[携帯モード] [URL送信]
第23話 空白の数年間
 


あの後仕事に没頭して、頭の中から忘れ去ろうとしたが無理だった。僕の国際警察としての初仕事は、酷いトラウマだった。

自然と資料を探る手が止まる。あの日のことは思い出したくもない。怜待の事を言えないくらい、あの日から僕も変わってしまった。



「陸」

「!?」



急に声をかけられ振り向くとそこに居たのは怜待だった。咄嗟に外していたフードを被る。何だか怒っているご様子。



「警察庁に戻ってきたなら、携帯の電源を入れることを進める。電話が繋がらないと君の上司が探していた」

「嘘っ!?」



言われて気が付いて、直ぐに電源を入れると物凄い着信履歴とメール。でも、これ1/3は怜待だよねぇ……。



「あっちゃ〜、電源切ってたの完璧に忘れてた」



これは流石に不味い。資料を必要なのだけ取り、片付けて立ち上がる。



「んで、怜待はわざわざ探しに来てくれたの?」

「ま、まぁ……前回の事を考えると資料室に閉じ籠ってそうだったからな」

「そっか……ありがと。じゃあ僕、行ってくる」



いつものようにいつもの表情で話して、その場を立ち去ろうとする。が、怜待に手を捕まれ阻止される。



「ちょっ、怜待!?」

「……何かあったか?」

「!」

「陸の様子が可笑しいと、糸鋸刑事を経由して成歩堂から聴いた」

「うわぁ……龍一君気が付いてたんだ」



そりゃ急に仕事に戻れば不審に思うよねぇ。どうやって抜け出そうかな。



「それに、出逢った時にも思ったのだが……何処か変わったな陸」



ピタリと身体が強張る。怜待が気付いているなら、龍一君も気付いていたかもしれない。



「私や成歩堂が知らない数年間に何があった?何故刑事になった?確か君は……」

「……数年も経てば人は変わるよ。龍一君や怜待も良い例じゃないか」

「陸」

「怜待。僕はあの日から犯罪者を許さない。だから、それにより無実の人が罪を着せられるのは絶対に阻止する。その為なら……何だってやるよ。怜待、今の君は僕の



――敵だ」

「っ!」

「覚悟しておいて」



そのまま手を振り払って資料室を出る。人が居ないところでズルズルと座り込む。携帯がなっているのに気が付いて、ディスプレイを見ると龍一君だった。恐る恐る取る。



『松山大丈夫?』

「龍…一君」

『何があった?』

「ごめっん…ごめん…」



わざわざ苗字で呼んだ一番信頼している親友の声に僕の涙腺は崩壊した。止めたくても止めれなくて。



『我慢しすぎだよ松山』



僕は一時、龍一君の優しさに甘えて泣いた。





(昔から僕は無力すぎる)


NEXT

[*前へ]

9/9ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!