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23.願いと言う名のギアス

 


「イオン様は、アリエッタの知っているイオン様じゃない。イオン様は……死んだ、ですね。総長がそれを隠していた、ですか?」

「ああ、間違いない」

「イオン様、アリエッタの為に……隠した。だったら、アリエッタもう泣かないもん。イオン様の為に、泣かないもん」



人形と一緒に俺の腕に抱き着いているアリエッタは、先程よりは落ち着いている。



「ゼロ」

「何だ?」

「ありがとう、です……ゼロが教えてくれなかったら、アリエッタきっと知らないままだったです。ゼロもアリエッタの恩人、です」



返事の代わりに逆の手で頭を撫でてやると、照れたように人形に顔を埋めた。髭とは逆の意味で本当に16歳に見えないのだが。



「総長…もう、信頼できなくなった。……アリエッタ、ここに居るの怖いです」

「ならば、抜けるか?信託の盾騎士団を」

「え……でもっ」

「私は奇跡を起こすゼロだ。やってみせる。だから、良ければ私のところに来ないか?きっと私の仲間ならば魔物の事も怖がられないからな」

「ゼロ……信じて、良いですか?」

「来い。アリエッタなら歓迎する」

「はい、ですっ!」



嬉しそうに抱き着いてきたアリエッタは、まるで子犬のような気がしたのは気のせいではあるまい。



「ならば、何かあればシンクかアッシュに「ルルーシュ」の名を出し頼れ。きっと助けてくれる筈だ」

「ルルーシュ?」

「私の協力者の名前だ。仲間になったと言えば良い」

「はい、です!」

「一時は六神将として普段通りにして欲しい。導師に対する態度も含めてな。時間は少しかかるかもしれないが、計画を立ててくる。それまではたまに会いに来る」

「絶対、ですか?」

「ああ、絶対だ」

「なら、アリエッタちゃんと待っています」

「私は今日までしか居れない。悪いな」

「大丈夫、です!」



しっかり意志の灯った瞳を向けてきたアリエッタにまた最愛の妹が重なる。彼女とは敵として対峙したくなかったので、ありがたい選択肢だったな。
少し考えてスカーフを外し、アリエッタの腕につけてやった。



「?」

「私の物があれば少しは安心できるだろう」

「ありがとう、です!」



パアッと顔を明るくしたアリエッタに自然と頬が緩む。ルークやイオンと精神年齢的には同じかもしれない。



「私はもう行く。またなアリエッタ」

「はい、です!」



人形に顔を埋めながら、手を振って居たのをみて、俺はドアを閉めた。一息ついてから、俺は着替える為にいつもの部屋に向かう。
見た目や年齢からかどうしてもアリエッタはナナリーと、エミリオはロロと重ねてしまう。スザクに見られたら、からかわれそうだな。
俺は苦笑しながら、ドアを開けてビックリした。



「ルルーシュ!」

「スザク、お前どうしてっ!?」



とりあえず、ドアを閉め仮面を外した。スザクは既に着替え済みだった。スザクは少しだけ悩んでいたが、すぐに膝をついた。



「スザク?」

「やっぱり君が危険な目に遭おうとしているのを黙ってみてるわけには行かないよ。今度はちゃんとルルーシュを信じて共に戦いたい。だから、僕を君の騎士として傍で戦わせてくれないかな?」

「本当に良いのか?それで」

「今回は僕が自分の意志で決めたことだよ、ルルーシュ。僕の「ギアス」にかかってくれないかな?」

「ふっ、「願い」か」

「君が言ったんだよ」

「良いだろう。お前のギアスにかかってやる。俺に着いてこい枢木スザク!」

「イエスユアマジェスティ!」



もう普段の雰囲気に戻っていた。それが少し居心地が良い。俺は着替えながらあることを口にする。



「スザク、忘れていただろうが、お前には「生きろ」と言うギアスがかかっている。死ぬ筈がないだろう」

「あ」

「お前の意志を確かめたかったんだ。まあ、まさか全く気付かないとは思わなかったがな」

「君って人は……本当に策士だね」



溜め息を着いたスザクを笑う。忘れていた馬鹿が悪い。こんな簡単なものエミリオは絶対に引っ掛からないからな。
着替え終わり、外を確認してローレライ教団を出ると入口にエミリオが立っていた。



「リオン!」

「ようやく来たか。早くしないと船に間に合わないぞ」



俺の荷物も持って先を歩き始めるエミリオ。少し不貞腐れている。ダアトに居る間に放置しすぎたな。あの二人と違いエミリオは甘えるのが下手なようで、スザクと苦笑いする。俺は自分の荷物と一緒にエミリオの荷物も取り上げた。ビックリして此方を見上げている。



「俺達は今兄弟なんだ。遠慮せずもう少し甘えて来い」

「ほら、ルルーシュはお兄さん体質だから」

「 ス ザ ク 黙 れ 」

「本当のことだろ?妹と弟二人も居たんだから。それより、荷物は僕が持つよ」



スッとスザクに両方とも荷物を取られた。俺より軽々持っていることから体力馬鹿は今も健在らしい。エミリオがふっと笑いを漏らた。



「仲良いんだな。ルルのこのような表情初めて見た」

「最初は仲悪かったんだよ」

「そうだな。お前は俺様勝気気質だったから、最初は反りが合わなかった」

「スザクが?」

「今の温厚紳士面からは想像できないだろう?俺も再会して話したときかなり驚いた」



そのまま俺とスザクの昔話をしながら、船へと足を向けた。





(とりあえず、ケセドニアに寄り道だ。スザクは旅券がないからな)
(そっか、僕達この世界に戸籍とかないんだよね)
(そもそも戸籍自体ないがな。口で誤魔化せばなんとかなる)
(……なんかこの世界の将来が心配)
(……俺も最初はそう思ったな)



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あきゅろす。
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