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SS
飲食禁止

玄関先/恋人同士/甘々






「はい、動くなよ」

なぜだ。

「こんなにしちゃって・・・恥ずかしくないのか?」

俺はただ久しぶりの休日を心の底から楽しもうと思っていただけなのに。

「あーあ、なんだよこれ・・・お前、俺をそんなに怒らせたいのか?」

それなのに。

「言いつけを守れない悪い子には」

どうして。

「お仕置きだな」
「い、やだ・・・」

「お前に拒否権なんかないんだよ」

キュイーーーーーーーン

「いいいいいやだいやだ無理無理無理無理!!!」
「あっ!こら暴れんな!今虫歯の治療しないとさらに後悔するぞ!」

そういって俺の愛しい恋人は無理やり椅子に押し付けて、薄気味悪い音を発する機械を再稼働させた。



「はい、治療終わり」

電気を外し、口を洗浄するように告げて来て、俺はしぶしぶ体を起こした。看護師さんが俺に生ぬるい水の入った水を渡してくる。受け取って口をゆすぎ、立ち上がってカルテに書き込む恋人を見上げた。

「ったく、歯が痛いって泣きながら来るもんだからなんだとは思ったが、まさか虫歯とはな」
「別に、泣いてねーし」

口を尖らせていうと、恋人は「はいはい」と言って注意事項を俺に細かく指示してくる。それからちらり、と腕時計に視線を落とした。

「あがり?」
「まぁ、今日は午前中だけだし。でもまだミーティングがあるから、出れるのは1時間後くらいかな」

そう言ってカルテを持ったまま、ぺしんと俺の頭を軽く叩いてきた。

「って」
「さっきも言ったけど飲み食いはしばらく禁止だから、まっすぐ家帰れな。俺もすぐ帰るから」
「・・・ん」

そういってマスクを外しながら笑顔で告げられれば、俺が泣こうが喚こうが総無視で治療を進めた憎いやつにも、きゅんっと胸をときめかせてしまった。

イケメンってずるい。



言いつけ通り俺は家に帰って、それから1時間半。

ぴちゃ、ぴちゃりと濡れた音が足元から響く。顔を真っ赤にさせて視線を落とすと、白衣を脱いだラフな格好をした恋人が俺のモノを咥えていた。

玄関でこいつを迎え、そのまま俺は下半身を剥かれ、なぜかこの状態。

「あ・ぅ」

ガクガクと腰が揺れ、背中を壁に預ける。だけれどこいつは俺の尻を揉みしだき、あろうことか恥ずかしい所にローションをまとった指を出し入れし、ソコを拡げていた。

「や、だめ、だって、ぅあ!」

カリッとカリ首に歯を立てられ、痛いような気持ちいような感覚が駆け巡り、俺は柔らかな恋人の髪をぐしゃりと掻き乱した。
しかし特に気にする様子も無く、ぴちゃ、くちゅり、じゅるるると派手な音をたて、吸ったり舐めたりを繰り返す。後ろに飲み込んだ指も3本に増えていて、時折前立腺に触れる度に俺の身体は跳ね上がった。

「あ、もっだめだって、ひぅ、あ、あっ!」
「イきそう?」
「ん、ぁ、そぅっひん・・・あ?!」

頷き、あと少しの刺激でイく、と言うところでちゅぷりと口から外された。後ろの指もぬぷんと抜かれ、突然の刺激からの解放に、がくがくと身体が倒れそうになる。

「おっと」
「ひ、あ、ぁ、なんで、ぇ」

俺の身体を支え、立ち上がった恋人を見上げる。普段の仕事中なら誰をも安心させるその笑顔は影をひそめ、代わりに欲望にまみれた目をした顔がそこにあった。じー、とズボンのチャックを下ろす音が鳴る。

「一人で気持ち良くなるなよ」

グイッと片足を持ち上げられる。爪先立ちになった俺は慌ててバランスを取ろうと腕をつかむと、熱い切っ先が後孔に宛がわれた。

「ぇ、ちょ、っああぁぁぁ!?」
「きつ・・・」

ぐぐぐ、と押し広げながら侵入してくるそれに俺は腕に力を込めて、崩れそうになる身体を支える。
しばらくして奥まで入り込ませた奴は俺の腕を自分の首に回した。

「ぁ、ふ・ぁあ・・・」
「動くぞ」

耳元で余裕の無い掠れた声が告げる。俺の了承を待たず、ピストン運動を開始した。

「あ、待・あぁぁぁっ!?」

ぐちゅっぐちゅっぐちゅっぐちゅ!と激しくされ、俺は目を見開く。同時に目に溜まっていた涙がぽろりと落ち、余裕の無い表情の恋人がそれを舌でなめとる。

「や、あぁ!激し、んあっあぁぅ、ん、んんーーー!!」

喘ぐ俺の口に噛みつくようなキスがされる。そのまま熱い舌が入り込んできて、俺も無我夢中でその舌に舌を絡ませた。飲み込めない唾液が溢れ、とろりと顎を伝う。

ぐちぐちぐちぐち!と突かれる音とぐちゅ、くちゅくちゅと口腔を侵される音が俺の脳を刺激だけでなく耳からも犯し。

ぐいっと足を抱えていない方の手で腰を寄せられ、一層深く結合した途端、俺の頭はスパークした。

「ん、んんんんんんーーー!!!」
「っ・・・!」

びゅるびゅるっと一度お預けを食らった熱が解放され、俺たちの服を汚し、玄関の床に白い小さな水溜りを作る。そうしてきゅううううと中のモノを締め付け、程なくして俺の中でも熱が弾けた。



「・・・なぁ」
「ん?」
浴室。身体を清められ、湯船の中で後ろから抱きしめてくる恋人に、むすっとした顔で俺が聞く。

「なんなんだよ。帰って来てあんな、げ、玄関で」
「・・・あぁ。お前が勤務中に煽ってくるから我慢できなくて」

さらりと答える恋人に「はぁ?!」とつい大きな声を出してしまう。

「あ、煽ってなんかないだろ?!」
「いや、煽ったね。歯が痛いって半泣きで見上げながら言ってくるし、機械が怖いって可愛い顔して泣くし、ベッドの中でのお願い、やめてって声とはまた違った声でおねだりしてくるし。上目使いってクるわ」

ちゅっと俺の旋毛にキスを落としてくる。全くもってそんなつもりは無かった俺は、そんな風に映っていたことに恥ずかしさで口を開閉させて何も言えずにいる。

「正直、あんな顔させてくれた虫歯に感謝したいくらいだ」
「・・・き、勤務中に、なに、欲情して・・・」
「お前が初めてだよ、欲情させてきたの」

そう言ってくすくす笑う声に、俺は顔を真っ赤にさせてそっぽを向いた。

「・・・大体、2時間は何も飲み食い禁止じゃなかったのかよ」
「1時間我慢出来たらそれでいい。それにお前は何も食べて無いだろ」

キスはしたけど、と笑って俺の耳に唇を寄せ、わざとであろう、掠れた声で囁いてきた。

「俺がお前を食べただけ」





END


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