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第18話 刑事の有罪への自信

 


「ノコ先輩、本当にスタッフの子と荷星さん、衣袋さん以外に誰も居なかったの?」

「そのはずッスよ」

「僕さ荷星さんだけでの犯行無理な気がするんだけど。てか、本当に凶器あの槍な訳?」

「松山は考えすぎスよ」

「ノコ先輩は考えなさすぎ。ひと一人の人生かかってるんだよ」

「あっ!」



ノコちゃんが急に止まったので前を見ると、龍一君と真宵ちゃんが居た。
龍一君に軽く手を振ったら、笑い返してくれた。



「アンタは、この前の殺人犯!」

「ああああっ!この前の大マチガイ刑事!」

「今現在も間違い刑事だよ、真宵ちゃん。ノコちゃん、真宵ちゃん無実だから」



どうやら真宵ちゃんのノコちゃんに対するイメージは最悪みたいだ。まぁそりゃ無実の罪で捕まったから、良い印象は無いよなぁ。



「アンタたちのせいで御剣検事はちょっとブルーになってるッス!午後のティーを飲みながら、窓際で黄昏ているッス!だけど、松山とチェスして居る時はちょっぴり機嫌が良かったッス!」

「し、知りませんよそんなの」

「そうだよ!だいたい、あなたの捜査がデタラメだから、いけないんでしょ!陸さんもあたしが無実だって言ってたのに無視したじゃん!」

「!!……………」



真宵ちゃんが言った瞬間ノコちゃんが罰の悪そうな顔をして固まった。



「……黙っちゃった」

「痛いトコロを突いたらしいね」

「そりゃね…無実の人間捕まえちゃったし」

「……ど、どうしよう。あたしが悪いのかな?」

「意外にナイーブな男みたいだ」

「龍一君、ノコちゃんは繊細で純粋なんだよ」



落ち込んだノコちゃんを見て真宵ちゃんは多少焦っていた。
ま、真宵ちゃんが綺麗に図星ついたもんね。そりゃノコちゃん落ち込むよな。
ノコちゃんが申し訳なさそうに喋り始めた。



「……そッス。自分のせいッス。ヒトのせいにしても、自分の心だけは誤魔化せないッス」

「ま、まあまあ。次頑張ればいいんですよ!」



その言葉だけでノコちゃんは復活した。呆れた顔でノコちゃんを見てたら、龍一君に笑われた。



「そ、そッスよね。……って。なんでアンタたちがここにいるッス?」

「あのねー。あたし達、この事件を担当することになったッス」

「あっ!あっ!マネしちゃダメッス!あ……あいでんでぃてぃーがホーカイするッス!」

「面白い人だねー、なるほどくん、陸さん」

「確かにノコちゃんは弄ると面白い」

「ひっ酷いッス…」



落ち込んだノコちゃんが面白い気がしてきた。さっきからあまり喋らない龍一君が気になる。チラリと見るとバッチリ目があった。



「陸、またなんか起こってないよな?」

「今のところ大丈夫だよ★」

「今のところって……」

「陸さん危ないことしないでね!」

「ありがとう、真宵ちゃん」

「陸は荷星さんの味方?」

「モチバチそうだよ」

「松山頼むッスから、自分の傍から離れないで欲しいッス。後で御剣検事に何言われるか……」

「や★」

「お願いッスゥゥゥウ!!!!これ以上給料減らされると堪らないッス!!!」

「やだ。今の検事としての怜侍大嫌いだもん」



ノコちゃんがいじけた。「御剣検事が松山を心配で堪らない上に、ソイツとよく一緒に居るからって自分に当たって来るッス…」とかブツブツ言っているノコちゃんは無視しよう。



「ノコちゃん、仕事しなさい。ほら、龍一君聞きたいことあるんじゃないの?」



ノコちゃんを無理矢理立たせて龍一君の前に押し出した。
僕は説明はやらない。だって面倒臭いもん。



「あの。今、そちらの捜査は、どんな感じですか?」

「そんなコト、教えるワケにはいかないッス」

「なるほどくん。さすがに、そんなにストレートに聞いてもダメなんじゃないかなあ」

「じゃあ、刑事さん。例のヤツ、くださいよ」

「例のヤツ?」

「解剖記録です」



龍一君はじぃと僕を見ながら次の言葉を放った。



「……今度は、最新のデータを」

「あれノコちゃんのだもん!!僕は知らないし!!ノコちゃんに文句言ってよ!!」

「うう……すまなかったッス。この前の事件では、メイワクかけたッスからな」



ノコちゃんは大人しく解剖記録を龍一君に渡した。そのまま龍一君は質問を続けた。



「どうして、荷星さんが逮捕されたんですか?」

「簡単なコトッス。殺人事件は、この先の第1スタジオで起こったッス。被害者が第1スタジオに入ったのが、午後1時。このとき、被害者以外の人間はスタジオにはいなかったッス。そして、被害者が死んだ時間は、解剖の結果、午後2時30分。その間に、スタジオに行った人物は、たった1人。荷星 三朗ッス。彼以外、スタジオに行けた人物はいないッス。ウソだと思うなら、警備員のオバチャンに聞いてみるッス!」

「なるほどくん。……それがもしホントなら、誰が聞いても、ハンニンは荷星さんしかいないじゃない!」

「……ブッソウなこと言うなよ……」



ノコちゃんは威張っているが、僕は龍一君達から目線をそらした。

だって、あの写真じゃねぇ…荷星さんって判断出来ないし。

僕が考え事をしている間にも話しは進んでいる。



「あの、警備のオバチャンですけど……」

「ああ。とてもやさしいいいオバチャンッス」

「えッ!……ど、どこが……?」

「オバチャン、警察手帳見せたらお茶と羊羹を出してくれたよ」

「……あのオバチャン、権力のイヌだよ……」

「しかも、ワレワレのために、証拠品までくれたッス」

「え、ええええッ!



大丈夫だよ、真宵ちゃん。絶対に明日勝てるから。流石の怜侍でもあんな写真で有罪に出来ないから。



「な、なんですか?証拠品って!」

「まあ、その……写真ッス。あのトノサマン野郎が、現場に向かっている写真ッス」

えーっ!誰が撮ったんですか?」

「そこのゲートに、カメラがついてるッスね?」

「あ。『おいでませ』って書いてある、あれのことかな?」



僕達の後ろに半円の門がある。そこには真宵ちゃんが言ったように『おいでませ』と書いてある看板が吊るされていた。その『お』の傍にあるのが監視カメラだ。



「そのカメラ、人が通ると、自動的に写真を撮るッス」

ええええっ!……なるほどくぅん。もう、ダメだぁ……」

「(でも、証拠品を手に入れた割にはパッとしないカオをしてるな)」

「………。どうしたッス?なんか、元気がないッスね?」



ノコちゃんは物凄く良い笑顔で笑っている。

僕あの写真でそんな顔出来ないよ…相変わらず目線をそらしたままでいる。



「そんなうれしそうなカオして言わないでください」

「ハッハッハッハッハッハッハッ」

「……あの。あたしたち、スタッフの人とかにも、話を聞きたいんですけど」

「あ、いッスよ。もお、どこでも好きなところに行くッス。何をやってもムダッスけど。ハッハッハッハッハッハッハッ」

「(人間って、こんなにホガらかに笑えるもんなんだ……)」

「なるほどくん。許可もらったんだから、いろいろ、行ってみようよ」

「そうだね」

「僕も行こーと!」

「松山!?」

「「え!?」」



全員が固まったが、ノコちゃんがいち早く反応した。



「良いじゃん、弁護士が偽造しないように見張ってた方が良いでしょ?」

「駄目に決まってるッス!!!その弁護士と居るとロクなことないッスよ!?」

「……僕の声無視したくせに」

「う゛」

「龍一君無罪って知ってて逮捕したくせに」

「う゛ぐッ」

「その前に証拠不十分で真宵ちゃん逮捕するなって言ったのに」

「グハッ……ス」

「い・い・よ・ね・?」

「………………………はいッス」

「さぁ行こう!龍一君★」

「流石陸…メチャクチャだ」



龍一君の呟きは聞かなかった事にする。





(御剣検事ぃぃぃい!!!)
(落ち着きたまえ。どうしたのだ?糸鋸刑事)
(松山に苛められたッスゥゥウ!!)
(……それだけなら切るぞ)
(しかも青い弁護士に着いていってしまったッスゥ…)
(な……何ぃぃい!?成歩堂だと!!!)



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あきゅろす。
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