リュウノヒゲ-変わらぬ想い-改
ありがとう。そして、さようなら。
君に会えてよかった。
いつもと変わらない日常
いつもと変わらない会話
いつもと変わらない帰り道
“いつもと変わらない”を変えてくれたのは君だった。
けど、もうそれも“いつもと変わらない”になってしまった。
もう…終わりなんだよ。オレ達は……。
ありがとう。そして、さようなら。
(もう、終わりだから。)
「ねぇあーちゃん?」
『どうしたの?ツナ。』
雪がしんしんと降る中、オレ達はマフラーを一緒にして、手を恋人繋ぎに繋ぎ、2人。寄り添って傘の下にいた。
「……別に…。いきなりゴメンね?」
『ううん。いいんだけどっ』
行き先は決めてない。
というよりも、行き先“なんて”になるかな………。
蒼に飽きたんじゃない。
蒼と時間を共有し過ぎてしまったから……。新鮮だった日も今の通り、色気のない白になってしまった。
離れることなく、共にここまで一緒に歩いてきた。
歩くペースを彼女に合わすように、オレはそのペースが嫌になってしまったのかもしれない……。
『ねぇ、こんな雪の降る夜に、何処行くの?』
「んー……」
…―“分からない”。
『ツナ?ツナってばッ!』
「へっ…?あ、ゴメン……。」
彼女の言葉も上の空。
聞く耳を持たないんじゃいからね、決して。
それだけ…分かっていてほしい。
「着いた…」
『わぁ…海だぁ…』
長時間歩いてきたからその海の偉大さに感激した。
母なる海―…。
大空の様な大きさは、何もかも包容するように思えた。
『ここが目的地だったの?』
「まぁ…ねっ。」
曖昧に返事を返す。
そんな返事を気にせず彼女は、一緒にしていたマフラーを外し浜辺を歩いていた。
「あーちゃん…ッ!!」
『あ、ゴメンゴメンッ!…それよりも…星が綺麗だね!』
そう言われ一緒に持ってきておいた携帯電話を手にとり、時間を見るために携帯電話を開けると、オレと蒼が並んだ待受画面とデジタルで“20:00”と示されていた。
「もう8時だしね、星が綺麗なのは当たり前かっ…」
『あっ!あれって…オリオン座?』
「うーん……オレ、星座の名前とか分からないし…。そうなんじゃないかな?」
実は、家を出る前に星座の本を読んでいた。
冬の夜空で見付けやすいのはオリオン座だと言うことくらい、覚えてる。
このオリオン座を彼女と一緒に見るのは最後か……。
「あのさ…あーちゃん。」
『何?ツナ。』夜空の下、浜辺に立つ蒼が健気にオレを見つめてくる。その姿を見るだけでも心が痛むし、告げることさえもできさえしない。
「…」
『……?』
暫くの沈黙が続く―…。
でも、この空気や健気な姿を見てしまった以上、話は切り出せなくなる。
『…何か、話があるんでしょ?怒らないから、話して?』
「う、うん……」
「ありがとう。そして、さようなら。」
泣きながらオレはその場所を去っていったんだ。
本心の片端では“離れたくない”と思っていたのだろう。でも…思っていたとしても、今更気付いては遅すぎる。
これはオレが選んだ道。
変えることとか突き進むかは自分の勝手だと思う。
けど、後には戻れない。何があっても。
(いちいち振り返っていたら、選んだ道は見えなくなるし、その人の道も見えなくなってしまうから…。)
(見えなくなってしまわぬように、今もオレは自分の道を進み続ける。)
ありがとう。そして、さようなら。-end.-
←前へ→次へ
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!