愛おしいと気づいたとき、君の側にいることができなかった。 狂おしい程好きだと理解したとき、君の側にいてはいけないと理解した。 『やぎゅ、』 「何ですか」 『あたし、笑えてた?』 「はい、それは綺麗な程に。貴方は詐欺師になれますよ」 オレンジなんて皆無に等しい。そんな夕暮れとも呼べないであろう時間帯をあたしはやぎゅと歩いた。 部活直後で身体がまだ熱いのかやぎゅはチェックのマフラーを首に巻いていなかった。朝だったら風紀違反だって怒られるけど(冬の間は巻かなきゃいけない)、まあ放課後だしバレなきゃいいか。 でも、指摘したらやぎゅは紳士だから首に巻くと思うけど。あたしにも優しさと言うものがあるからそれは言わない。 冬の寒さは半端無い。風が吹けば骨に軋むように身体が凍る。 仁王、寒くないかな。あいつ寒がりだから、 ……いつからあたしと君はこんなに離れてしまったんだろうね。いつからあたしは君を苗字で呼ぶようになったんだろう。 「なまえ…さん」 『ごめ、やぎゅ…ごめん…っ』 「大丈夫です。少しずつ、少しずつでいいですから。」 溢れ出す涙をやぎゅは優しくハンカチで拭う。優しい。やぎゅは優しい。 けどね、どうしても雅治…違う、仁王とやぎゅを比べちゃうんだよ。仁王だったら部活が終わって身体が暖かい中でもマフラーを巻くんだよね。仁王だったら笑って、「なまえ、普通な顔が不細工じゃ」と笑って涙を拭うんだよね。 もうあたしの隣は仁王じゃない。 仁王君への心を騙すために私を利用してください 悲しさは君に知られることなく。 愛しさは君にばれることなく。 ああ、 白に遠退く この愛しさよ友愛に変われ |