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傍観者の知るところは
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 「――マリモは球状の集合体を形成するが、球状体一つがマリモの一個体単位というわけではなく、この球状体を構成する細い繊維(糸状体と呼ぶ)がマリモの個体としての単位である。よく目にする球状の『マリモ』は、学術的にはマリモの集合体と言った方が正しい。実際にマリモが生育している湖沼の多くでは、マリモは糸状体の形態で暮らし、球状の集合体を作らない。 見た目は柔らかそうであるが実際には硬い藻であり、手で触れるとチクチクとした感触がある。――ですって」
「長い」
「すんません」

 なははー、と愉快そうに笑う目の前のお面男の頭を冗談っぽく笑いながら持っていた桃色の扇子で軽くたたく。

「……で? これと皆(みな)が騒いでおる『まりも』とは、どんな関係があるのじゃ?触れたらちくちくするのか?」
「残念ながら、ですねぇ。ただあの子たちが言っている『まりも』は見た目からきているようで〜す」
「なんと、丸いのか。――で?」
「丸くはないって言うことはしっかりと今伝えさせて頂きましたー。……頭の形が――っつうか髪型がもっしゃりしてるから『まりも』らしいですよ。あと、その髪型故に『オタク』とも言われているらしいで〜す」
「ほう…………。人間であったか」
「え、何だと思ってたんですか」
「まりも」
「そのまんまかよ! え、え? 人間だと思いながら聞いてたんじゃないんですか?」
「いや…………」
「?」
「あまりにも忌々しげに生徒たちが『まりも、まりも』と連発するからてっきりまりもを食べて食中毒にでもなったのかと思ってな」
「まりもで食中毒って何!? お坊っちゃんたちよく食べる気になったな! ほとんど藻だよ、これ!?」
「ここの者たちは食欲旺盛じゃからのう………。何でもいいから食べたくなったのじゃろうな」
「怖っ。お金持ち怖っ――って違いますよ」

 呆れたように嘆息したお面男――天寺 鈴(あまでら りん)は、長く広い、手がすっぽりと隠れる袖口から笏(しゃく)を出し、口元にあてがった。狐のお面とその笏はどう見ても違和感がある。
 凛坊はその奇怪な格好で含むように笑った。

「それで? どうします、この『まりも』。観察しますか?」
「否――」

 凛坊の言葉を否定し、代わりに儂は自分の意見を言う。

「――聞いたところによると、それは騒音らしいのでな。関わらないようにするよ。ただ気になっただけじゃしのう」

 扇子片手に喋り終えて、儂は楽しそうに笑っているらしい(お面で表情が分からぬ)凛坊を咎めるように言った。

「それより、おぬしとっとと“るーれっと”を回さぬか。時間をかけて儂にその事を忘れさせようとしても無駄じゃぞ」
「チッ。…………くそう。まいった。まさかここまで借金を背負わされるとは思いませんでしたよ」
「おぬしは……あれじゃ。運とかに嫌われておるのじゃ」
「俺が一体何をしたぁぁぁあああ!!」







「てめぇら神聖なる食堂で何人生ゲーム真剣にしてんだこの阿呆共!!」






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