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第10話 掴んだ尻尾

 


「………酷い」



想像以上に酷かった。小中のやって来たことは。資料室の資料をひっくり返して調べたら、似たような自殺の話が一杯あった。
これは、龍一君に連絡した方が良いな、うん。
携帯電話を取って電話をかけた。



『あ、松山!?』

「………龍一君、なーに焦ってるのかなぁ」

『焦ってないよ!?』

「この野郎、あれだけ言ったのにコナカルチャーに一人で行ったな」

『Σう゛!!』

「んで、何か分かったの?」

『あ!そうそう!!やっぱり星影大センセイ小中に脅されてたみたい。それで星影センセイが言ってた千尋さん集めた資料を今見てるんだ』

「僕も警察の資料室で見てるんだけど…だいぶ酷いね」

『うん、千尋さんもだいぶ小中の事調べてたみたい。でも、《こ》の場所の資料が無いうえに一部資料が抜き取られてるみたいなんだ』

「じゃあ行こうか、小中の所へ。今度先に行ったらもう絶対に口きかないから」

『Σごめんって!!もう一人で行かないから』

「じゃ会社の前で」

『分かった!すぐいくよ!!』



電話を切り僕は立ち上がった。龍一君を一人で行かせたら小中が何をするか分からない。






















「さぁて、行くよ龍一君」

「あぁ!」



扉を開けて社長室に入るとそこに小中は居た。紫色のキモい髪色に、無駄に笑うこれまた気持ち悪い笑顔、似合ってないピンクのスーツに派手なダイヤのアクセサリー。全てに虫酸が走る。



「ヘイ、キミもしつこいね。そっちのキミは初めてだね」

「龍一君の付き添いですが何か問題でも?(刑事として事情聴取の為でもあるけどね)」

「すみません……でも、聞きたいことがありまして」

「いいかねミスタ・ベンゴシ。ぼかぁ、同じコトを2回言うのが大キライなんだよ。ドン・バザー・ミー!ぼくのまわりをウロチョロするな。……よくないアクシデントはキミにハプニングだよ……このイミ、わかるかな?」



龍一君は千尋さんが残してくれたたった1つの資料を握りしめていた。



「……小中さん。見てください。政治家が自殺したという新聞記事です」

「………」

「彼は、政府の機密基金を着服してました。ある日突然、それがスクープされた。……そして翌日、彼は自殺しました」

「……それがどうかした?」

「この記事は、千尋さんの部屋で見つけました」

「ミス・チヒロの……?」

「彼女は、こういう記事をたくさんファイルしていた。そして、その記事のほとんどに、"小中"と書き込んでいました」

「………」

「小中さん。あなたは、この政治家を……脅迫していましたね」

「脅迫……」

「彼だけではない。多くの人間が、あなたの脅迫に苦しんでいるんだ。千尋さんが集めていた自殺記事にはすべて、あなたがからんでいる!このコナカルチャーという会社は、脅迫によってなりたっている……そうなのでしょう?」

「……ムチャな言いがかりだ。ナルホドー……ナルホドー……キミが今すべきことは、なんだ?ボクを調べることかい?ノーノーノー。ちがうね。ミス・チヒロを殺害した犯人を探すこと……そうだろう?」



そう言うと小中はインターホンを押した。僕は何も言わずに見守っている。龍一君頑張れ。



『ハイ、秘書室でございます』

「ミスタ・ナルホドーがお帰りだ」

『かしこまりました。ただ今、迎えの者を……「待った……小中さん。あなたの言うことは間違ってるよ、小中さん」

「なんだと?」

「今、ぼくがするべきなのは、あんたを追い詰めることなんだ」

「……どういうことだい?」

「千尋さんは、あなたのことを調べていた。そしてあなたは、梅世を使って千尋さんの電話を盗聴していた。……そして殺人事件が起こって、あなたの資料が消えた。さて、犯人は……?」

「…………」

「コドモでもわかる。……あなただ!」

「………」



もう一回小中はインターホンを押した。不味い気がする。咄嗟に前に出て龍一君を壁際に押しやった。



『ハイ。秘書室でございます』

「迎えの者はノーサンキューだ。かわりに、この電話を検事局長につないでくれ」

『かしこまりました。少々、お待ちください……』



いっときすると声が変わった。不味い、不味い、不味い。
このままじゃ龍一君が……。



『な、なんだ小中クン。こんな時間に、こまるよ!』

「ヘロー、検事局長かい。ぼかぁ、気が変わったんでねえ。明日、証言したいんだ」

『な、なんのことかね?』

「綾里 千尋の事件だよ。ぼかぁ、もくげきしたからねえ。証言したいんだよ。とびきりホットなヤツを、さ」

『ど、どうしたんだ?法廷には、出たくないって……』

「シャラップ。……気が変わったと言ったろ?あ。それから。大至急、誰か警官をここへよこしてくれ。目の前に、そいつがいるんだよ。バカヅラぶらさげてさ」

『誰だね、"そいつ"って?』

「決まってるだろ。犯人だよ、ハンニン。……ぼくが見た、ね」

「な、なんだって!」

「ふざけんじゃねぇぞ!!!小中!!!!」

『お、おい……小中クン。き、きみは、また何か……』

「検事局長。キミは、ぼくに意見できる立場じゃないだろう……。とにかく、早く警官をプリーズだ!」



そういうと小中はインターホンを勝手に切った。龍一君を連れてくるべきじゃなかった!!!



「……言っただろ、ナルホドー。キミは、しがない弁護士だ、と。……ミス・チヒロもそうだった」

「な、なんだと!」

「千尋さんを馬鹿にすんなキモ男!!!」

「ぼかぁ、キミを告発する。ミス・チヒロ殺害の犯人としてね。そしてキミには、ロクな弁護士がつかない。ゼッタイに。ぼかぁ、この地区の弁護士協会にもトモダチがいるんでね。想像を絶するような、ものすごい弁護士をプレゼントしよう」

「(く……くらくらしてきた)」

「龍一君!!!しっかりしろ!!!」

「………キミは邪魔だよ」

「松山!!!!」



小中に思いっきり頭を殴られた。流石に、無理………だ。倒れる前に腹も蹴られ、ぼくの………意識は飛んだ。





((微かにノコちゃんの声が聞こえた))



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あきゅろす。
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