部活が終わり、わいわいとしているわけでもないが、それにしてはなまえと鳳が無駄に元気だった。二人は仲良く…と見えるようにどつきあいながら話をしている。 いまだに帰らないところをみると、どうやら鳳が宍戸先輩を待っているのを暇ななまえも一緒に待っているのだろう。 『だから、あたしはこうさいを──したいの!』 「だから、それは無理じゃないの?」 『無理だって決め付けちゃあ、いけねーな、いけねーよ』 「桃城の真似しないでよ…」 何の、話をしているのか分からないが、(とりあえず桃城の真似は似てないからやめてほしい) なまえと鳳の会話から漏れて聞こえた“こうさい”という言葉。……アイツは鳳と付き合いたいのか? …けど、付き合いたいってあんなアバウトに言うものか? 何だか、心に痛みが走ったような気がしてならない。 『あり、ひよ?』 「何の……話をしていたんだ?」 「何のって、“こうさい”の話だよ?」 「───っ、」 『ひよ、どうしたの? 顔が歪んでる、よ?』 あたふたとした様子でなまえが俺の顔を覗き込み、鳳が一瞬しかんだような顔をしたが、何かを理解したのか、楽しそうにくすりと笑った。 「なまえ、 鳳と…付き合いたいのか?」 『…へ?』 「俺は…嫌、だ」 「俺だって嫌だよ。なまえを使いこなせるのは日吉いがいいないし。」 は、と自分でも思うほどまぬけな顔をして鳳となまえの顔を交互に見る。なまえもいまだ分からないかのように鳳の顔を見る。唯一分かっているであろう鳳は俺となまえの顔を笑って見ている。 「鳳……」 「分かった、分かった、説明だろ?」 コクリと頷くと、鳳はまた笑った。いまだなまえははてなマークが頭上に浮いているようなそんな感じだ。 「なまえ、さっきの話を元に戻そうか。」 『え、うん』 「なまえは“こうさい”を無理矢理縮小したいんだよね?」 『うん。生物の先生が絶対無理だって言ってたからさ、あたしはそれに屈したくないの』 「ちょ、…待て」 「日吉、分かった?」 「“こうさい”って“交際”じゃなくて、“虹彩”か?」 『それ以外に何があるのさ?』 なまえのその言葉に自分の言った言葉が馬鹿馬鹿しくなってくる。馬鹿らしい。……というより俺は何を言った? 少し頭を冷やして考えてみれば自分が言ったことが思い出されていく。嫌な予感がして鳳を見れば、“日吉のために行くね”と宍戸先輩の元に走って行く。 『ひよ、あたしと鳳が付き合っちゃ…嫌?』 「………いやだ」 『じゃあ誰と付き合ったら嬉しい?』 「………………れ」 『え?』 「………………………俺」 その言葉を聞いたなまえは予測をしていたようだがやっぱり信じられないように目を見開いた。 あほ、と俺は呟いて。 なまえの耳元で囁いた。 「なまえが付き合うのは俺がいい」 勘違いで happy end. (え、ちょ、へ!?) (嫌か?) (いや、じゃない!) (…何見てるんだ長太郎) (あ、宍戸さん! 見てください、日吉がなまえに告白したところなんですよ!) (お前、覗き見かよ?) (あれ、俺がキューピッドやったんですよ) (へー、いいことしたなお前) (見てられなかったんですよ、あの2人) (まあな) |