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城ノ内家の愉快な人々
「ただの日記だ。文句あっか」
 2060年 4月1日 快晴    記録者(  来夏  )

 「入学おめでとう」と兄貴に直接言う勇気が無いので、不躾ではあるが文面の上で言わせてもらおうと思う。


 入学、おめでとう。兄貴。


 正直この内容の日記を兄貴以外に見られるのは気に食わないが、兄貴にうまく言葉を伝える勇気が無い俺にも非があるので我慢する。

 
 さて。
 俺が通う白木聖男子校と言うふざけた名前で学園の内情がたかだか知れるこの学校。世間一般では人も人外も平等に扱う超一流進学校として有名だが、それは違うと断固として言わせてもらう。もしも世間の、しかも外部の噂しか知らない阿呆がいたなら、俺はそいつに真摯な態度で弁解させてもらう。何ならデモ活動でも起こして全世界の皆にこの学園の内情を知らしめてやりたい。言ってやりたい。



 ここは腐っている、と。



 この学園は、熟れて腐り落ちたトマトよりも強烈な腐敗臭をまきちらしながら腐っている、と。

 まあ、それは俺が思っているだけでほかの皆――腐りきった彼らがそう思っているとは限らない。長時間あの腐った環境に身を置いて脳内が麻痺した生徒も少なくは無いからな。そもそも、全世界の皆にデモ活動まで起こして伝えたい内容ではあるけれど、俺がそんな事をする道理はてんで見当たらないし、この学園は少なからず外部に影響を及ぼしているとはいえ致命的な打撃を与えていないし別に伝えなくてもいいかな、なんて思う。

 ただ、兄貴だけには知っておいてほしい。



 この学園は、腐っている、と。



 生憎と俺は兄貴の通う高等部より離れた中等部なので、学園内でそれを伝えることは出来ないが、せめて知っておいてほしい。頭に入れておいてほしい。そして、どうかこの学園に疑問すら持たなくなって通っている俺を軽蔑しないでほしい。



 ○神歌が誰かを軽蔑する事はあり得ない事だと思うのだがな。
                             お前が大好きなお兄ちゃんより。

 ○来夏だって不安なんだよ。自分が確実に守れる範囲に彼が最も慕う神歌がいないという事が。あと、王我。君が家族ラブなのは分かっているから外見に似合わない自分表現はやめようね。笑っちゃうから。
                                                                                                              桜花より。




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