第22話 思い出し
「ほら、龍一君。楽屋で見つけたカードキー使いなよ」
「今更だけど陸開けられるよね?」
「細かいことは気にしない♪」
龍一君がカードキーを通すとピッと音がなりドアが開いた。
「お、開いたぞ」
「やったあ!さ、さ、行ってみようよ!」
((殺人現場に行くのに、不気味なほど浮かれてるな……))
絶対龍一君も同じこと思ったはず。まぁこれが真宵ちゃんの良いところなんだけど。
僕は龍一君と真宵ちゃんの後ろを追った。はしゃぐと思っていた真宵ちゃんが黙り込んでいる。不思議に思って顔を合わせた龍一君が真宵ちゃんに声をかけた。
「どうしたの?」
「…………」
「なんだよ、急に大人しくなって」
「……だって、あの白いテープ。なんか、リアル」
「怪人アクダイカーンが死んだからね、トノサマンにやっつけられて。凶器はトノサマン・スピアー。……そりゃリアルだよ」
「僕は見慣れちゃったからなぁ……しかも、遺体があるの見たし」
「それもどうかと思うよ陸」
はぁ、と溜め息を疲れた。
職業柄しかないもん。慣れないとやっていけないからね、警察なんてさ。
龍一君が調べ始めているのを見てから、僕は邪魔な外部情報を切った。
ここが殺人現場と言っていたが、どうも可笑しい。あの遺体の傷口といい、凶器は別にあると考えた方が良さそうだ。犯人は怪しい人は沢山居るが、どうもふにおちない。事件当日他に誰かが居た、とか。
――駄目だ、まだロジックを組み立てるには情報が少なすぎる。やはり衣袋武志の経歴根こそぎ調べよう。ついでにこの英都撮影所のこともだね。
意識を戻して龍一君と真宵ちゃんを見ると漫才みたいな会話をしながら調査をしている。成歩堂法律相談事務所の将来が本気で心配だ。真宵ちゃんがカメラを見ている。
「うわー、すごいなあ。高そうなカメラ」
「お、おい。触るなって」
「だから、二人とも手袋つけて触ろうよ」
真宵ちゃんがカメラを持とうとしている。指紋検査で引っ掛かっても僕は知らないからね。
「あっ!ダメです!触らないで下さい!」
走ってきたのは確かこの撮影所のスタッフさん。真宵ちゃんがビックリして手をカメラから離した。
「あ…ごめん。この子、ちょっとアレなもんで」
「何よ"アレ"って!」
「…あの、きみは?」
真宵ちゃんを華麗にスルーした龍一君に吹き出しかけた。
「龍一君、その子この撮影所の撮影スタッフさん」
「あ、はい。大道具や小道具とか、手入れをしています」
「あたし達、荷星三郎さんの弁護士なの」
「僕は上司がウザイから離れる為に、この二人の見張りを称してサボり」
「「「……」」」
沈黙。しかも、さっきこの子会ったからね。営業スマイルで。僕、そんなにきっちりしてないから。そんな気まずい沈黙をスタッフさんが破ってくれた。
「…あ、ああ、貴方達が、ニボサブさんの……」
「にぼさぶ……ニボシサブロウか」
「(……なんとも単純なアダ名だね)」
「(陸、突っ込んじゃ駄目!)」
龍一君と目で会話をした。流石幼馴染み。よく僕の思考が分かってらっしゃる。
「大変ですね。でも、助けてあげてくださいね、ニボサブさん。あの人が、誰かを傷つけるなんて絶対ないですから」
「まかせてください!」
「…………甘いね」
「陸?」
「ん?何でもないよ龍一君」
ニコッと笑って返すが、渋い顔をしたままだった。
確かに今回は荷星三郎は犯人じゃないと出来すぎた状況から確信がある。だが、この世に絶対など無い。彼が犯人の可能性は捨てきれないのも確かなのだ。警察は疑うのが仕事、絶対の事実など認めない、認めてはならない。
――人は簡単に裏切る
余計なことを思い出したっ。
咄嗟にフードを深く被る。絶対に酷い顔をしている。一番信じれて頼りたい龍一君の傍には他人が居る。一刻も早くこの場から立ち去ろう。
「龍一君、僕もうそろそろ戻るよ。スタッフさんには話聞いたし、調べたいこともあるから」
「あ、うん。何かあったら連絡していい?」
「勿論!僕は龍一君の味方だよ。じゃあね」
僕はそのまま早足で第二スタジオを飛び出した。
「陸?……(今様子が可笑しかった)」
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