」 「折角だから食べようかな」 「カレンとリオンの分も買うか。林檎4つ買おう」 「毎度あり!」 貰ってすぐにスザクに投げ渡す。軽く拭いてから一口かじると、果汁が染み出てきた。 「美味しいな」 「こんなに美味しい林檎食べたのは久し振りだね」 「お、わかるかい?兄ちゃん方。エンゲーブの林檎は高値で取り引きされるほど、美味しいんだよ。俺の自慢さ!」 「言うだけの美味しさはある。ここの果実や野菜が新鮮で美味しいのは確かだからな」 「ルルーシュ、結構調べてるんだね」 「あっちの経理の調整もしてる。適応な値段で尚且つ美味しいので当てはまるのは、エンゲーブくらいだからな」 「お、嬉しいこと言ってくれるね。今後もエンゲーブをよろしく頼むよ。あ!そうだ、兄ちゃん達ちょっと待ってな」 引っ込んだ店主にスザクと顔を見合わせる。どうしたのだろうか。 「ああ!ルルーシュさん」 「ん?ああ、この間はありがとうございました。とても美味しかったです」 声をかけられ後ろを見ると前回来たときにお世話になった店主がいた。 「ほら、今回も持っていきなよ。新しい野菜も採れたんだ」 「ありがとうございます」 断っても無駄なのは最初に来たときに学習したので素直に受け取る。その後他の店の店主まで俺に気が付いて、一時戻らせて貰えなかった。 NEXT [*前へ][次へ#] [戻る] |