39.違和感 今回は全員で酒場に集合した。俺とスザクは私服でだが。 「また死霊使いを呼び出して、何をしたいんだ?ルル」 「今度は『ルルーシュ・ランペルージ』として接触したいだけさ」 「なら、僕が居たら不味いんじゃないの?」 「いや、構わない。それが狙いだからな」 「んで、俺が来た意味は?ルーシュさんよ」 「凛々の明星の一員と言うことにしておいて欲しい。後、死霊使いがいる間はそのあだ名は止めろ」 「りょーかい。んじゃ、俺もルルって呼ぶぜ」 「構わない。頼むぞ」 「私はアンタとリオン、スザクの幼馴染みでいいのね?」 「ああ。リードは俺がするから全員適当に話を合わせてくれ」 「来たよルルーシュ」 スザクの合図でユーリが持ってきていた凛々の明星の依頼選びの振りをする。 「おぉ!ルルーシュ君久し振り〜!!」 「ゼロスか!久し振りだな」 すぐに絡んできたゼロスにわざとらしいくらいに明るい表情で返した。しいなとゼロスの顔がひきつっているのは後で問いただしてやる。 「最近見かけなかったから心配してたのよ。どうよ?凛々の明星は」 「上々だよ。ユーリさんがしっかりしてるからな」 「よせよせ、そんなこと言っても給料は上げねーからな。ルル」 「酷いですね。そんなつもりありませんよ」 ニヤニヤ此方を見てくれるユーリに苦笑いを返す。ジェイドが俺とスザクを見ている。 「ゼロス、誰だい?」 「ほら、最近有名なギルドの奴らだよ。ジェイドは知ってるだろ?」 「……ええ、勿論ですよ。ただメンバーは一人だけと聞いていましたが」 「いんや、ずっと居た。ただ基本バラバラに行動しているから会わねーだけよ。俺だけが凛々の明星を名乗ってるから、一人だけとか言われちまうんだよなールル」 「すみません、名乗るのが面倒でつい」 「ま、別に良いんだけどな」 「ああ、ジェイド。コイツ、ルルーシュ君って言うんだけどジェイド並みに頭の回転が早いし譜術も使えるんだぜ?」 「止めろよ、ゼロス。俺は死霊使いみたいに全ての音素を扱えないし……」 「それは興味ありますね。ついでに皆さんのお名前もお伺いしたいのですが」 食い付いてきた。まあ、あんな状態で去ったから当然か。 「ゼロス、そう言えばこの人達は誰なんだ?」 「これは失礼、私はマルクト帝国軍所属のジェイド・カーティスです」 「ルルーシュだ」 「僕はスザクと申します」 「私はカレンよ」 「いちよう凛々の明星の頭のユーリだ。んで、そこの不機嫌な奴がリオン」 わざと全員ファーストネームしか名乗らない。俺とスザクが同一人物かまたは関係者かを探ろうとしているジェイドは、眼鏡を押し上げた。あれは顔に出さないための癖か。 「スザクさん、ファーストネームをお伺いしても?」 「枢木ですけど、何か?」 「いえ……よく似ている人物を見かけたもので。ご兄弟とかは?」 「居ませんよ。同郷出身の親友と幼馴染みが証明できます」 「親友と幼馴染み?」 「俺とカレンだ。後、俺の弟のリオンも証明できる」 「4人は同郷出身なのですか?」 「かなりの辺境地だけど「カレン!!村の場所は同郷出身者以外には話さないって掟でしょ?」 「あ……ごめん、忘れてた」 「随分不思議な場所に住んでいたようですね。詳しくお訊きしたい所ですが……」 微かに殺気を滲ませているジェイドだが、コイツらには全く効果がない脅し方だ。 俺とスザクは世界から敵に見られていたため殺気など当然慣れている。カレンもそれなりに場は踏んでいるので大丈夫だろう。エミリオやユーリも最前線で戦ってきているから、完璧に無視出来る領域だ。 「おい、おっさん。俺達に脅しは効かねーからな。無駄な労力使わないことをオススメするぜ」 「……噂通りに出来る人のようですね」 「人達、だ。ちなみに頭脳戦やりたいならルルとやってくれ。俺はオマエみたいな奴の相手はゴメンだ」 「では、ご相手願いましょうか。ルルーシュさん」 「お手柔らかにな」 余裕綽々の様子だが、こういう理性的な奴は俺の得意分野だ。 「貴女方は、キムラスカ人とマルクト人のどちらですか?」 「俺はケセドニアだから、正直わからねえな」 「……多分キムラスカじゃないのか?」 「そうねぇ…正直発見されてすらないし、私もよく分からないわ」 「この際もうキムラスカで良いんじゃない?」 「だが、位置的にはダアトかマルクトじゃないのか?」 「分かりました。どの国にも所有しているという主張がない場所にあるんですね?」 「まあそうなるな」 「ふむ……では、気になってたのですがカレンさん。貴方は赤髪ですよね?」 「……ええ、悪い?」 「いえ、全く。ですが、赤髪はキムラスカ王族の象徴だと言うことくらいはご存知、ですよね?」 「ならば、ゼロスの方も俺から訊きたいのだが?」 「……彼は違いますよ」 「理由に根拠がない。死霊使いともあろう御方が、そのような曖昧な理由で決めたとは思えませんが?ちなみにカレンだが、キムラスカ王族とは遠縁に当たる。これはファブレ家が証明できる物だ」 「彼等はフェレス島の出身だそうですよ。彼処の人は毛髪が桃色の方が多いそうでゼロスはたまたま赤くなった、と言うわけです」 ジェイドは俺の返しに目を微かに細めた。お互いに仮面の奥を探ろうとするこの感覚は懐かしい。だが、まだまだだ。俺はこれ以上の仮面を上手く使ってきた男を知っている。 「ま、カレンさんは未だしもこのようなおふざけた性格の方が王族だったらビックリですけどねぇ」 「そうだな、それには同意する」 「ちょっと!ルルーシュ君少しはフォローしなさいよ!」 「間違っていないからな」 「ですね♪」 「ジェイドまで酷いぜぇ……」 「アンタの日頃の態度が悪い。これを気に反省したらどうだい?」 「しいなにまで言われたら俺様落ち込むぅ…」 いじけたゼロスはしいなの鉄槌を喰らっていたが、無視しよう。煽ったのは此方だが、どうみても夫婦喧嘩にしか見えない。 「さて、次に行きましょうか」 「……私、こう言う人苦手」 「僕もだよカレン」 「場所を公開しない理由か?預言が関係しているから場所を公開できないんだよ」 「預言が?」 「ああ。俺達の村にはユリア・ジュエが遺したとされる譜石で出来た石碑があってな。……このオールドラントの常識を覆すような事が書かれていた」 「「「「『預言に従っては世界は破滅に向かうだけ』」」」」 「!!」 「預言を遺したユリア・ジュエ自身が預言に従ってはならないと……そう言うわけですか」 納得したように頷いたジェイドに不信感を抱く。やはり何かが違う。なんだ……コイツは。 「これは私の興味での質問なんですが、預言をどう思われてますか?」 「あんなのに頼って良い道が拓けるなら人間苦労しねえよ。どうせ苦労するならせめて後悔のねえように自分で道を選ぶ。預言なんぞ必要ない」 「そうね、私はユーリに同意。私が信じたやりたいことをやる。そう……教えて貰ったから。だから預言には絶対に頼らないわ!」 「預言(アレ)に未来を決めつけられるのはゴメンだ。己の道は己で決める。アレは必要ない」 「頼ったら楽になるかもしれない。だけど、僕は後悔して預言のせいだと嘆くよりは、自分で決めて後悔したい。だから、使わないよ」 「最悪の事態を回避するくらいしか利用価値を見出だせないな。預言に決められた操り人形のような変化なき日常を生きているとは言わない。それはただの経験だ。そんな人生、俺はゴメンだな。俺はなくしたくない、大切なものを。だから、預言は俺達には必要ない」 「……良い答えです。それを聴いて安心しました。少し込み入ったお話をしたいのですが、場所を変えませんか?」 優しい笑みを浮かべたジェイドにかなり驚いた。コイツ……仮面の扱い方に気が付いている? ルーク、お前に有利な方に風上が向いたようだ。 「乗ろう、その話。俺だけで構わないか?」 「ええ、貴方一人で充分です」 「ふざけるな。貴様とルルと二人きりにさせるか!」 「そうよ、隠し事はもう懲り懲りよルルーシュ!」 「君は傍にいないと何をやらかすかわからないからね」 「おや、随分と過保護な保護者達が居るようで」 「……気にしないでくれ」 「ルル、大丈夫なんだな?」 「ああ」 「んじゃ、俺はこの過保護軍団連れて宿に戻ってるぜ」 「ユーリ?!貴様っ」 「ルルが大丈夫って言ってんだ。俺は信じてるぜ」 力強く優しく笑ったユーリに、自然と力が抜ける。そうか、ユーリは本気で俺を信じてくれている。ならば、俺もちゃんと答えなければな。黒の騎士団みたいにならないためにも。 「ほ〜ら、だだ捏ねてないで戻るぞおまえら」 明らかに渋々といった感じで酒場から出た。ジェイドとゼロスが明らかに笑っており、ユーリ以外は後で説教をしようと心に決めた。 NEXT [*前へ][次へ#] [戻る] |