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34.もう一人のゼロス

 

全員の元の世界、来てから何をやったのか、知っていること、これから何をするのか。夜明け近くまで長く話し合った。全員に通信機を渡し、朝日が既に登り始めている頃に解散した。
宿に泊まっている三人が寝たのを確認し、俺は宿屋を出た。酒場まで行くとやはり待っていた。



「気が付いてくれて助かる〜ルルーシュ君♪」

「気付かない筈ない。お陰様で感付いたリオンにギリギリまで追求されていたんだ」

「わりぃ、わりぃ。俺様がちゃーんと後で説明しといてやるよ。……あの場で話せるようなもんじゃなくてね」
             ・・
「予想はついている。お前はあのロイド達と旅したゼロスではない、違うか?」

「さっすが〜♪……俺はロイド君に疑われて、ロイド君達と戦って死んだゼロス・ワイルダーだ」



スッと雰囲気が真剣になったゼロスにこれが彼の素だと分かる。



「俺を信じてくれた方のあのロイド君達に真実を言うのはちょっと気が引けてな…」

「気付かれる日はいつか来るんじゃないか?」

「だろうな。ロイド君は仲間の事に関しては直球だからねぇ……なぁルルーシュ」

「なんだ?」

「裏切られた時、どう思った?」

「今はそれだけのことを俺はしてきたから当たり前だと言える。当時は……大切な者を失ったと思っていたから、死んでも構わないと考えたな」



一度目はナナリーを拐われ、スザクに裏切られた。二度目はフレイヤでナナリーを失ったと思っており、黒の騎士団に裏切られた。
それに覚悟はしていた。あの日ギアスを手に入れ人を殺した時から。



「――撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけだ」

「何それ?」

「俺がずっと思っていた事だ。最初に祖国を敵に回す一歩を見付けたあの日から、スザクに討たれる直前まで。お前にはその覚悟があったと見えるが」

「俺はな…俺が心配なのは……ロイド君だ」

「ああ、確かに。俺やスザクとは違い過ぎるし、ルークみたいに負い目を感じているわけでもない、ユーリのように覚悟を決めて向き合っているわけでもなく、リオンのように冷徹に振る舞えるわけでもない、しいなのように暗殺がある仕事でもなければ、お前のように仮面をつけられる性格じゃない。……ズレに気が付いた時、落ちる可能性は高いな」



ロイドは仲間の為なら何でもした。それは彼の良いところだろう。だが言い返せば、敵側の命に関して少し無頓着過ぎる。討たれた側にも理由があるのに気付いていない。ただ純粋に真っ直ぐな故に。



「この世界はロイドにとって苦しいものになるかもな」

「ルーク君のことか?」

「ああ。アイツは最初から殺す事の出来た俺達と違い、魔物や敵の命を奪う事の罪悪感を忘れていない。それにルークは、ロイドがあまり気負う事の無かった物を抱えている。何処かでロイドとルークは衝突するかもな」



ルークとロイドは表面上はよく似ている。熱血で明るくて純粋で。だが、ルークは思っていた以上に冷静で冷淡だった。





「ルーク、お前は…いやお前も仮面を被っているな。何故だ?」

「アッシュには心配かけたくねーんだ。前の旅で俺は自分がどれだけ無知で、馬鹿で、ワガママか思い知ったからさ」

「7年でよくこれだけも…」

「命を手にかける重さも、仲間を想うことも、裏切られることも、生きている意味も、ぜーんぶアイツ等が教えてくれたんだ。だからアイツ等と仲良くなれなくなっても、俺は俺のワガママで皆を救いたい。その為なら……俺はジェイドみたいに全てを背負い仮面を被るよ」






「スザクや俺には無理だ。ロイドとは根から違いすぎる」



純粋で真っ直ぐなあの言葉に何も出来る気がしない。今までになかったタイプ過ぎて、疑いたくなるくらいに。



「ルルーシュ君も苦労してるんだねぇ。ま、俺もロイド君やコレットちゃんに会うまでは……いや一人居たか」

「しいなか」

「唯一の俺に媚びない異性だったからな。俺を叱ってくれたし、心配もしてくれた。これでも結構一途なんだぜ、俺様」

「しいなはロイドに気があるみたいだったが」

「そうなんだよねぇ……聞いてよ〜ルルーシュ君!」



それからいつもの調子に戻ったゼロスのノロケに付き合う羽目になり、結局その日は一睡も出来なかった。





(……ルル)
(聴くなエミリオ…)
(……寝たらどうだ?)
(そうしたいが……時間がない…はあ)
((相当疲れてるな…しょうがない。追求は止めるか))



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あきゅろす。
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